夜中にトイレに起きなければならない悩みを医師に相談したら、最初に聞かれる質問はこれ。「尿意で目が覚めてトイレに行きますか? それとも、目が覚めたあとに尿意に気づいてトイレに行きますか?」

「あなたの答えによって問題は異なります」と話すのは、米オハイオ州立大学ウェクスラー医療センターで副議長を務める家庭医療助准教授のランディ・ウェクスラー医学博士。

ウェクスラー医学博士がいうには、睡眠時に腎臓への血流が増加すると、尿の生成が促進される。そのため、隣に寝ているパートナーのいびきや不眠症など、膀胱とはなにの関係もない問題が原因で夜中に目が覚めているなら、その後にトイレに行ったとしても問題にはならない。

だけど、尿意で夜中に目が覚める場合には、この問題を放置すべきでないと、ウェクスラー医学博士は忠告している。

そこで今回は、夜中に起きてトイレに行かなければならないもっとも一般的な9つの原因とその対処法について、専門家たちがイギリス版ウィメンズヘルスに詳しく教えてくれた。

1.寝る前に、水分を摂り過ぎている

かなり明らかな原因ではあるけれど、ウェクスラー医学博士にいわせれば、寝る数時間前に自分がどれくらいの水を飲んでいるのか、水分の取り過ぎがどれほど睡眠を妨げるのかという問題に気づけていない人は案外多いという。「寝る2時間前になったら水分をとるのはやめること。就寝前に必ずトイレを済ませてから寝ること。この2つを守るように患者さんにお伝えしています。それでもまだ夜中に尿意で目が覚めるようであれば、医師の診察を受けてください」

2.就寝時間近くまで、アルコールやカフェインを摂取している

ウェクスラー医学博士がいうには、アルコールにもカフェインにも、尿の量を増やす作用があるので、夕食後にコーヒーを飲んだり、寝る前にお酒を飲む習慣がある人は、自らこの原因を作り出していることになる。午後6時以降には、紅茶を含め、すべてのカフェインを摂らないようにすること。そして、少なくとも寝る3時間前までには、お酒を飲むのもやめるようにウェクスラー医学博士は提案している。それでも問題が解決されない場合には、医師の診察を受けるべき。

3.抗利尿ホルモンが少ない

「加齢に伴い、抗利尿ホルモンの分泌は自然と低下していきます」と話すのは、イリノイ州メモリアル病院に勤務する泌尿器科医のトビアス・ケーラー医学博士。このホルモンには、寝ている間に腎臓が尿を作る量を制限する働きがある。そして、このホルモンの分泌量が少なくなるほど、排尿の量は増加する。ケーラー医学博士の説明によると、通常は40歳頃から抗利尿ホルモンの分泌量は減少し始めるが、それに顕著に気づき始めるのは60代や70代になってから。「薬物治療もありますが、自分で対処している人がほとんどです」と、ケーラー医学博士。

4.尿路感染症

ウェクスラー医学博士いわく、あなたが女性であり、上述した「夜中のトイレを誘発する原因」がなければ、尿路感染症である可能性が高い。「尿路感染症の場合は、焼けるような痛み(灼熱感)や排尿後の尿漏れ、不快感などの症状を伴います」。このような感覚は日中も持続する。

男性の場合はかなり稀ではあるが、尿路感染症になると、夜間を含め、常に尿意を感じるようになることがあるとウェクスラー医学博士は補足した。繰り返しになるけれど、排尿時に焼けるような痛みがある場合には十分に注意したほうがいい。

5.足が腫れている

足や脚が腫れている(浮腫がある)場合は、下半身に貯留している体液が原因で、体を横にしたときに尿量が増えることがある。「足に溜まっている余分な水分は排出される必要があるので、尿の生成を増加させます」と、ケーラー医学博士。解決策は、寝る数時間前に脚を上げること。脚の位置を高くすることで、下半身に溜まっていた体液が上半身へ流れていき、就寝前にトイレを済ませてから眠ることができる。

6.糖尿病、または前糖尿病

糖尿病の人や前糖尿病である人は、体が余分な糖を取り除くために尿の生成量を増加させることがある。これは、夜中にトイレに起きる理由を十分に説明していると、ウェクスラー医学博士は話している。尿路感染症と同様に、糖尿病や前糖尿病による頻尿は日中も続く。とくに水をいっぱい飲んでいるのにもかかわらず、常に喉が乾いている傾向にある場合は、ウェクスラー医学博士いわく、血糖値の問題が原因であることを示している。

7.性感染症(STD)を持っている

「淋病やクラミジアなど、性感染症の中には頻尿を引き起こすものがあります」 と、ウェクスラー医学博士。排尿時に焼けるような痛みがあるのもまた、性感染症が原因であることを示すサイン。ただし、中高年者や高齢者の場合は、尿路感染症である可能性のほうがはるかに高いとウェクスラー医学博士は補足している。

8.子宮や卵巣が大きくなっている

子宮ポリープや卵巣嚢胞、子宮がん、卵巣がんなどの疾患は、これらの臓器の肥大を引き起こす恐れがある。ウェクスラー医学博士によると、大きくなった子宮や卵巣が膀胱を圧迫するので、常にトイレに行きたいという感覚を持つようになる。「これらの疾患の一つが原因かどうかを調べるには、医師の診察を受ける以外に方法はありません」と、ウェクスラー医学博士。

9.骨盤臓器脱(膀胱脱)

筋肉、靱帯、結合組織は、女性の骨盤底の構成しており、膀胱やそのほかの臓器を支えている。ウェクスラー医学博士がいうには、加齢やより一般的な経膣分娩によって骨盤底が弱くなったり、女性の膀胱の位置が下がったり、膀胱に圧力をかける位置に脱出する恐れがあり、このようなケースも常に尿意を感じやすくなる。「膀胱脱にはケーゲル体操が有効ではありますが、まずは病院で診断を受ける必要があります」と、ウェクスラー医学博士。

※この記事は当初、アメリカ版『Prevention』に掲載されました。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: MARKHAM HEID Translation : Yukie Kawabata