食事と運動に並んで睡眠は、健康を支える3本柱の1つ。質の高い睡眠は心身の健康に不可欠で、睡眠の質が低いと心疾患、2型糖尿病、うつ病、肥満のリスクが高くなる。

スッキリと目覚めるためには1日7~9時間の睡眠が必要といわれるけれど、実際に必要な睡眠時間は、その人の年齢、精神的・身体的な活動量、ジェンダーといった多数の要素次第で変わる。

高級寝具メーカー『A.H.Beard』の顧問睡眠エキスパートで、著書に『The Complete Guide to a Good Night’s Sleep』を持つ睡眠科学者のカーメル・ハリントン博士によると、女性は女性というだけで、男性よりも長い睡眠時間を必要とする。ほかのことではパートナーと息が合っても、必要な睡眠時間に関しては体のつくりが生まれつき違うそう。

「思春期までは男の子でも女の子でも同じですが、思春期以降は死ぬまでずっと、女性に必要な睡眠時間が男性よりも20分ほど長くなります」とカーメル博士。

一体なぜ? 睡眠の質の高め方と併せて専門家がオーストラリア版ウィメンズヘルスに教えてくれた。

ホルモンバランスの変化

女性の場合、ホルモンに睡眠を阻害されるケースは多い。生理周期の特定のステージで眠れなくなる人もいれば、生理痛や体温の変化によって眠れなくなる人もいる。「生理が近づくと月経前緊張症候群(PMT)でイライラしたり、不機嫌になったり、感情的になったりする人も多いです」ハリントン博士。「これもまた寝不足の典型的な要因ですね」

また、生理周期の後半では、睡眠ホルモンのメラトニンに体が反応しにくくなるので、就寝前の1時間はブルーライト(スマホやテレビの使用)を避け、赤色光でメラトニンの産生を促そう。

女性であるという事実

女性は男性よりも不眠や過度の眠気といった睡眠障害を抱えやすい。米国立睡眠財団の調べによると、女性の約15%(男性の8%)はなにかしらの睡眠障害を経験しており、女性の63%(男性の54%)は少なくとも週3~4日の不眠に苦しむ。

パンデミックによるライフスタイルの変化

コロナウイルス感染症拡大によるロックダウン以降、通常の家事や育児に加えて、家で仕事をしたり子どもに勉強を教えたりする女性が増えた。もちろん、パートナーの協力が得られるケースはあるけれど、オークランド大学のニーナ・ワッデルが行った2021年の調査結果を見る限り、女性は育児と家事の半分以上を担っていて、自分の時間と人間関係を犠牲にしている。

また、経済学者のダニエラ・デル・ボカは、パンデミックによるロックダウンの前と最中で、男女の仕事、家事、育児の状況を比較した。その結果、リモートワークにならなかった人を除いて、調査に参加した全ての女性がロックダウン前よりも多くの時間を家事に費やしていることが分かった。

妊娠

妊娠も、女性の睡眠を阻害する大きな要因。妊娠に伴う体重の増加、吐き気、レストレスレッグス(ムズムズ脚)症候群、逆流性食道炎は不眠をもたらすことで有名。睡眠が途切れる回数は極力減らしたいけれど、妊娠中の女性の多くは、上記に加えて不快感、生々しい夢、夜間の頻尿といった複数の問題に直面するため、まとまった睡眠が取れずにいる。

更年期

妊娠と出産を終え、やっと眠れるかと思いきや、あっという間に更年期。閉経前後の数年間は、ホルモンバランスの変動に伴うホットフラッシュや早朝覚醒で眠れなくなることが非常に多い。

「50歳前後の女性の2人に1人は睡眠障害を抱えています。あなたも苦しんでいるのなら、ひとりぼっちじゃないことを覚えておいてくださいね」とカーメル博士。「通気性のよい寝具を使ったり、寝室に扇風機を置いたりすると状況が改善するかもしれません。体温を下げるものなら、なんでも役に立ちますよ」

睡眠の質は、朝起きたときの気分で測れる。頭も体もスッキリしていて、今日も1日頑張れそう? ご機嫌斜めで、やるべきことを考えただけで疲れてしまう?

女性がぐっすり眠れる確率は男性よりも低いけれど、睡眠の質に気を配り、その改善に向けて努力をすれば状況が一変することもある。前述の要因で睡眠の質が下がっていると思うなら、日中と夜間を通して以下のことを試してほしい。

専門家が勧める睡眠の質の高め方

・週末を含め、毎日同じ時間に起きて寝る。

・精神的にも身体的にもアクティブでいる。1日最低30分の運動も欠かさずに。

・カフェインは午後2時まで。

・寝室の温度を18~22℃に設定する。

・就寝前の1時間はブルーライトを浴びない。ブラインドを下げて、赤色光かキャンドルを使う。

・高品質の寝具とマットレスに投資して、睡眠環境を整える。

 

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: WH Staff Translation: Ai Igamoto