新型コロナウイルスの流行により、以前より友達や大切な人と過ごす時間が少なくなったという人は多い。人と会いにくくなったいま、「ひとり時間」「ソロ活」という言葉が注目されている。「寂しい」という感情はなく、ひとりが好きという理由で単独行動をする「ソロ活女子」が増えているのだとか。
いったいソロ活女子は、どこでひとり時間を過ごし、なぜひとりで行動するのかと疑問に思う人もいるのでは? そこで、『ソロ活女子のススメ(大和書房刊)』を執筆し、ソロ活のプロと言われている朝井麻由美さんに、ソロ活の魅力やひとり時間を楽しく過ごすアイデアを伺った。

ソロ活は幼少期からの「習慣」

女性のソロ活が話題を呼び、本を出版した朝井さん。実は、「ソロ活をしよう!」と始めたわけではなく、気がついたらソロ活をしていたんだそう。ひとりっ子であったため、小さい頃からひとり遊びが上手だったのが理由だと話す。
「昔から集団行動がとにかく苦手で......。また、兄弟がいなかったこともあり、他の人よりもひとりでいる時間が多かったと思います。そのため寂しいと思うことはなく、むしろ家で“ひとり遊び”をすることが当たり前でした。現在もフリーランスとして活動しているので、誰かと行動することが少ないですね。
このような環境もあり、必然的にひとりでどこかへ行くようになったのだと思います」

多くの男女に勇気を与えた、朝井さんの「ソロ活連載」

そんな朝井さんだが、ソロ活について発信し始めたのは6~7年ほど前。“ソロ活”というウェブサイトの立ち上げがあり、そこで連載をしてほしいと依頼があったという。
「もともと自分が日常的にやってきたことではありましたが、コラムとして書くのはこれが初めてでした。これが思いのほか反響をいただき、その後、書籍化やドラマ化に繋がっています」

ひとりでいても、実は周りは気にしていない

「ファンや読者の方からは、“勇気をもらえました”“自分もやっています”“ひとりでもいいんだ、と気づきました”などというメッセージをいただいています。こういったお声をいただく背景には、ひとりで行動することが不安だったり緊張したり、ひとりでどこかへ行くという選択肢がそもそもなかったりなどがあるのだと思います。ですが、実際は自分が思うほど他人は自分のことを誰も気にしていないんですよね。自分に置き換えて考えると、例えば昨日外食をしたとして、どこの席にひとり客がいたかなんてあんまり覚えていないはず。だから、ひとりでいることの“恥ずかしさ”のようなものって、『この店はひとりで行くものではない』など自分の思い込みとの戦い、みたいなところが結構あります」

ひとり=ネガティブではない。連載を通して、ひとり行動についての考えが深まる

一昔前まで、ひとり行動については、“ぼっち”という言葉を用いて自虐的に使われるケースが多かった。
朝井さんも、世間の風潮に流されて自虐していたこともあるのだとか。しかし、自分は好きでひとりでいるのだから、わざわざ自虐しなくてもいいのではないか、と思うようになったそう。
「ひとりでいることを自虐するのって、つまりは内心では『みんなでワイワイしたい』と思っているから、ですよね。でも、よく考えたら私、人が多いところは苦手ですし、大人数の飲み会とかも疲れちゃいますし、『みんなでワイワイ』がそもそもそんなに得意じゃない。だからこそひとりでいることが心地いいと感じるわけで。だったらひとり行動について自虐する必要はないと気づきました。
みんなでワイワイすることと、ひとりで過ごすこと。どちらにも良さがあって、どちらの時間を多めに取りたいと感じるかは人それぞれ。一昔前の『ひとりを自虐する』風潮って、みんなでワイワイすることだけが“正解である”という考え方がベースにあった気がします。でも、あらゆる選択肢があって、その中でどう過ごすかを選べたほうがいいに決まってる。その選択肢のひとつが、ソロ活なのです 」

ひとりでする」と「誰かとする」。見える世界が違っておもしろい

「ひとりで行ったテーマパークは、みんなと行ったときとまったく違う見え方になるので、誰かと行くのとは違ったおもしろさがありました。誰かと行くときって、 会話に夢中で、たぶん周りを そこまで注意深くは見ていないんですよね。しかしひとりで行くと、ここにこんなオブジェがあって、細部までこだわって作られているなぁ、など今まで見えなかった景色が目に入ってきます。
食事もひとりで行くと、食べ物の味をかなり細かく、鮮明に覚えていて、誰かと行ったときは食べ物を通して会話をすることがメインな一方、ひとりで行くと食べ物そのものに向き合うのがメインになる、ということだと思います」
同じ場所でもひとりで行くのと人と行くのでは、感じることや見えることが違う。素材の味や景色、四季を味わいたいと感じたら、ぜひひとりで行ってみて。目の前のものとしっかり向き合えて、本質が見えてくるはず。普段気づかなかった魅力にも出会えそうだ。

