無月経は実に悩ましい問題。生理が毎月欠かさず来るのも面倒ではあるけれど、何カ月も止まった日には超不安。

生理が不順になること自体は、珍しくもなんともない。2019年の調査では、19~54歳の女性の14%以上が生理不順だった。でも、長期的な無月経の裏には、深刻な基礎疾患が潜んでいることもある。

無月経とは?

無月経とは、その名の通り、生理が来ないことを言う。無月経には2種類あって、18歳を過ぎても生理が来ないのは「原発性無月経」、以前は生理があったのに何らかの理由で止まるのは「続発性無月経」。

閉経すれば生理は来なくなるけれど、無月経は閉経以外の理由とタイミングで誰にでも起こりうる。この記事で扱うのは続発性無月経。

無月経の症状

一般的に、以下の場合は無月経と診断される。

・もともと順調だった生理が3カ月以上来ない場合
・もともと不順だった生理が6カ月以上来ない場合

産婦人科医のシリン・イラニによると、閉経や妊娠の可能性がないのに生理が来ないときは、病院へ行ったほうがいい。

無月経は、それ自体が何かの症状とも言える。「生理は健康のバロメーターです」と話すのは、スポーツ・ダンス内分泌学者のニッキー・ケイ博士。「生理が周期的であれば、少なくとも年に9回は来るはずです。そうでないときは、体の中に何らかの問題があるのかもしれません」

無月経に伴うリスク

生理がなければ、いろいろな意味で都合がいいのかもしれない。でも、無月経には、放っておくと厄介なことになりかねないさまざまなリスクが伴う。

骨のカルシウム含有量を維持するためには、ある程度のエストロゲンが必要になる。通常、エストロゲンは月経から排卵の間に自然と増える。でも、生理が止まってエストロゲンが増えなくなると、骨がだんだん弱くなり、骨減少症や骨粗しょう症のリスクが高まる。

当然ながら、無月経では妊娠するのも(不可能ではないけれど)難しい。

無月経でも妊娠できる?

栄養療法士で機能性ホルモンスペシャリストのカイ・アリいわく不可能ではない。「体外受精などの方法がありますからね。でも、妊娠には排卵が必要なので、無月経の人が自然妊娠する確率は低いでしょう」

無月経の治療法

無月経の治療法は原因によって異なる。一般的に、早期卵巣不全(早期閉経)や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が原因の無月経には薬が用いられる一方で、太りすぎや痩せすぎ、エネルギー不足が原因の無月経には生活習慣の改善が勧められる。

ここからは、無月経の主な要因と治療法を見ていこう。

原因別:無月経の治療法

生理が止まる原因は人の数だけあるけれど、もっとも多いのは以下の8つ。

1.妊娠

子宮内膜は、受精卵が着床しやすいように1カ月かけて厚くなり、あなたが妊娠しなければ、剝がれて生理を引き起こす。つまり、生理が来ないということは、妊娠の可能性があるということ。

2.早期卵巣不全(早期閉経)

早期卵巣不全とは、あなたが40歳を迎える前に卵巣機能が低下すること。

放出する卵子がなくなるので生理が止まり、それと同時にホットフラッシュ、膣の乾燥、気分のムラといった更年期の症状が現れることもある。

なぜ? 卵巣がエストロゲンを分泌しなくなって、ホルモンのバランスが一気に崩れるから。この状態は早期卵巣不全の診断に欠かせない。

「早期卵巣不全を放っておくとエストロゲンが欠乏するため、年を取ってから骨が弱くなる可能性が高くなります」とイラニ医師。早期卵巣不全は心疾患、認知症、うつ病のリスクも高める。

治療法:この理由で生理が止まっても、打つ手がないわけじゃない。早期卵巣不全は、ホルモン補充療法と生活習慣の改善で対処が可能。

3.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

PCOSは、生理周期を調節する周期性のホルモンが正常通りに働かない状態。通常は卵巣内で1つの卵胞が成熟し、卵子となって卵管に放出される。でも、PCOSでは複数の卵胞が作られて成熟しない。

その結果が無月経。生理が来ないと子宮内膜が厚くなり、異常な細胞が増えるため、子宮内膜がんのリスクが高まる。

でも、アリによると、PCOSの症状は無月経や生理不順だけじゃない。「無月経だけでPCOSと診断されている人は、血液検査でホルモンレベルを調べてもらうべきでしょう」

治療法:PCOSには投薬治療だけでなく、食生活や運動習慣の改善も効果的。

生活習慣の改善で、PCOSの症状が管理しやすくなったという女性は多い。「PCOSの女性は血糖値に注意しなければなりません」と話すのは、栄養士のメラニー・ブラウン。「(PCOSが原因の)インスリン抵抗性が他の女性ホルモンの調子を狂わせることは多いですから」

「血糖値の管理には、タンパク質と食物繊維が豊富な食品や複合糖質がオススメです。どれも分解に時間がかかるので、エネルギーが血中にゆっくり放出されるようになりますし、インスリンの急激な分泌も防げます」

4.太りすぎ

「太りすぎると、血中のエストロゲン濃度が通常よりも高くなる“高エストロゲン症”になります」イラニ医師。

「これは、エストロゲンが卵巣に加えて脂肪組織からも分泌されるからです」。かいつまんで言えば、エストロゲンが多すぎると生理が止まるということ。

治療法:言うまでもなく体重を減らすこと。病院では、出血(ニセの生理)を促すためにプロゲステロンが処方されることもある。無月経で厚くなった子宮内膜を放置すると、子宮内膜がんに発展する可能性があるので要注意。

5.痩せすぎ

bread with fresh olive oil
leonori//Getty Images

太りすぎと同様、痩せすぎも生理周期を狂わせる。なぜ? 体脂肪はエストロゲンの貯蔵庫だから。「女性の生理が止まる理由として一番多いものの1つが体脂肪不足です」とブラウン。

「妊娠を継続するには、ある程度の体脂肪が必要です」。この“ある程度”は基準値のようなもので、その値は人それぞれ。そして「その人の体脂肪の量が基準値を下回ると、脳下垂体が生殖器に『生理に必要なホルモンを分泌せよ』という指令を送らなくなります」

これは“低エストロゲン症”と呼ばれる状態で、将来の骨の健康状態に大きな影響を及ぼす。「痩せすぎで無月経の人は、若くして骨粗しょう症になってしまうかもしれません」とイラニ医師。

痩せているけれど生理はあるから大丈夫? 「生理があろうとなかろうと、痩せすぎれば女性ホルモンの有効性が低くなります」とブラウン。

「言うなれば、全脂肪のクリーミーな牛乳と水っぽい低脂肪乳の違いみたいなものですね。エストロゲンとプロゲステロンは全脂肪のほうがいいですよ」

治療法:「体重を増やしましょう」とイラニ医師。

ブラウンのオススメは地中海式の食生活。そして「食事は絶対に抜かないこと。体重を増やすためには、栄養価とカロリーの両方が高い物を食べなければなりません。具体的には、植物性の脂質、全脂肪の乳製品、複合糖質。サツマイモ、玄米、新鮮な果物、チーズやナッツを取り入れ、シード入りの全粒粉パンにはピーナッツバターを塗って、なんにでもエキストラバージンオリーブオイルをかけましょう」

6.スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)

スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)は、正常な身体機能を維持するだけのエネルギーが不足すること。「トレーニングのしすぎなのかもしれませんし、摂取カロリーが少なすぎるのかもしれませんし、その両方なのかもしれません」とケイ博士。

「これは体が低電力モードに入るようなものですね。充電が切れてしまわないよう、不必要なアプリをオフにして消費電力を節約するモードです。そして女性ホルモンは、一番最初にオフになるものの1つです」

少し前まで、RED-Sになるのは本格的なアスリートくらいだった。でも、ケイ博士いわく最近は、ジムに通っているうちにRED-Sが原因の無月経になる女性が多い。「みんながみんな痩せすぎというわけでも、1日に2回以上トレーニングをしているわけでもありません。基準点は人によって違います」

治療法:この場合は自分でトラブルシューティング可能。ケイ博士いわく大事なのは、1日に最低3回、タンパク質、脂質、糖質を含む適度な量の食事をすること。運動前に糖質中心のスナック(シリアルバーやバナナなど)を食べ、運動後は30分以内にタンパク質と糖質を含むスナックで体をリチャージ。

もしくは運動の強度を下げて。HIITの代わりに筋トレをするのもいいし、ファスティング状態で行う有酸素運動(ファステッド・カーディオ)をやめるのもいい。生理が戻ってくるまでに数カ月かかるかもしれないので、すぐに生理が来なくてもガッカリしないで。数カ月経っても生理が来ないときは病院へ。

7.避妊ピル

「長時間作用型の避妊ピルは、体本来の排卵機能を抑制することがあります」とイラニ医師。「その使用をやめたあとも、しばらくは生理が来ないかもしれません」

治療法:ピルをやめれば、ほとんどのケースにおいて生理は自然と戻ってくる。だから、妊娠を望んでいないなら気長に待つだけ。妊娠を望んでいる人や、ピル以外の方法で避妊を考えている人は、事前にピルをやめる際の注意点を確認しよう。

8.ストレス

single mom stretching doing yoga at home
Tom Werner//Getty Images

私たちの先祖たちは、自然の中で日々生存のために戦っていた。でも、ちょっと想像してみて。クマから逃げているときに生理が来たら困らない?

幸いにも私たちの体は、そんなことが起こらないように作られている。「戦うか逃げるかの決断を迫られるような危機に直面すると、体はコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌して生理を止めます」とイラニ医師。「体としては、闘争中に子作りをされるのだけは避けたいですから」

現代人が日常生活の中でクマと対峙する可能性は低いけれど、体に警戒体制をとらせるほどストレスフルな出来事に直面することは多々ある。就職活動中の面接、引っ越し、あるいは死別。「ストレスは無月経の大きな要因です。見過ごしてはいけません」とイラニ医師。

治療法:ヨガや瞑想でストレスを減らす努力を。

最後に

生理の管理は、アプリなどを活用して、あなたにとっての“正常”を知ることから始まる。でも、生理が6カ月以上止まっているなら病院へ。

「毎月必ず生理が来る必要はありません。でも、来ない期間が長すぎるのは危険です」とイラニ医師。「生理は体内をキレイにする大切な仕組みですから」

また、生理が来ないというだけで排卵がないことにはならない。よって、避妊ピルをやめれば妊娠する可能性があることも覚えておこう。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Emma-Louise Pritchard And Kirsti Buick Translation: Ai Igamoto