昨今では、「睡眠は百薬の長」と言われるように良質な睡眠は健康キープに不可欠。でも、実はどんなアンチエイジングより、美容効果が高いのも「睡眠」だった! 睡眠がもたらす美容効果を教えてくれるのは、医師の岩本麻奈先生。寝ている間に美しくなれる、今晩からでも取り入れたいアプローチ法を前編・後編の2回に分けて詳しく尋ねた(以下「」内・岩本先生)。

「睡眠美容」って何?

「そもそも、良質な睡眠は自律神経のバランスを整え、それが血行促進につながり、再び良質の睡眠を誘引という、いいループを描きます。そのことから、自律神経のバランスと血行の改善を主軸として、日々良質の睡眠をとることでより美しくなるという概念を『睡眠美容』と定義しました。

 私は常々、美人は夜作られると考えています。寝るだけでは美しくなれませんが、少なくとも寝ないと美しくはなれません。現在、睡眠美容外来の担当医師をしていますが、不眠で来られる患者さんたちのほとんどが目の下にクマを作り、実際に体調の悪さがお顔に出ている状態でお見えになります。でも、良質な睡眠をしっかり取れるようになると、肌にも髪にも栄養が行き届き、メイクのノリも良くなってみるみる美しくなっていくんですよ」

睡眠が若返りにもたらす効果とは?

「睡眠の乱れは成長ホルモンの分泌を減少させます。成長ホルモンとは、若返りホルモンと呼ばれ、エネルギーを作り出して疲労を回復し、細胞の再生を促すもの。つまり、若返りたければ、この成長ホルモンに注目するのが先決なんです! 

 成長ホルモンは1日の分泌量の約7割が、睡眠中に分泌されます。しかも、入眠直後の90分間に訪れるノンレム睡眠が深いほど、成長ホルモンの分泌量が増えるというエビデンスがあります。そのため、寝る時間の早い遅いにこだわるのではなく、最初の90分間にぐっすり眠ることができれば、成長ホルモンのシャワーが細胞の新陳代謝を活発させ、さまざまな美容効果が期待できるというわけです。ここでは、具体的な効果をご紹介します」

【美容効果1】

表面細胞の再生を促す

成長ホルモンには皮下組織の水分を保つ働きや皮膚細胞の分裂、再生を促進する働きが。そのため、肌艶が良くなる。

【美容効果2】

脂肪を分解する

成長ホルモンは内臓脂肪を分解し、筋肉の修復などを行う役割も。脂肪を分解する以外にも、食欲抑制ホルモンが分泌されることでのダイエット効果も。

【美容効果3】

筋力をアップさせる

基礎代謝を高めてくれる筋肉は、抗老化には不可欠。成長ホルモンは、そんな筋肉を作るのに重要な役割を果たす。

【美容効果4】

骨を丈夫にする

昔から「寝る子は育つ」と言われるように、成長ホルモンは骨を太く大きく丈夫にし、骨粗しょう症などを予防する。

【美容効果5】

脳血管系疾患のリスクを下げる

成長ホルモンは血管をしなやかに健康に保ち、血中のコレステロールや中性脂肪を下げ、動脈硬化を防ぐ。動脈硬化は進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクあり。

他にも、成長ホルモンは脳のゴミを掃除して認知症を予防したり、抜け毛や割れ爪、爪の縦ジワ、体臭などの改善も。ただし、成長ホルモンが十分に分泌されていたとしても、冷えやストレスで血流が滞り、毛細血管がゴースト化してしまうと、細部・末端にまで成長ホルモンが行き届かないため、効果は得られないケースもあり。

熟睡を招くのにおすすめの入浴とは?

ぐっすり眠るのに“入浴”は重要。特におすすめなのが、「重炭酸温浴法」という入り方。簡単に言うと、天然炭酸泉の中でも特に血流アップなどに効果のある、中性の重炭酸泉による温浴効果を家庭で再現したもの。そのためには、市販されているタブレット型の重炭酸入浴剤を入れることがマスト。さらに効果を高めたいなら、以下のポイントをチェクして。

「重炭酸温浴法」をする際のポイント

重炭酸入浴剤タブレットは成分にこだわって

熟睡と美のカギである血管拡張作用がある“重炭酸イオン”。これを発生させるのが、「重曹」「クエン酸」「ビタミンC」が含まれる入浴剤。ちなみにこれを入れたお湯は入れないお湯に比べ、約6倍の血流アップ効果が得られると言われている。

40度以下のぬるめのお湯で15分浸かる

良質な睡眠のためには、深部温度を上げてから急降下させることが大切。とは言え、42度などの高温のお湯だと、重炭酸入浴剤の効果が薄まる上に、交感神経を刺激して血管を収縮させて冷えを招くことに。そのため、40度以下のぬるま湯で15分浸かって、深部体温を約0.5度上げるくらいがちょうどいい。

ベッドに入る1~2時間前に入浴を

一旦上がった深部体温が元の体温に下がるまでに約1時間半とされ、そのタイミングでベッドに入るとスムーズに眠りにつけるので、寝る時間から逆算して入浴時間を決めて。季節によって、この時間は変わり、冬場は1時間~1時間半前、夏場は就寝前の1時間半~2時間前を目安に。

かけ湯をする&肩までしっかり浸かる

湯船に浸かる前は必ずかけ湯を。いきなり湯船に浸かってしまうと、交感神経が優位になって睡眠に悪影響をもたらすことが。また、心臓や血圧に問題がなければ、肩までしっかり浸かる全身浴が理想。肩まで浸かることで、重炭酸イオンの血流効果がアップするのはもちろん、静水圧(水中の圧力)によるマッサージ効果も得ることができる。

入浴前後または入浴中に水分補給

入浴によって、人はコップ1杯半の水分が体内から失われるもの。そのため、入浴前後または入浴中にコップ1杯の水を飲み、脱水症状を防ぐことを忘れずに。重炭酸イオンが溶け込んだ美容効果の高い重炭酸水もおすすめ。ともに、内臓を冷やさないように常温で飲んで。

どうだった? 睡眠がいかに美容に重要であるかが理解できたはず。若返りたい人はまず、睡眠を見直してみて。高価な美容医療やコスメなどに投資するのもひとつの手段だけど、身近な睡眠環境を変えることは手軽かつリーズナブルで効果大かも!? 

【教えてくれた人】

岩本麻奈先生

睡眠美容 岩本麻奈
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皮膚科専門医、日本温活協会代表理事、日本コスメティック協会名誉理事長、ナチュラルハーモニークリニック表参道副院長、グランプロクリニック銀座理事長。東京女子医大卒業後、慶應病院や済生会中央病院などで臨床経験を積み、1997年に渡仏。フランスで20年以上を過ごし、美容皮膚科学、自然医学、抗老化医学などを学ぶ。帰国後は、ナチュラルハーモニークリニック表参道、グランプロクリニック銀座で睡眠美容外来を設立し、睡眠による美容効果を啓発。著書に『睡眠美容のすすめ』(西村書店)などがある。YouTubeでも美容情報を発信中。

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YouTube:Dr.MANAの睡眠と美容とお肌について【専門チャンネル】

Text:ERI HAMADA

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Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico