生理に関する問題やストレスを抱えている女性は多いはず。コロナ禍を経て、近年「生理の貧困」が社会問題になっているけれど、生理事情に理解がなく、生理用品の無料配布に疑問を持っている人はまだたくさんいる。なぜ生理用品を重要視するの? 無料配布は可能なの? 海外の事例、日本の無償化への動きを参考に、生理用品の無料配布について考えてみる。

目次

生理用品を無料配布するのはどうして?

「生理の貧困」が深刻な社会問題に

生理用品の無料配布には、生理の貧困が深く関係している。

「生理の貧困」って? 

生理の貧困とは、経済的な理由などから生理用品が買えない、利用できない状態にあること。お金がなくて生理用品を買えないことだけが生理の貧困だと思われがちだけど、実は、生理にまつわる不利な状況を広く指す言葉。家族の理解がなく生理用品を入手できない、生理用品を買うことはできるけれど、大きいサイズのナプキンは高くて買えない、生理の知識が不足している……といった状況も生理の貧困。もちろん、コロナ禍で収入が減ってしまい、生理用品の入手が経済的に困難になったという女性もたくさんいて、経済的な生理の貧困も見過ごせない。 

学校にも行けない! 「生理の貧困」による影響

生理の貧困が女性の生活に与える影響は軽視することができない。

・心身の健康に悪い

生理用ナプキンは一般的に、2~3時間に1回交換することが推奨されているが、節約するために交換回数を減らすという人もいる。生理用品の長時間使用は衛生上よくないだけでなく、においやかゆみ、かぶれを引き起こす原因にも。さらに生理用品を適切に使用しないことは、精神的な負担にもつながる。例えばナプキンをトイレットペーパーなどで代用していると、漏れているか心配で常に気になるし、何をしていても落ち着かなくなってしまう。また、代用品で補っていると、おりものの量や色の異常、外陰部などの発赤といった身体の健康問題も起こしかねない。

・社会生活に支障が出る

生理の貧困が日常生活に与える影響も大きい。生理用品や生理痛の薬が買えないことで、学校や職場への遅刻、欠席、早退につながることも。トイレットペーパーやティッシュで代用したとしても、長時間外出するのは難しい。

女性のストレスフリーな生活をサポート

生理用品無料配布の動きが目指すのは、生理の貧困の解決だけではない。女性が生理によって抱えるすべての負担を減らすことが目的だ。例えば、生理用品は買えるけれど、急に生理用品が必要になったときに手に入らなくて困ってしまうというケース。無料配布は、そんな女性の生理にまつわる負担を広く軽減することができる。

生理用品の無料配布は賛否両論 

生理用品の無料配布に反対する声もあり、様々な議論が起きている。

「無料化は当然」賛成派

無料配布を支持する人は、「トイレットペーパーが無料で設置されているのなら、生理用品も無料であるべき」と主張する。生理用品はトイレットペーパーと同じサニタリー用品なのに、無料で提供されていることは少ない。この現状に異議を唱え、アクションを起こす人もいる。

アメリカのNPO団体「PERIOD.」は、生理用品がトイレに無料で設置されていないことの問題性を男性に理解してもらうために、”If men had to pay for toilet paper” (「もしトイレットペーパーが有料だったら」)という動画を制作した。このアクションで生理用品の無料配布に関心を持った男性は(もちろん女性も!)多いはず。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
If men had to pay for toilet paper - #FREETHEPERIOD
If men had to pay for toilet paper - #FREETHEPERIOD thumnail
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「納得できない」反対派

一方で、ネット上では生理用品の無料配布に反対する声も見られる。生理用ナプキンは一袋平均で300円前後。洋服を買ったり、スマホ代を払ったりするお金はあるのに、ナプキンを買えないのはおかしい。生理の貧困を主張する前に、他の部分の支出を見直すべきだと考える人が多い。

