締め切りと戦いながら、ちょっとつまんだだけのつもりが、いつの間にかポップコーンを1袋食べてしまった。そんな経験は誰にでもある。人間は感情的な生きものだから。それに、頭のなかを整理するより美味しいものを食べた方がスッキリすることは多い。でも、このスッキリ感は、最後のひとくちと共に消えてしまう。しかも、一度ストレスから食べることに慣れてしまうと、その止め方が分からなくなる。

今回は、ストレス過食を防ぐためにできる10のことをアメリカ版ウィメンズヘルスから見ていこう。

摂食障害治療センター『Eating Recovery Center』地域臨床部長のアリソン・チェイス博士によると、ストレス過食は、体の栄養ニーズではなく感情に反応して食べること。おなかが空いていないのに必要以上の食べものを猛スピードで食べるのは、ストレス過食の典型的な症状。

食事は穏やかな時間なので、負の感情を処理するために食べたくなるのは当然のこと。そして忘れられがちなのが、食事は五感をすべて刺激するという事実。食べものの香りは嗅覚、味は味覚、舌触りや手触りは触覚、リンゴをかんだときの音や温かいスープをすする音は聴覚を刺激する。音を立てずに食べるのは食事のマナー。でも、自分がかんでいる音や飲み込む音は、ちゃんと聞こえる。

チェイス博士いわく食事中は五感がフル活用される分、ほかのことを考えずに済み、心が落ち着く。精神的に一杯いっぱいのときはとくにそう。でも、体の栄養ニーズを無視して気持ち悪くなるまで食べても、ストレスは軽減しない。

チェイス博士によると、食べもののような外的因子に頼らなくても、負の感情に対処することは可能。ストレス過食を乗り越えるのは簡単なことじゃない。でも、栄養とメンタルヘルスの専門家の知恵を借りれば、ストレス過食のもとになるストレス自体を上手く減らせるようになる。

1.引き金を知る

チェイス博士によると、まずはストレス過食の引き金となる状況を自分で知ることが一番大事。「自分がいつ、どこで、どんな食べものに手を伸ばしているか考えてみてください」

食べものに手が伸びたときは、そのきっかけとなった出来事や、その瞬間に抱えているストレスや感情の中身を分析して。大変な会議のあとや特定の同僚に会ったあとは必ず食べたくなったりしない? 「なにを食べているかの前に、ストレスの出所を突き止めることが大切です」とチェイス博士。

自分のパターンを把握すれば、自分に合った戦略も見えてくる。ストレス過食の解決策は人によって違うので、自分にとって有効な策を見つけよう。

2.パターンを知る

having breakfast in early morning
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食べたくなる時間帯や状況、そのときの自分の気持ちを食事日記に書いてみて。夜ご飯の最中に明日のことを考えすぎてアイスクリームを食べてしまう。通勤中にイライラすると、お菓子の袋を開けてしまう。そういうパターンが分かっていれば、自分で自分のしていることに気付けるし、手を止めて「本当に空腹なのか」を確かめられる。

著書に『Body Kindness』を持つ公認管理栄養士のレベッカ・スクリッチフィールドは、ストレス由来の食欲が湧くたびに時計を見るそう。それが食事の時間なら、手当たり次第になんでもではなく、食べてよかったと思えるものを食べる。そのほうが自分の「普段のニーズと好み」を把握しやすいそう。

3.食事と間食の時間を決めておく

bright alarm clocks on orange background
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接触行動を専門とする心理学者のレイチェル・ゴールドマン博士によると、締め切りが迫るたびに塩辛いスナックが食べたくなるなら、締め切り前は予定通りに食べることを普段以上に意識するべき。朝食、昼食、間食、夕食の時間さえ決めておけば、プレッシャーを感じるからというだけでマインドレスに食べてしまうこともない。

「ストレス過食は、食事の時間を決めておくだけで防ぎやすくなりますよ」とゴールドマン博士。「おなかが空いているときにストレスを感じると、ヘルシーな食べものを選ぶのが一段と難しくなりますからね」

4.脳と体をスキャンする

公認管理栄養士のモニカ・オースレンダー・モレノによると、ストレス過食を防ぐ秘訣の1つは、おなかが空いてもいないのに食べてしまった瞬間に、次のステップで脳と体の状態を確認すること。

まずは脳:いま、なにを考えながら食べていた? 人間関係に関する不安や不満? おなかが空いてもいないのに食べた自分自身を責めているなら、自分にやさしく。

次に心:いまの気分は? 上司の評価に納得できない? 怒りや不満は、いまの時点で日記に書いておくといいかも。

最後にのどと胃:のどがカラカラ? 最後に食べたのはいつ? その食事は楽しかった? 楽しかったなら、それはなぜ? 楽しくなかったなら、それはなぜ?

