単刀直入に言うと、わたしはアーユルヴェーダは“そのまま”だと日本人には合わないと思っている。

それは、長いようで短い過去3年のアーユルヴェーダライフを送っていて感じること。例えば、アーユルヴェーダをはじめて最初の数週間は調子が良かったものの、その後ひどい便秘に悩まされたりもしたし、痩せ過ぎてしまって月経が2ヶ月間止まったりもした。また早起きしすぎて体力も気力も続かずに1日の終わりにはエネルギーの枯渇で家族に迷惑をかけた時期もある。

ただし、それは“基本通りにやろうとするから合わない”だけであって、“自分に合うアーユルヴェーダ”を見つけることが鍵。

アーユルヴェーダは日本人には合わない?

アーユルヴェーダは日本人に合う? 合わない?
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現代日本で“5,000年前(縄文時代)のインド・スリランカの人たちの暮らし”を真似して快適に生きることができると思う? 答えはNoじゃない?

わたしたちがアーユルヴェーダ的な暮らしを実践するためにはカスタマイズ力が必要。アーユルヴェーダは国も年代も違う人々が実践してきたものだから、それをそのまま現代を生きる日本人のわたしたちがやろうとしても「やっぱりアーユルヴェーダは日本人には合わない」となってしまう。

数々の失敗を今も現在進行系で経験しながら、わたしがアーユルヴェーダ的な暮らしを続けているのは「世界観が好き」という単純な嗜好からだけでなく、失敗するたびに自分自身と向き合うことができるから。失敗の数が多ければ多いほど「わたしは誰?」という問いに近づけているような気がする。(とってもスローペースではあるけれど)それは、たくさんのカスタマイズ力が必要なアーユルヴェーダだからこその醍醐味だと思っている。だから、わたしはアーユルヴェーダ推し。

ここからは、日本人に合ったアーユルヴェーダ的な暮らしを取り入れる秘訣についてご紹介。アーユルヴェーダに限らずどんな健康法にトライするにしても実用的だと思うので、ぜひ参考にしてみて。

1.教科書通りにやろうとしない

アーユルヴェーダは日本人に合う? 合わない?
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「朝は日の出前に起きて、夜は22時に寝ましょう」と言われて、一体どれくらいの人ができる? ちなみにわたしは朝は5時半に起きて夜は21時半に就寝しているけれど、このルーティンが「快適〜」と思えるようになったのもつい最近のこと。最初のうちは、夜は早く眠れても朝は全然起きられず、瞑想の練習と言いながらそのまま二度寝していたことは珍しくない。早寝早起きをしている事実は作りたかったし、これが絶対に自分に必要なことだからと信じていたから頑張っていた。けれど教科書通りにやりたいなら、それができるようになるまで努力と時間が必要。

つい教科書に従って何事も進めようとするのは真面目な日本人だからなんだと思う。だけど、忙しい現代を生きる日本人の中で、修行僧レベルの早寝早起きが実行できる人は稀なのでは? 夜型の人や、夜勤がある人、また海外を行き来している人も少なくない現代で、毎日朝5時半に起きるのは難しい。

時に教科書通りにできない自分に憤慨することもあったけれど、誰のためのアーユルヴェーダって、自分自身の誰でもない。自分が快適に続けられるのがベスト。そして続けないと本当に意味がないから、教科書通りにできなくても大丈夫。

2.誰かの「良い」が自分に良いわけではない

アーユルヴェーダは日本人に合う? 合わない?
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「インドの人が食後にフェンネルシードを食べるのは、口の中をスッキリさせたいのと消化促進に効果的だから」そんな話を聞いて、食後にフェンネルシードを食べ始めてからというもの、食後にはほぼ必ず腹痛がくるようになった。

もちろん、これでお腹の調子が整う人もいるのかもしれないけれど、わたしにはよくなかったみたい。ちなみに、近所に住むナチュラル志向の管理栄養士さんに「お腹にいいのよ」とプレゼントされたフェンネルティーを飲んでも、わたしはお腹の調子が悪くなる。

