どんな夫婦であっても、喧嘩をすることはありますよね。自分たちなりの解決方法を知っていれば良いのですが、知らない場合は関係が悪化し、離婚に至る可能性も。夫婦仲を保つための秘訣を臨床心理士が心理学の観点からアドバイス。自分たちに合う方法を見つけていきましょう。

夫婦の関係が破綻する最大の理由は?

couple are quarreling at home
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 内閣府男女共同参画局が発表したデータ(2022年)によると、夫婦関係が破綻した最も大きな理由として挙げられるのが女性・男性ともに『性格の不一致』で、全体の6~7割を占めると言われているそう。性格の不一致といっても理由は様々で、例えば以下のようなことが考えられます。

☑︎価値観が合わない
☑︎人生観が合わない
☑︎金銭感覚の違い
☑︎夫婦間の会話がない
☑︎育児に関する考え方が違う
☑︎家事に対する考え方が違う

これらの項目を見て伺えることは、夫婦間で起きる意見の相違やそれをすり合わせていく方法がうまくいかず、取り返しのつかないところまで来てしまったというケースが多いのではないかということ。筆者がお会いするクライエントさんの多くも、パートナーと意見の相違が起きた時にうまく対処できないというお悩みの声を寄せています。しかし、対処法を知ることで『以前よりも少し関係が改善した』『これまでの自分の対処法がNGということに気づかなかった』といった声を聞くことも。つまり、お互いの価値観を知ろうとし、意見が食い違って喧嘩になったとしても解決する方法を知っていれば、夫婦に起きる危機を乗り切っていくことができるかもしれないのです。

これはNG! 夫婦喧嘩を過熱させる3つの言動・行動とは?

couple screaming at each other
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①原因の追及や悪者探しをする

      喧嘩が始まると、何が原因なのか、あるいはどちらが悪いのかをハッキリさせたくなりがち。しかし大抵の場合はお互いに『自分の思っていることが正しい』『自分としては良かれと思ってやっている』ということがほとんどなので、原因を追求したりどちらが悪かったのかを明らかにしようとしても腑に落ちない結果に終わってしまい、相手に嫌な感情を持ち続けてしまうことに。

      ②相手を責めるような言い方になる

        相手を責める言い方をすると、相手の感情を逆撫でするだけではなく、自尊心やプライドを傷つけることに。意見を聞く耳を持たなくなってしまったり、心のシャッターをおろされてしまうなど、取り返しがつかないことになってしまうかも。どんなにイライラしたり、相手に理解してほしいという気持ちが強くなっても、相手を責めるような言い方は避けましょう。

        ③自分の思っているように相手をコントロールしようとする

          『何でこれができないの?』と思うとイライラして怒りたくなってしまうもの。しかし、自分が『これくらいはできる』と思っていても、相手はそこまではできないというケースってけっこうあるのです。『自分はできるから相手もできる』という思考になりがちな方は要注意

          喧嘩しても仲直りへ。夫婦仲を保つための5つの秘訣とは?

          relationship difficulties
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          ①『私は』を主語にして自分の気持ちを伝えるようにしよう

            夫婦関係改善のキーになるのが【アサーション】というコミュニケーション。アサーションのスキルの1つとして【I(アイ)メッセージ】という『私は』を主語にして自分の気持ちを伝える方法をオススメします。よく夫婦喧嘩の時にやりがちなのは【you(ユー)メッセージ】と呼ばれるコミュニケーションで、これは相手に攻撃的な印象を与えてしまいがち。

            例えば、
            『普通はこうでしょ?(なのになぜあなたはできないの?)』
            『どうして(あなたは)わからないの?』

            ちょっとトゲがある感じがしますよね。これを【I(アイ)メッセージ】で伝えると、
            『私としては〇〇してほしいと思っているの』
            『あなたに分かってもらえないから、私はとても悲しい』

            といった感じで伝えると、受ける印象も柔らかく感じませんか?

            ②『言わなくてもわかる』は幻想。夫婦だからこそ伝え合うことを忘れないで

              夫婦といえども、元々は全く別の環境で育ってきている他人であり、価値観が完全に一致するとは限りません。ところが、一緒にいる時間が長いために『いちいち言わなくてもわかってくれてるよね?』といった錯覚を持ちがちであり、それが夫婦間のコミュニケーションを阻む原因となります。夫婦だからこそ伝え合うことを怠らない、分かってるとは思うけど……と思っても伝えるようにするという意識をしてみましょう。

              ③原因探しではなく、解決策探しを

                喧嘩になってしまった原因を探ろうとすると、今話すことではない過去の出来事を蒸し返して、新たな喧嘩が生まれるという悪循環を起こしかねません。喧嘩をするときは『今ここで起きていること』を取り扱うようにしてみて。そして、『解決するにはどうしたら良いのか』という視点で話をしていきたいものです。

                ④喧嘩するのは悪いことではないという意識

                  夫婦喧嘩は悪いものというイメージを持たれがちですが、価値観の違う人と一緒にいれば少なからず起きる可能性があるもの。見方を変えると、お互いの理解を深めてくれる手段と言えるかもしれません。なので、必要以上に『悪い』という意識を持たない方が喧嘩が起きた時の罪悪感が軽くなったり、『いつか終わるものだから』という見通しが持てて冷静でいられるかも。

                  ⑤喧嘩をする時は2人の間でルールを決めてみる

                    喧嘩から仲直りするための共通ルールを持っておくと良いでしょう。

                    例えば?
                    ☑︎ヒートアップしそうになったら別室に移動してクールダウンする
                    ☑︎相手の過去の失敗を持ち出さない、否定しない
                    ☑︎相手の言い分は最後まで聞いてから自分の意見を言う
                    ☑︎2時間経過しても話がまとまらない時は強制終了する
                    ☑︎冷戦中でもあいさつだけはする
                    ☑︎子どものことはケンカに巻き込まない

                    などです。喧嘩の最中は感情的になりがちなので、落ち着いている時にルールを決めて2人で共有しておきましょう。

                    2人だけではどうにもできない……。そんな時はどうしたら良い?

                    three persons talking in the office
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                    『自分は歩み寄ろうとしても相手がしてくれない』『努力はしてみたもののうまくいかない』といった場合もあるかもしれません。そんな時に頭に浮かびやすいのが、知人や家族に相談するということ。しかし、こうした近しい関係の人への相談は私的な感情などが入ったりして話が余計にややこしくなってしまうこともあるのであまりオススメしません。そんな時は臨床心理士など夫婦関係の専門家に間に入ってもらい、話をしてみるのもひとつ。日本ではまだ一般的ではありませんが、海外では夫婦関係がうまくいかなくなった時にカップルカウンセリングを受けるのはよくあること。話を聞いてもらってスッキリするということはもちろん、2人では気づかなかったコミュニケーションのクセや、思いがけない改善方法が見つかることもあるかも。

                    【参考】

                    内閣府男女共同参画局(2022)令和4年版男女共同参画白書

                    Headshot of 南 舞
                    南 舞
                    ライター

                    臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。   公式HP: mai-minami.com Instagram: @maiminami831