このスキャンは、自分のパターンや自分が食べたくなるワケを知るのに役立つ。「ストレス過食の前や最中に手を止めて感情を処理するのは、インテュイティブ・イーティング(自分の直感に従って食べること)の最初のステップといえるかもしれません」

5.時間を置いて頭を冷やす

「ストレスを感じたときは、To-Doリストを作って頭のなかと今後の予定を整理します。瞑想や短い散歩をするときもありますね」と話すのは、公認管理栄養士のアリッサ・レヴィ。「それでもやっぱり食べたいときは素直に食べて、せっかくの食事を楽しみます」

でも、分量には要注意。時間を置いて頭を冷やせば、衝動ではなく意図的に食べる分、分量のコントロールが楽になる。

6.口を忙しくしておく

a young woman sits at the window with her eyes closed and enjoys drinking coffee
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内省しながら歩いても、家庭の問題が重くのしかかってきたりして、おなかが空いていないのに食べたい気持ちが収まらないときはある。ゴールドマン博士によると、そんなときはガムをかんだり、お茶を飲んだりするといい。口になにかを入れるだけで心が落ち着き、意識が食べものから逸れることも。

7.水分補給と睡眠をおろそかにしない

のどが渇いているときの感覚や疲れているときの感覚は、おなかが空いているときの感覚に似ている。だから、水分不足や疲労を空腹と勘違いしてしまうのは珍しいことじゃない。水分が足りなくなるとエネルギー源が糖になるため、体が甘いものを欲しがり始める(本当は水を飲めばいいだけなのに)。そして、疲れているときは、おなかが空いていなくてもなにか食べないと力が出ず、しかも、変な時間に食べるから余計寝つきが悪くなる。

もうベッドに入るべき時間なら、お菓子は忘れて素直に寝ること。当たり前かもしれないけれど、新しいエピソードを観るために、目の充血や空腹と戦いながら夜更かしする日は多いでしょう? ゴールドマン博士によると、水を少し飲んでみて空腹が収まるようならなにも食べなくていい。逆に水を飲んでも空腹が収まらず全然力が出ないのは、おなかが本当に空いているサインなので、なにか食べたほうがいい。

8.サポーターを動員する

two women sitting down taking a break from shopping
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ひとりでストレスに向き合っていると孤独を感じてしまうので、信頼のおける友人や恋人の力を借りて感情を処理しよう。チェイス博士の話では、これもストレス過食を抑えるための有効な手段の1つ。

食べたくなったら、食べる代わりに気持ちを吐き出す。詳しい事情は説明しなくて大丈夫。気を紛らわせてピンチを切り抜けるには、ただ話をするだけでも十分だから。

9.間食は意図的に楽しむ

食べるのは、ストレスを一時的に和らげるため。そういう人は、食べたいという欲求にあっけなく屈する前に数分間の“小休憩”を取ってみて。

小休憩に入ったら深呼吸を数回して、いまの自分の感情を受け入れる。「なにも考えずにアイスクリームを食べてしまうと、食べたあとに罪悪感を覚えますよね」とゴールドマン博士。「そのあとの思考・感情・行動は、この罪悪感の影響を直に受けます」

でも、この小休憩で自分の気持ちに寄り添えば? 最終的にアイスクリームを食べたとしても、それは意図的な決断なので、罪悪感を引きずってしまうことがない。

10.専門家に助けを求める

mature therapist shakes finger and lectures young female client
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「一番心配なのは、ストレス過食が本格的な摂食障害に発展することです」とチェイス博士。「日常生活に支障が出るほどストレス過食が悪化したら、それはもうプロの助けを必要とする精神的な障害です」

いつまでも食べていたせいで大事な会議に遅れたり、朝起きる気がしなかったりして、社会生活や仕事に問題が生じているなら、心理療法士や摂食障害の専門家に相談することが大切。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Aryelle Siclait And Hunter Levitan Translation: Ai Igamoto