頭がスイッチオフできない夜は誰にでもある。悲惨な話や不安を誘発するような思考が頭の中を駆け巡り、寝ようにも寝られない。気づけばもう深夜1時で、あと数時間で目覚ましが鳴ってしまう。

こうして深夜の考えすぎは心身の回復に必要な睡眠を私たちから奪うけれど、そもそも考えすぎてしまう理由は? そしてなにより考えすぎは、どうやって止めればいいの? 寝具メーカー『SIMBA』の顧問心理学者でセラピストのホープ・バスティン博士に話を聞いた。

寝ようとすると頭が忙しくなる理由

夜も更けてからあれこれ考えてしまうのは、その日の出来事を脳が処理しきれていないから。無数の刺激と大量の情報から解放されない現代人には、思考を処理する暇がない。

「私たちには、その日の出来事を処理して、その重要性を評価したり理解したりするだけの時間と余裕がありません。その時間が辛うじてとれるのは、ベッドに入ってからだったりします」とバスティン博士。「ベッドに入った瞬間、あれこれ考えずにいられなくなるという人は多いです。日中にするべきだったことがすべて、突然の嵐のように思い出されてしまいます」

テクノロジーの台頭も関係している

電子機器の存在も、なかなか寝付けない理由。「テクノロジーは脳のβ波を活発にします」とバスティン博士。「β波は、覚醒状態にあるとき、注意深くなっているとき、問題解決や決断を迫られているとき、頭を使う作業をしているときなどに発生する脳波で、不安を誘発することがあります」

よって、就寝前の数時間はスマホ、タブレット、パソコンの使用を控えるべき。

深夜の考えすぎを止める方法

頭のスイッチをオフにして寝付くことができない人や、ネガティブな思考や固執的な思考で夜中に何度も目が覚めてしまう人にも策はある。しかも、その策は意外とシンプル。

1.リラクゼーションの時間をつくる

就寝前の1時間をリラクゼーションに充てるのは想像以上に大切なこと。

「ジムや残業で疲れていてもリラクゼーションの時間は必要。その時間をとることで脳のα波を活発にすることができますからね」とバスティン博士。「丸々1時間とれないときは、自分が好きなリラクゼーション・アクティビティを2つだけしてみましょう。私の場合はハーブティー、キャンドル、座りながらの瞑想ですね」

バスティン博士によると、このベッドタイムの習慣は継続することが大切。「人間は習慣の生き物なので、脳は関連付け、反復、ルーティンを好みます」

2.考えていることを話す

頭の中にあることをパートナーや家族、友達に話してみるのも効果的。「この方法はとくにオススメです」とバスティン博士。「心と心で有意義な会話をしましょう。単純に今日の出来事を報告したり、問題を解決しようとしたりするのではなく、考えていることを打ち明けて、相手の声に耳を傾けることが大切です」

バスティン博士によると、このように他者とつながれば、その日1日が頭の中で処理されやすくなり、気持ちが軽くなる。

「私たちは毎日必死に働いています。クタクタになって帰宅してからなんのために頑張っているのか考える時間をとらないと、うっぷんが溜まりネガティブになってしまいますが、会話を通して他者とつながれば、オキシトシンの分泌が促進されます。それが性欲を刺激して、質の高いセックスに発展し、結果的に睡眠の質が改善することもありますよ」

3. 日記に書く

a person writing a gratitude journal
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話し相手がいないときや人に話すより書きたい気分のときは、ダイアリーを開いてみよう。

「ネガティブなことを書いているときは、自分の意図を意識しながら書いてください」とバスティン博士。「書いているのは忘れるため。ダイアリーをパタンと閉じたら、そのネガティブな思考にもサヨナラです。ダイアリーはベッドサイドテーブルに放置せず、引き出しの中にしまいましょう。目に入らないものは、記憶から消え去っていきますからね」

ネガティブ思考をポジティブ思考で中和することも可能。「今日うまく行ったことや、ありがたいと感じたことを3つ書き出して見ましょう。子どもと一緒の時間が過ごせた、朝一で顔に太陽の光を浴びたというようなシンプルなことでいいですよ」

4. 思考をブロックしない

頭の中を厄介な思考が駆け巡っているときは、その思考自体をブロックしたくなるけれど、これはたぶん逆効果。

「思考をブロックするのは、瞑想やマインドフルネスでNGとされています。私たちの不安は、楽しいことにしがみつき、苦しいことをはじき返したいという気持ち、そしてなにかを失うことに対する恐れから来ています」とバスティン博士。「諸行無常を受け入れて、よいことも悪いこともいずれは過ぎ去るということを理解する。これが幸福のカギですよ」

※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。

Text: Becky Fletcher Translation: Ai Igamoto