コロナ禍でオンライン化やテレワーク化が進んだことにより、それまでは対面で行われていたコミュニケーションも画面を通して、あるいは文字を使って行われる機会が多くなってきています。そういった状況が当たり前になってきた中で、『文字のコミュニケーションになったことで戸惑うことが多くなった』『相手に伝わっているのか不安』といった声が聞かれるようになりました。オンラインでのコミュニケーションにありがちな問題がなぜ起こるのか、その原因と対処法を臨床心理士の視点でお伝えします。

SNSやメールでのコミュニケーションで起こりがちな問題

social distancing during covid19 pandemic
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相手が何を考えているかがわからない

    心理学で【メラビアンの法則】というものがあります。これは、コミュニケーションにおいて、どんな情報が他人に影響を与えているのかについてまとめた概念です。この概念を生み出した心理学者、アルバート・メラビアンによると、コミュニケーションの中で影響を与える割合は、視覚情報(目から入ってくる情報)が55%、聴覚情報(耳から入ってくる情報)が38%、言語情報(言葉そのものから得られる情報)が7%なのだそう。なんと、言葉からの情報は1割程度しか影響がなく、コミュニケーションに与える影響のほとんどが非言語情報と呼ばれる、言葉以外の情報(表情やジェスチャーなど)によるものなのです。そのため、今までは理解できていたことが、メールなどの文字情報だけになった途端に成立しなくなり、『あれ?〇〇さん怒ってる?』『これってどういう意味なんだろう?』となってしまうということが起きてしまいます。

    自分の気持ちがちゃんと伝わりづらい

    上記のような理由から、相手はもちろんのこと、自分が発する言葉も伝わりづらくなっています。例えば、『もう良いです』という一言、いつもなら顔の表情や声のトーンなどの情報によって伝わっていることも、それらがなくなった途端に、どんなニュアンスなのかが分かりづらくなります。それによって思ってもいなかった方向に捉えられてしまうなど、自分の気持ちを相手に正しく受け取ってもらえないということが起きやすくなります。

    オンラインでもコミュニケーションをスムーズにする5つの方法

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    Petar Chernaev//Getty Images

    1. 一つの意味に取れる言葉を選ぶ

    文字で伝える時は、いつも以上に丁寧に、そして1つの意味に取れる言葉を選ぶことを心がけましょう。例えば、『もう良いです』という表現だと、怒って突き放しているのか、それとも納得していて大丈夫なのか、分かりづらいですよね。発信する前に、『この文章は1つの意味に伝わるか』を確認するようにしましょう。そして、言葉の数を増やす、違う表現に変えてみるなどの工夫が必要かもしれません。

    2.感情が伝わりやすい言葉を入れてみる

    『うれしいです』『残念です』など、自分の感情が伝わりやすい言葉を積極的に取り入れてみましょう。メールだと表情や声色が分からないので、そんなつもりがなくても『怒ってる?』『なんかまずいこと言ったかな?』など、余計な詮索をする機会が増えがち。そうならないためにも、いつも以上に気持ちが伝わりやすい言葉を選んで、文章の中に盛り込んでみましょう。


    3.シンプルな言い回しをする

    SNSやメールだと、ちゃんと伝えたいと思うがあまり、1つの文章が長くなってしまったり、いろんな言葉をくっつけてしまい、より分かりづらくなってしまいます。カウンセリング の中で有効とされるコミュニケーションスキル、【アサーション】は、メールなどの情報が限られたコミュニケーションの中でも有効です。【アイ・メッセージ(I message)】と呼ばれる、『私は〇〇だと思います』『△△だと私はうれしいです』など、『私は』を主語にして伝えるコミュニケーションは、主語を省く傾向がある日本人には抵抗感があるかもしれませんが、伝えたいことを端的に伝えることができますよ。


    4. 自分の伝えたい意図が伝わっているか確認する

    文字でのコミュニケーションが続いてしまう場合は、時折自分の伝えたいことが伝わっているか、相手に確認するのもオススメです。筆者もクライアントさんたちとメールでのやり取りが続いてしまう場合は、自分の思っていることが伝わっているかどうか時折確認し、『分かりづらければ遠慮なく教えて欲しい』といった旨のことを積極的に伝えるようにしています。そういった一言で、相手にも誠意が伝わりますし、相手もモヤモヤを感じずに済みます。


    5.電話やビデオ通話なども活用する


    誤解なく伝わって欲しい話の場合は、字でのコミュニケーションを避け、音声や表情が伝わりやすい音声電話やビデオ通話などを用いるなど、状況によって使い分けると良いでしょう。在宅ワークだと相手の都合などを考え、音声電話やビデオ通話は遠慮してしまいがちですが、誤解して伝わってしまう方が後々大変なことになってしまいますよね。『メールだと伝わりづらいかもしれないので』など、きちんと伝えたい旨を話せば、相手もわかってくれると思います。

    今後益々増えていく可能性のある、オンラインでのコミュニケーション。自分の気持ちが誤解なく伝わるためにも、オンライン向けのコミュニケーションを身につけ、スムーズなやりとりができると良いですね。

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    南 舞
    ライター

    臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。   公式HP: mai-minami.com Instagram: @maiminami831