無意識で相手の反応を見ながら、相手に合わせて会話をしてしまっていることが多いです。 どうしたら自分軸を見つけられますか?

これは最初は少しショッキングだったり、自分で自分のことがわからなくなってしまうような気づきかもしれません。相反するようなことに聞こえるかもしれませんが、それでも私はこの気づきはとても「いい気づき」だと言いたいです。人に合わせてしまっている自分に気づけていないうちは、合わせてしまっていることのストレスやモヤモヤについてどうにもできません。しかし、気づくことができたら、この癖をこれからどう変えたいか、新たな道を視野に入れることが可能になります。

まず、相手の反応を汲み取ることが得意なあなたは、きっと、エンパス(共感力の高い人)だったり、HSP(Highly Sensitive Person=感受性が強く敏感なタイプな人)寄りの方ではないでしょうか。私は、このような感度の高い繊細さを持ち合わせていることは良いことだと個人的に考えていますが、繊細であるが故に付きまとう問題についてもよく知っておく必要があると思います。

人の気持ちを汲み取りやすい人は、いち早く人の反応を受けてしまうので、「相手に悪い思いをさせたくない」「相手を喜ばせていたい」といった気持ちが芽生えやすいでしょう。このような想いがいつ頃から始まったか考えたことはありますか? 多くの人が幼少期に育った環境において親の顔色を伺うようになっていたり、その必要があったり。場合によっては、そうしないと自分の存在を受け入れてもらえないと感じたり、身の危険を感じるようなケースだってあるかもしれません。つまり、子供の頃から更なる心理的ストレスを回避するために親など周りの人の顔色を伺うことを、ある種の生きる術として身につけているということ。

このことを英語では「people-pleaser (ピープルプリーザー)」と言って、“人を喜ばせたがる病”のように言います。人を喜ばせたがることは一見いい志のように聞こえますが、ピープルプリーザーには純粋に相手を喜ばせたいという満ち溢れる愛の表現とは違う、心理的なニーズが絡まっています。幼少期は特に、相手(親)に嫌われたり、認められないことは存在意義や生存そのものに関わるリスクとして受け取れるからです。このような心理的ニーズは、相手に嫌われることへの恐れや認められる必要性として現れ、大人になってからも上司やパートナーなどと同じパターンを繰り返していることはよくあることです。このサイクルが続いている場合、自分に足りないと思っている「不足感」や「好かれないと自分の価値が見出せない」「認められないといられない」といった、根底になる問題を見ていかないとなかなか人と合わせてしまう癖から抜け出すことは難しいでしょう。逆転した言い方ですが、いつも人の顔色を伺ったり、人の反応に合わせることで“得している”自分に気づく必要がある、ということです。

いつも無難に人に合わせて角が立たないように過ごしている自分でいると、
・人に嫌われない
・いい人だと思われる
・敵を作ることがなく、疎外されることがない

…… などといったことはありませんか?

嫌われないことや、敵を作らないことを優先している状態は、嫌われることや疎外されてしまうことへの恐れに司られている状態とも言えます。他の人と異なる意見を発言したり、相手に合わせないマイペースな会話をしたところで、必ずしも人に嫌われたり、相手がそれを迷惑だと感じるとも限りません。ですが、心理的にはこれらのリスクを回避することを優先している状態にあるということです。

従って、このようなパターンを本当に変えたいと思ったら、「嫌われるリスク」を背負ってでも、自分らしい自己表現を優先することを選ぶ必要があるのです。

ご質問者さんは、人に合わせてばかりいる自分に気づくことがすでにできていて、違和感を感じられているように受け取れます。自分は自分らしく在りたいと選ぶのなら、次のステップは「あなたは、合わせてしまう自分をどう変えたい?」と自分自身に問うことではないでしょうか。

無意識にいつの間にか、相手の顔色を伺って、相手に合わせにいく自分の癖。逆に最善のシナリオを描いてみた場合、新しくなったあなたは同じシーンでどのように応えられる人になりたいですか?  

もし私だったら、相手の反応を見て気づく繊細な心を大切に持ち続けながらも、いつもは相手に向けてきた同じコンパッション(思いやりの心)を、自分自身の心の内の本音に向け、忠実にありたいと思います。 

こんな話をすると、私の生徒さんの中には「自分の本音がわかりません」と言う方も少なくありません。それもそのはず。今まで人に合わせてきた分、自分の本音に耳を傾けないように努めていた訳ですから。急に決めたからと言って最初ははっきりしないでしょう。こちらの過去の記事では本心に忠実であるためのヒントをシェアしているので、ぜひ、併せて参考にしてみてくださいね。

Headshot of 吉川めい
吉川めい
ヨガマスター

MAE Y主宰、ウェルネスメンター。日本で生まれ育ちながら、幼少期より英語圏の文化にも精通する。母の看取りや夫との死別、2人の息子の育児などを経験する中で、13年間インドに通い続けて得た伝統的な学びを日々の生活で活かせるメソッドに落とし込み、自分の中で成熟させた。ヨガ歴22年、日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者であり『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。2024年4月より、本心から自分を生きることを実現する人のための会員制コミュニティ「 MAE Y」をスタート。https://mae-y.com/