「睡眠美容外来」を設立し、睡眠と美容に悩める多くの人たちを診ている医師の岩本麻奈先生。前編では、良質な睡眠がもたらす数々のアンチエイジング効果を教えてもらったが、後編では、普段ついやりがちな快眠を妨げる=老けを招くNG習慣を紹介する。今日から改善すれば、良質な睡眠にシフトができ、結果的に“若見え”が叶うはず!

「生きとし生きるものは寝るんです! 生命維持に睡眠は不可欠。そもそも、私たちは呼吸をして生きていることだけでも、エイジングを加速させているんです。つまり、生きるということは=エイジング。でも、“寝ること”で体へのダメージの修復はできるんです。だから、睡眠はおざなりにできません」と岩本先生。

「高価なスキンケアアイテムを使う以前に、快眠するほうが効果的。キレイになりたければ、質の良い睡眠を十分にとりましょうね。ここではぜひやめてほしい、快眠を妨げるNG習慣を解説します。前編でご紹介した『重炭酸温浴法』を取り入れつつ、それらの悪習慣とさよならしてみて」(岩本先生・「」内以下同)

【NG習慣1】紫外線が怖いからと日光を極端に避けている

”幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンを十分に分泌させるのに必要なのが、“太陽の光”。目からの光の刺激が脳に伝わると、後ろにズレやすい体内リズムがリセットされると同時にセロトニンが分泌されるというわけ。セロトニンが分泌されると、それが夜になって睡眠ホルモンのメラトニンに変換され、ぐっすり眠れるといった仕組み。カーテンを開け窓辺でコーヒーを飲む、ベランダで洗濯物を干す、散歩をするなどで、太陽の光を10~30分浴びるのが理想。このとき、日焼け止めや日傘、帽子など、サングラス以外の日除けアイテムの使用はOK。

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【NG習慣2】朝食を全く食べない

「噛む」という行為もセロトニンの分泌量を増やす。日中にストックされたセロトニンが夜の快眠につながるため、朝食をよく噛むのがおすすめ。また、噛むことでぜん動運動も活発になって便秘改善、さらには唾液が多く出ることで成長ホルモンのパチロンが分泌されて抗老化効果も期待できる。ちなみに起きてから1時間以内なら、体内時計がリセットされ、体温がアップするのはもちろん、脳と体がしっかり覚醒し、午前中のパフォーマンスもアップ。朝食メニューはセロトニン分泌に有効なタンパク質のトリプトファン、セロトニンの合成を助けるビタミンB6、炭水化物を摂取できる味噌汁、ご飯、焼き魚などの和食がおすすめ。手軽に摂るなら、バナナもGOOD。

【NG習慣3】日中、家でゴロゴロし体を動かしていない

コロナ禍でリモートワークが増え、不眠気味になったという人が増加しているという。そんな人は日中、活動的に行動することを意識して。特に熟睡に不可欠な深部体温のアップ&急降下のリズムで考えると、夕方に体を動かすのが理想

運動が苦手な人でも挑戦しやすい早足で買い物に行く、スクワットや屈伸運動を10回行うなどがおすすめ。これらも難しければ、隙間時間に肩を回す、料理中にかかとの上げ下げでも。逆に運動が得意な人は周囲に配慮しつつ、全速力でダッシュする、階段を一段飛ばしで駆け上るなども◎。時間にして4秒ほどでも十分。全身に適度な疲労が生まれて熟睡効果をゲット可能。同時に大腿を鍛えることは血行促進に有用で女性ホルモンの分泌を促し、子宮周りを元気にさせることにもつながる。

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【NG習慣4】睡眠中に照明を薄明かりにする

真っ暗な状態が怖い、お手洗いに行く際に物にぶつかるのが嫌だからと、豆電球や間接照明をつけて眠る人は多いのでは? でも、良質な睡眠をとるには真っ暗にして、眠りホルモンのメラトニンを十分に分泌することが重要。メラトニンはロウソクの炎ほどの少しの薄明かりでも分泌されなくなり、フランス人は「満月の夜は眠れない」と言うくらいなんだとか。ベッドに入ったときは少し灯りがあってもいいので、タイマーで灯りをダウンさせて最後は真っ暗になるようにするなどの工夫を。

