2022年4月より、保険適用となり、3割負担となった不妊治療。これを機に妊活に対して興味を持った人も多いのでは? お金の負担は減るといえど、時間や労力の負担が減るわけではないのが妊活。いかにストレスなく妊活を進められるか、”めんどくさい”を取り除くための方法ってあるの? そこで、婦人科医と医療ライターがタッグを組んで最新フェムケアをまとめた『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著書から一部抜粋してレクチャー!
不妊治療のハードルはもはや費やす時間?
「不妊治療には時間やお金がかかりますし、肉体的・心理的な負担も気になるところです。不妊の原因は男女半々にありますが、不妊治療は女性の心身への負担が大きいのが実情です。また不妊治療には、仕事との両立が難しいという課題もあります」(医療ライター及川夕子さん)
厚生労働省の調査によると、働きながら不妊治療をすることに対してなかなか進めらずにいる女性も多いようだ。
両立できずに退職した人 16%
治療をやめた人 11%
雇用形態を変えた人 8%
参考文献:「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf
月経ごとの通院の日数は最長でなんと月間で10日間。これだけの時間をとられるとなると、お金の問題以上に、不妊治療に対しての会社からの理解や、女性における雇用制度の抜本的な改革など、日本の社会課題も大きいと言えるだろう。
「子どもを持つか持たないか、いつ持つのか、何人持つのかは、個人の自由であり、当事者カップルの選択だということです。現代はいろいろな選択肢があり、生き方も多様化してきています。誰に強要されるのでもなく、子どもを持ちたいと思ったときに、さまざまな選択肢があり、その中から自分に合う道を選べることが大切だと思います。でも、自分が納得して選択をするには、知識や情報が必要です」(医療ライター及川夕子さん)
妊活を始めようと思っても、知れば知るほどに面倒に感じてしまう人も多いのではないだろうか。そこでおすすめなのが、フェムテックやサービスを活用すること。ここでは、よく妊活で面倒とされる5つのハードルをピックアップし、解決策を提案する。
情報収集を始めるのがめんどくさい
妊娠をする上で大切なのは情報収集。何をやったらいいのかわからなかったり、調べる時間もなかったりする女性も多いのでは?
そこでおすすめなのが、有料アプリ「ファミワン」である。
✅情報があふれすぎていて、何から始めたらい いかわからない
✅妊活のストレスを誰かに聞いてほしい
✅聞きにくいことを、専門家に相談したい
✅夫婦関係がギクシャクしてしまっている
など、専門家がLINEを活用して情報提供をしたり、アドバイスをしてくれたりする、妊活に特化した相談サービスである。
妊活が思ったよりも長期戦に持ち込まれた時、体よりも心理的なケアが大切になってくることもあるので、こういったサービスを積極的に利用することで心身ともに負担を和らげていこう。
毎朝の基礎体温測定がめんどくさい
妊娠率を上げるには、一般的に排卵日をできるだけ正確に把握して、性交渉のタイミングを合わせるというタイミング法から始める人も多いだろう。
排卵日を知るには……
1 女性の生理周期から妊娠しやすい日をチェックする
2 おりものの変化から妊娠しやすい日を予測する
3 排卵日を予測する検査薬を使う
4 産婦人科や不妊治療専門クリニックで検査を受け医師のアドバイスを受ける(不妊治療のファーストステップ)
そこで大事なのが毎朝の基礎体温測定。でも、これが本当に面倒な行為の一つであることも間違いない。フェムテックが進む昨今、このめんどくさいから解放されるには、ウェアラブルデバイスに頼ってみよう。おすすめは、体温を自動測定してくれるナイトブラ。専用のナイトブラをつけて寝るだけで、女性特有の高温期・低温期を測定し、アプリにデータを自動転送。毎朝記録する煩わしさや記録忘れから解放してくれるというから驚きだ。
※医療機器ではありません。
おりものがバロメーター?
また、タイミング日を測るのに、基礎体温と並んで、重要な指標の一つになるのがおりもの。排卵日が近づくと精子が子宮にたどり着きやすくするために粘り気のあるおりものが多く分泌されるという。
海外ではおりものから妊娠しやすい日を予測することもあるようで、おりものからデータを収集する妊活機器なども開発されており、実は日本国内での販売に向けて臨床医試験の真っ最中のようだ。
パートナーにタイミング日を伝えるのがめんどくさい
タイミング法は妊娠する上で非常に効率的な行為ではあるものの、始めてしまったがゆえに、セックスレスに……なんていう声もよく耳にする。セックスすることが、義務感になってしまい、夫婦間がギクシャクしてしまった、という人も少なくないのでは? また、毎月いちいち女性から伝えなければならないというのも、面倒なこと。そこでお薦めしたいのが、アプリ「KONOTOKI」。
カップル同士でつながって、妊娠予測や女性の体調の記録、お互いの予定などを共有することが可能。生理や基礎体温、体重なども簡単に管理でき、妊活アドバイスも届く。
病院に行くのがめんどくさい
最近では、卵巣年齢や精子の状態は自宅で調べられる時代に。血液や尿、唾液などを採取するだけで、いろいろなことがわかるという。
例えば……?