朝井麻由美

ソロ活は「自分を知り、自主性を鍛えられる時間」

「ひとりで焼肉へ行ったときは、どの肉を注文しようかをひとりで真剣に考えるので、 自分はどの部位が好きで 、どれが苦手だとかをより深く知ることができました。 意外と自分は自分のことを知らないんですよね。自分の好き嫌いくらい知っているつもりでも、 意外と分かっていないもの。ソロ活って、目の前にあるものとしっかりと向き合う時間でもあるので、その結果、自分とも向き合うことができます。
また、自主的に選ぶ力や、決断力も身につくかもしれません。誰かと焼肉へ行くと、お店も食べ物も誰かが決めてくれたり、相談しながらなんとなく決まったりしますが、ひとりで行ったら何もかも決めるのは自分なのです」
サクサクと決断するのにも慣れることができるソロ活。いつものグループで、物事が決まらず停滞してしまったとき、ソロ活で磨いた自主性を発揮するとスムーズに事が運ぶかも?

知識が増えるから人との会話がはずみ、よい距離感が保てる

「ソロ活で、お店の新規開拓をしていった結果、気づいたらおすすめの飲食店リストがたまっていました。 こうした知識や経験の積み重ねは、ふとしたときの会話のネタになるかもしれません。
人って一緒にいる時間が長ければ長いほど、相手の嫌なところが目についたり、逆に自分の嫌な面を見せてしまったりします。人間関係がしんどいときって、たいてい相手との距離感を間違えているので、つねにグループに属していたい方でも、たまにはひとりで過ごす選択肢があると、いい距離感が保てるのではないかと思います」

ソロ活を楽しむためのアドバイス

いざソロ活をしようと思っても、何をしたらいいか分からないという人もいるかも。そこで、朝井さんが初めてのソロ活を楽しむためのアドバイスを教えてくれた。

・自分が「好きだな」と思うことをひとりでする
・「やってみたい」「見てみたい」と思うことをやる
・冒険心を持つ

「ソロ活の本質は、自分の“好き”を追求すること。これをしたい、と思うことがまずあって、誰かと一緒じゃなくてもやりたくて、結果的に気づいたらソロ活をしていた、という順番です。ひとりだとフットワークも軽く、思い立った時に動けるのもいい点。自分の中の『好き』を見つけるために、時には冒険心を持ってチャレンジしてみるのもおすすめです」
ソロ活は、ときに失敗することも。物理的に無理なことや知識がないと難しいこともある。キャンプや登山などをするときは怪我などしないよう、ある程度事前に調べることは大切。

ソロ活で、今よりもっと自分の人生が好きになる

「今までソロ活をしてきた中では、意外とひとりではできなくて知らないうちに周りに助けられていたと気づいたものもありました。例えば、知識やスキルが必要な、バーベキューなどのアウトドア系の遊びは、ひとりでやるとめちゃくちゃ大変で、周囲と力を合わせていたからこそできていたのだなぁと……。
そんなこともありますが、様々なソロ活を通して、 ひとりでできたら、“成功した!”と達成感が得られ、自分に自信もついた感覚もありました。『ひとりでも楽しい』という選択肢を自分の中に持てれば、周りに執着することもなくなり、毎日が居心地よく感じるはずです
仕事や人間関係に追われて、自分の好きなことに時間を使えている人も少ないのでは? 
ときには、家族や友人、パートナーから離れてひとり行動をしてみて。当たり前と思っていたことに、感謝や感動といった感情がグッと湧き出て温かい気持ちに。そして、自分と向き合うことで本当にやりたいこと、好きなことを知るきっかけにも。
ソロ活は、今より楽しい人生を送るための「生き方のヒント」を教えてくれる。人生や周りとの距離感に迷っている人こそ、ぜひ試してみてほしいおすすめの過ごし方だ。

朝井麻由美
■お話を伺ったのは......

朝井麻由美(あさい・まゆみ)さん
ライター・コラムニスト。著書『ソロ活女子のススメ』(大和書房)がテレビ東京でドラマ化。その他著書に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA)、『「ぼっち」の歩き方』(PHP)。趣味は食べ歩きとゲーム。『二軒目どうする?』(テレビ東京系)出演中。

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Credit: 大和書房刊
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Runa Komatsu
エディター

主にSNS周りを担当。オーガニック・ヘルシーフード・K-POPなどのリサーチ力が持ち味。オーガニックワイン、ヴィーガンフードなどのキーワードから、土壌を始めとする環境問題などにも興味を持ち、記事へとつなげている。 2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。