しかし、生理の貧困は経済的な理由だけではない。また、生理用品の無料配布の目的は、生理の貧困の解決だけではなく、生理用品に対する社会の見方を変えることでもある。そのことも踏まえて考えるべきだろう。

海外に学ぶ、生理用品の無料配布に関する各国の政策とは

日本で生理用品の無料配布、無償化は一般的ではないけれど、海外には広く普及している国がある。

世界初の法整備

スコットランドでは、2020年に生理用品の無償提供を義務付ける法律、「生理用品無償提供法」が制定され、2022年8月15日に施行された。生理用品を無償で手に入れる権利を法律で保障する動きは世界で初めて。この法律は、生理用品を必要とするすべての人が対象。生活費高騰で苦しむ女性にとって、学校やその他公共施設で生理用品を無料で入手できることは大きな支えになるはず。

学校で生理用品を無料配布

ニュージーランドやフランスでは、政府がすべての学校で生理用品の無償提供を行うことを発表している。無料設置を通して、生理の貧困により授業を欠席する生徒、学生がいる状況をなくすことを目指している。ちなみにフランスで無料配布されている生理用品はオーガニック製品。オーガニック製品を導入することで、生理の貧困の解決だけでなく、女性の健康も支援している。

生理用品への課税を廃止

無料配布とまではいかないが、生理用品を生活必需品として認識を見直している国も。カナダ、インド、ケニア、オーストラリアなどの国は、生理用品への課税、俗に言う「タンポン税」を廃止している。しかし課税を廃止している国はまだまだ少数。日本でも生理用品は軽減税率の対象外とされているけど、生活必需品であるはずの生理用品に軽減税率が適用されていないことに疑問の声もある。

日本国内の生理用品無料配布の動きは? 

日本でも、生理用品無料化の動きは進んでいる!  

各自治体の取り組み

2021年7月21日時点で、「生理の貧困」に関する取り組みを実施している、あるいは実施を検討している公共団体は581団体(内閣府公表)。支援内容の多くは生理用品の無料配布だが、自治体の予算、防災備蓄、寄付からナプキンを賄っている団体が多く、一人当たりの配布数が限られている(一人当たり一パックが主流)。今後は長期的な支援を可能にする制度が必要だ。

生理用品を無料設置する学校も多数

最近では、生理用品をトイレに無料で常設する学校が増えてきている。例えば、東京都立の250校では、2021年9月から公費で購入された生理用品がトイレに無料設置されている。また大学でも、2021年以降、生理用品の無料設置を進めるところが増えている。大学の費用で購入設置されているところ、大学が企業のサービスを利用しているところ、学生団体が主導で寄付を募って生理用品を設置しているところなど運営方法は様々。

企業が先導する生理用品のサービス

大学でも導入されている、企業提供の生理用品配布サービスもある。

OiTr (オイテル)

OiTrは個室トイレに生理用ナプキンを常備し無料提供するサービスで、トイレットペーパー同様に生理用品が無料でトイレに常備される世の中を作りたいという想いから生まれた事業。商業施設やオフィス、学校、公共施設など様々な場所で導入されている。使い方は簡単。OiTrアプリをダウンロード、アプリを起動し、スマホをディスペンサーに近づけて画面の取り出しボタンをタップするだけ。 「OiTrの広告を見る」ことと「生理用品を無料で受け取る」ことがトレードオフされている支え合いの関係。なので、気負うことなく利用できる。

まとめ

生理用品は当たり前に手に入れることができるし、お金を払うのは当たり前だと思っていた人も多いのでは? ここまで見てきたように、世界には生理用品にまつわる様々な問題があり、政府や企業、民間団体もこの課題に向き合い始めている。生理用品の無料配布は生理の貧困問題を解決する一つの手段であるだけでなく、生理用品のあり方を問いただす、重要な役割も担っているのだ。ウィメンズヘルスでは今後も、この問題を取り上げていく。

Text: Nasuka Ametani