日中に突然感じるエネルギー不足や注意力の低下に対応するため、コーヒーやチョコレートバーなど、カフェインを含むものに頼る人は多いはず。ただ、専門家によれば、「パワーナップ」を取り入れることで、よりスマートにエネルギーレベルを引き上げることが可能だそう。特に在宅ワークをしている人には、お勧めの方法といえるかもしれない。

睡眠科学の専門家で、ハーバード大学医学大学院の指導医でもあるレベッカ・ロビンズ博士によると、「パワーナップ」は日中におよそ20分、長くても30分までの短い時間の仮眠を取ること。また、より良い睡眠をサポートするイギリスのスリープ・スクールの共同創業者、ガイ・メドウズ博士によれば、わずか10分の仮眠でもいいという。

重要なのは、(深い眠りに達する前の)まだ浅い眠りの段階で起きること。眠る時間が長くなりすぎると、「睡眠慣性」と呼ばれるぼんやりした状態で起きることになり、眠る前よりさらに眠く、だるくなるそう。

ちなみに、これに代わるもうひとつの仮眠の取り方として、90~110分の「フルサイクルナップ」がある。この睡眠は、深いノンレム睡眠を経て再び浅いレム睡眠へと戻る1サイクルと考えられている。メドウズ博士によると、この方法は眠りがまた浅くなるタイミングで起きるので、「睡眠慣性」を避けることができるそう。

これは、睡眠負債(慢性的な睡眠不足)がある人(シフト勤務をする人や生まれたばかりの赤ちゃんがいる人、体調不良の人など)に、対応策として取り入れる人が多い方法だという。

「パワーナップ」のメリット

ロビンズ博士によると、パワーナップで得られる最大のメリットは、「眠気が解消されること」。

「日中に疲れを感じたときに私たちがするのは、皮肉なことに睡眠を取る以外のあらゆること。ただ、実際に眠気を覚ますことができる科学的根拠に基づいた唯一の方法は、眠ることなのです」

そして、パワーナップのもうひとつのメリットは、心身ともにエネルギーレベルが高まること。「私たちはパワーナップがクリエイティビティと効率性を高めると考えています。つまり、職場で昼寝を取り入れるのも効果的でしょう。身体活動の面でいうと、たとえばプロのアスリートは、パワーナップを取ることで身体的エネルギーが増加すると考えられます」とロビンズ博士は話す。

また、メドウズ博士によれば、過去の研究では、仮眠を取ることによって高血圧や体重管理、冠動脈疾患リスクといった身体面の問題に改善がみられるとの結果が示されているそう。さらに、パワーナップはメンタルヘルスの向上にも効果的で、「ストレスを軽減し、幸福度を高める」こともわかっているという。

昼寝のデメリット

ただ、日中に仮眠を取ることが、すべての人にお勧めの方法というわけではない。特に不眠症など、夜眠ることに問題を抱えている人にとっては、良い方法ではないそう。ロビンズ博士によると、それは昼寝をすることで、「睡眠圧」が低下してしまうため。

博士は、「睡眠圧は日中、時間の経過とともに上昇していくものです。就寝する時刻の前後、たとえば午後10~11時に最も高くなるのが理想的です」と述べている。

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「パワーナップ」に適したタイミングは ?

メドウズ博士によると、「最適なのは、自然に眠気を感じる正午から午後3時の間」。昼食後にだるさを感じる「ランチ後のスランプ」は、実際には体内時計が発する「覚醒」を促すシグナルが、自然に弱まり始めるために起きることだという。

また、日中に仮眠を取るベストなタイミングは、朝型か夜型かによって異なるそう。博士は、「早起きの人は、正午近く、夜型の人は午後3時頃に昼寝をするのがいい」と説明する。ただ、夜寝付けなくなる可能性があるため、これより遅い時刻に眠くなった場合は、昼寝は我慢した方が良いとのこと。

そのほか、仮眠を取るのが何時からであっても、毎日同じ時刻からにすることを心掛け、習慣化するのがお勧めだという。

昼寝も「時間管理」が大切

理想的な昼寝の長さは、約20分。ただ、メドウズ博士によれば、適切な長さは人それぞれ。目が覚めたときに、すっきりした気分になれるのがその人にとってベストの長さだという。

「異なる長さで(昼寝を)試してみて、起きてから5分以内にシャキッとした気分になれば、それがあなたにとっての最適な昼寝時間です」「逆に頭が混乱したりボーっとしたりした状態であればその長さはあってないと考えて良いでしょう」

また、博士はパワーナップ初心者について、次のようにアドバイスしている。

「慣れていない人は、まず時間を決めて、深い眠りに入る前に起きられるようにアラームをセットして、仮眠を取るようにしてください」「習慣になれば、アラームをセットしなくても自然に、(同じ時間で)目が覚めるようになるでしょう」

「パワーナップ」は習慣にすべき?

昼寝の必要性は、その人がどの程度、それを必要としているかによって異なるそう。メドウズ博士は、「たとえば、眠気が運転に影響を及ぼしているという場合などには、注意力とエネルギーレベルを高めるために、すぐに仮眠を取るのが効果的でしょう」と述べている。

一方、瞑想やエクササイズと同じように、健康のための毎日のルーティーンとして、昼寝を習慣にすることもできる。

仮眠に適した場所は?

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ベッドやソファ、リラックスできるイスなど、自分に合っていると思えばどこで昼寝をしてもいい。ただ、メドウズ博士は、「できるだけ静かで、暗く、快適な環境を作るよう心掛けましょう」とアドバイスしている。

また、ロビンズ博士は、「私たちのまぶたは、とても薄いのです」として、日光が眠りにつくのを妨げていると感じられる場合には、アイマスクを使うことを勧めている。

過去の研究では、ホワイトノイズや雨滴が落ちる音などのように自然に発生する背景雑音が、心を落ち着かせるとの結果が示されている。

その他、快適なパワーナップのためのヒント

メドウズ博士は、「パワーナップ」を実践するには、眠ることに対する適切な考え方を持つことが重要だと指摘している。たとえば、眠れないときにはそれを認め、受け入れるのが重要だとして、次のように話している。

「必ずしも、体を休めるために眠る必要はないのです。それを理解しておくことが大切です」「逆説的ではありますが、そう考えることが『眠ろう』というプレッシャーを取り除き、眠りにつく可能性を高めるのです」

これには、ロビンズ博士も同意している。

「目を閉じて、脳のスイッチをオフにしようとする時間を少し取るだけでも、メリットはあります」

また、ロビンズ博士によれば、日中になかなかスイッチをオフにできないという人には、昼寝前にお勧めしたい方法があるという。

「たとえば、1. 後でボスとミーティング、2.仕事帰りにクリーニングに出していた服を受け取る……など、頭にあることを 5つ、一枚の紙に書き留めておくのです」

そうすることで、「よし、これで安心して30分間、脳に栄養を与えるための時間を取ることができる」と思えるそう。こうしたポジティブなセルフトーク(独り言)も、役に立つとのこと。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From Harper’s BAZAAR UK

From: Harper's BAZAAR JP
Headshot of Bridget March
Bridget March

Bridget March is Bazaar's Digital Beauty Director overseeing all beauty content, including wellbeing. From news and interviews to tutorials and treatment reviews, she answers the beauty questions you’re searching for with expert advice and takes deep dives into the latest trends. Bridget has written for various brands within the Hearst digital portfolio and was formerly Digital Beauty Editor at Cosmopolitan. She lives with her husband and two sons in the Cotswolds. 

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