アーユルヴェーダの中には、こうした「へえ〜そうなんだ。簡単だしやってみようかな」というものがたくさんあるのだけど、必ずしもそれが体質やその時の体調に合っているとは限らない。「やっぱりアーユルヴェーダは日本人には合わない」となってしまうから。

3.食事療法は理論的なことからスタート

happy woman eating out in a restaurant
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アーユルヴェーダレシピにトライしてみて、今まで使ってこなかったハーブやスパイスを大量に買い込むことは、アーユルヴェーダあるある。作っている最中も楽しいし、食事も美味しいのだけど、スパイスやハーブのアレンジ方法が分からず、気づけば同じようなメニューばかり。毎日カレーや、キッチャリー(インド粥)三昧では、わたしはよくても家族(特に娘)からはブーイングがきてしまう。

また、日本人のわたしたちが昔から食べてきたものはアーユルヴェーダ料理とは大きく異なる場合も多い。だから、アーユルヴェーダ料理をわたしたちが消化できるとは限らない。特に食べ慣れないスパイスや辛いスパイスなども使うことが多いため、そこは注意が必要。

アーユルヴェーダ特有の食事に対する考え方は、工夫次第で日本人にも応用が効くものという人もいるけれど、多くの場合は絵空事(あくまでもわたしのクッキングレベルの話)。やっぱりインドやスリランカでは気候が異なり、使用する食材、更には人の体質も千差万別。そのため、アーユルヴェーダの食事スタイルをそのままの形で日本人の食卓に持ち込むのは、そこそこハードル高し。

アーユルヴェーダの食事療法は、どちらかと言えば「何を食べるか」という実践的なことよりも、「どのように食べるか」という理論的なことを取り入れていった方がやりやすいかも。例えば、よく噛んで食べる、スマホやテレビを見ながら食べない・喋らない(食べる行為と食べているものに意識を集中させる)、腹八分目といったもの。簡単なことだけど、意外と難しいからぜひトライしてみて。

4. 即効性を求めない

woman preparing healthy food in her kitchen
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「健康になりたい」「痩せたい」「キレイになりたい」「もっと落ち着きたい」など、健康法にチャレンジする人は何かしら目的やゴールがあるのでは? 私自身もアーユルヴェーダをはじめたのは、漠然とはしているけれど「もう少し健康になりたい」といった目的があったから

けど、正直な話アーユルヴェーダに即効性を求めてしまうのはおすすめできないかも。もちろん、中には「すごく合っている」という人もいて、思い通りにいくミラクルなケースもあるかもしれないけれど、基本的にアーユルヴェーダは超ナチュラルなアプローチをしていくため、その変化はスローペース。そして、あまりにも微細な変化すぎて、見落としてしまうことも。だから、アーユルヴェーダジャーニーを鼓舞するためには、変化を記録するためのジャーナルをつけるのがおすすめ。

5. アーユルヴェーダだけにこだわらない

woman in various exercise poses
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八方美人のように聞こえるかもしれないけれど、わたしは何もアーユルヴェーダだけが素晴らしいとも思っているわけではない。

自分にとって必要なことだなと思ったら、アーユルヴェーダに限らず積極的に取り入れていくというフレキシブルな姿勢でいたいとも思っている。それは、現代を生きる上で至って自然なことである思う。

「これだけしか選択肢がない」という遥か昔からしたら、今の現代は混沌としているように見えるかもしれないけれど、色々な世界を融合させて健康になれるのであれば、いいんじゃないかな。

ベースはアーユルヴェーダ推し。だけど、健康法も多様性をもたせていけたらいいなと思っている。

どう? アーユルヴェーダに限らずどんな健康になる手段を選んだとして、あなたが健康になる手助けになったら嬉しい。

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桑子 麻衣子
ライター

1986年横浜生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少期よりクラシックバレエの練習に励みバレリーナになることを目指していたが、思春期に恋愛に走ってしまう。ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーの経験を活かし、現在は国内外のウェルネスやフィットネスなど健康周りの情報を中心に発信するライターとして活動。根っからの健康オタク。
Instagram: @mic_kwk