✅卵巣年齢AMH検査
※病院での検査は¥5,000~10,000円程度かかる場合が多い。
✅精子の状態を調べる検査
※病院では¥1000程度
✅子宮内フローラ(内の菌の集合体)検査
※病院では¥44,000程度
忙しくて受診する時間がないときや、受診をためらっている場合にも、家にいながら検査できるキットはとても便利に感じるはず。病院での受診は行くためにある程度時間かかるものの、行ってしまえば検査されるだけというメリットはある。いずれにしろ、まずは、どんなものがあるのかチェックしてみよう。
自宅で手軽にできるおすすめキット
卵巣年齢って何?
卵巣予備能のことで、卵巣に卵子があとどれくらい残っているかを推定する一つの目安になる。妊娠には、卵子の質も関わってくるので、AMH(発育過程にある卵胞から分泌されるホルモン)が低いからといって妊娠できないというわけではない。不妊治療を早くスタートした方がいいという判断材料になるので、不妊治療の現場では、判断材料の一つとして検査をすることがあるそう。
セックス(するタイミングを合わすのが)がめんどくさい
妊活の前に、性交渉自体にハードルがあるカップルもいるだろう。
✅義務感でセックスするのがつらい
✅忙しくてタイミングが合いにくい
✅性交痛で悩んでいる
✅早漏やEDで悩んでいる
など、これらの悩みには、性交痛を和らげるための潤滑ゼリーや性交痛軽減グッズを試してみるのも一つの手。もしくは、パートナーと使えるバイブレーションなどを使って性交渉を楽しんでみるところからスタートしても。それでもなかなかうまくいかない場合には、シリンジ法を使うという手もある。
シリンジ法とは?
男性が自分のペースで射精して採取した精子を、針のない注射器のようなツールを使って女性の腟内に注入。子どもは欲しいけど、射精障害などがありセックスするのが難しい、忙しくてタイミング日にセックスできないというときにも助かるアイテム。
夫婦の妊活をサポートしてくれるおすすめアイテム
「自分はどうしたいのか、パートナーの考えはどうなのか、落ち着いて心を見つめる時間も必要だと思いますが、選択肢は一つではないことを知っておくだけでも、妊活を続けていくモチベーションになるかもしれません」 (及川さん)
現代の女性には多くの選択肢があり、そして、ライフステージによってヘルスケアの方法は異なっていく。年齢や体質に応じて、女性の体をサポートしてくれるフェムテックアイテムをうまく活用し、セルフケアに対して主体的に向き合っていくことがウェルフェアな生き方になるはず。全ての世代の女性に向けて、フェムケアをまとめてくれたバイブルをぜひチェックしてみて!
監修:高橋幸子(たかはし・さちこ)
埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科/医学教育センター 助教。 日本家族計画協会クリニック非常勤医師。 彩の国思春期研究会西部支部会長。 年間120回以上、 全国の小学校・中学校・高等学校にて性教育の講演を行っている。 NHK「あさイチ」、 「ハートネットTV」、 「夏休み!ラジオ保健室~10代の性 悩み相談~」に出演、 AbemaTVドラマ「17.3 about a sex」、 ピル情報の総合サイト「ピルにゃん」、 家庭でできる性教育サイト「命育」を監修するなど、 性教育の普及や啓発に尽力。 著書に『マンガでわかる! 28歳からの おとめのカラダ大全 今さら聞けない避妊・妊娠・妊活・病気・SEXの超キホン』(KADOKAWA刊)『ラジオ保健室 10代の性 悩み相談BOOK』(NHK「ラジオ保健室」制作班との共著。 リトルモア刊)など。
著者:及川夕子(おいかわ・ゆうこ)
医療ライター。 ライター、 編集者。 新聞社勤務を経て、 20代後半で独立しフリーランスに。 新聞、 雑誌、 書籍、 WEBメディアなどで、 記事の企画、 編集、 執筆を手がける。 近年は、 女性特有の健康課題、 更年期のヘルスケア、 メンタルヘルス、 性暴力やジェンダーの問題の取材、 執筆を中心に精力的に活動。 NPO法人更年期と加齢のヘルスケア学会・メノポーズカウンセラー。
タレント・アスリートインタビュー・スポーツファッション・ウェルネス記事などを担当。女性誌FRaUでファッション・スポーツ・ダイエットなどの編集キャリアを積み、その後スポーツライフスタイルマガジンonyourmarkのプロデューサーとして在籍後、2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。