【NG習慣5】寝具が快適でない

枕の高さが合ってないために首が痛くなる、ナイトウェアがもたついて寝返りしにくいなど、寝具に関するお悩みがある人は熟睡できていない可能性あり。低反発か否かは好みでOKだけど、自分の首に合う高さの枕、自分に合ったサイズのナイトウェアを選ぶことは肝心。ナイトウェアや枕カバーは吸水性・吸湿性・放湿性が高く、夏は涼しく、冬は暖かいシルク素材のものをセレクトするとベスト。寝返り時の摩擦も少なく、肌も髪もツルツルに。

【NG習慣6】就寝3時間以内の食事・ナイトキャップ代わりの寝酒

良質な睡眠を取るには、夕食に脂っこいものは避け、消化が良く、温かいものを食べるのが理想。さらに睡眠中に消化が行われて睡眠が妨げられないよう、就寝3時間前には夕食を終わらせるように。もちろん、一定の時間に夕食をとり、体内リズムを乱さないように心がけるのも大切。また、寝酒は入眠効果があっても、成長ホルモンが自然入眠の時のようにしっかり出ないうえに睡眠の質を落とし、中途覚醒や早朝覚醒を多くしてしまうので、ぜひやめてほしいもの。

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【NG習慣7】靴下を履いたまま寝る

入浴後に体を冷やさないよう、靴下やレッグウォーマーをつけるのは良いけれど、寝るときは足元の熱放出を妨げないよう、靴下は脱ぐように。レッグウォーマーはつけていてOK。ただし、蒸れずに快適なシルク素材のものにして。

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【NG習慣8】寝付けないのに30分以上布団の中にいる

布団の中に入ったものの、なかなか寝付けずに気づいたら1時間経過……なんて経験はない? 寝なきゃと思えば思うほど、余計寝付けなくなるもの。でも、脳には布団の中=ぐっすり寝る場所、と関連付けさせることが重要。寝付けないなら、思い切って布団から出て、本を読んだり、整理整頓をしたり、温かい豆乳や白湯を飲んでみて。ただしスマホやパソコンの使用は避けて。ブルーライトを浴びることで、「日中だ!」と錯覚を起こさせ、結果的にメラトニンの分泌を制御して睡眠の妨げに。

快眠を呼ぶ「カップルマッサージ」とは?

「上記のNG習慣をやめるほかに、ぜひ取り入れてほしいのがカップルマッサージ

パートナーはもちろん、親子でも、大切な相手なら誰でもOKです。オイルは使っても使わなくても良いので、中医学でいう経絡やツボを意識して押して。難しければ、揉んだり、さするだけでもOK。血行が良くなるのはもちろん、幸せホルモンのセロトニンやオキシトシンが分泌され、これらがストックされることで、快眠につながります。

また、私も睡眠美容外来で処方している大麻成分配合のCBDバウムもおすすめ。ただし、品質にはこだわってくださいね。足裏に塗ってマッサージすると、睡眠障害の改善に効果が期待できますよ」(岩本先生)

「熟睡するために」と思うと、生産性がないと思えてしまうかもしれないけど、『キレイになるために』と思えば、モチベーションがアップし、NG習慣もやめられるはず。この機会にぜひ、キレイになるために快眠ライフにシフトして。

【教えてくれた人】

岩本麻奈先生

岩本麻奈 睡眠美容

皮膚科専門医、日本温活協会代表理事、日本コスメティック協会名誉理事長、ナチュラルハーモニークリニック表参道副院長、グランプロクリニック銀座理事長。東京女子医大卒業後、慶應病院や済生会中央病院などで臨床経験を積み、1997年に渡仏。フランスで20年以上を過ごし、美容皮膚科学、自然医学、抗老化医学などを学ぶ。帰国後は、ナチュラルハーモニークリニック表参道、グランプロクリニック銀座で睡眠美容外来を設立し、睡眠による美容効果を啓発。著書に『睡眠美容のすすめ』(西村書店)などがある。YouTubeでも美容情報を発信中。

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YouTube:Dr.MANAの睡眠と美容とお肌について【専門チャンネル】

Text:ERI HAMADA

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Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico