多くの人が、「太らないようにするには、夜遅くの食事を控えた方がいい」というアドバイスを耳にしたことがあるはず。栄養学の世界でもこの見解は長年主流となっているが、先ごろ、遅い時間の食事が体にどれだけの影響を与えるかを示す新たな研究結果が発表された。

『Cell Metabolism』誌で発表されたこの研究は、太りすぎあるいは肥満症の16人を対象とした小規模なものだったが、参加者の食事の種類や運動量、睡眠時間、さらには室温や光の照射などの細かい要素までが指示され、十分に管理された環境で行われた。

この研究では、3週間にわたる厳格な就寝と起床のスケジュールのもと、各参加者に生活してもらい、決められた時間に食事が提供された。参加者は2つのグループのいずれかに無作為に振り分けられ、一方のグループは午前8時、正午、午後4時に食事をし、もう一方のグループはその4時間後となる正午、午後4時、午後8時に同じ食事をした。

研究者は6日間で18回、参加者の空腹感と食欲を測定したほか、体脂肪や体温、エネルギー消費量も測定。そして、参加者は数週間を置いたのちグループを入れ替え、4時間遅く食事をとった人は早く食べるグループに入り、4時間早く食事をとった人は遅く食べるグループに入った。

binge eater hiding doughnut in desk drawer
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その結果、4時間遅く食事をとると、空腹感を感じる人が2倍になることがわかったという。また、早い時間に食べたグループよりも、塩分、でんぷん、肉類を含む食品を多く欲していたとのこと。

論文の共著者で、ハーバード大学医学部の教育機関でもあるブリガム&ウィメンズ病院の研究者であるニーナ・ヴヨヴィッチ氏は、プレスリリースで「4時間遅く食事をとると、空腹のレベル、食後のカロリーの消費方法、脂肪のたくわえ方に大きな違いが出ることがわかりました」と述べている。

食事が遅くなりがちな人は、この研究結果に対し疑問に思うこともあるだろう。それについて、栄養士が以下で解説する。

遅い時間に食事をとると、より空腹を感じる理由は?

研究者たちは、この疑問に対して実際に答えを出している。血液検査によると、遅く食事をしたグループでは、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの値が上昇。いっぽう、満腹感を示し食欲を抑制するホルモンであるレプチンの値は、早く食事をしたグループよりも遅く食事をしたグループの方が低かった。これには著しい差があり、グレリンとレプチンの比率は、遅く食事をしたグループで34%も増加したという。

つまり、基本的には遅い時間に食事をすると、早い時間に食べたときのような満腹感が得られず、通常よりも空腹感を感じやすくなるということ。

『The Small Change Diet』の著者で栄養士でもあるケリー・ガンス氏は、この調査結果は「当然だ」と話す。ガンス氏は、「食べるのを待つ時間が長くなるほど、体が空腹を満たすのに時間がかかるように思えることがありますよね。これは、ほとんど将棋倒しのように考えることができます。やっと一口にありつけたら、その後止まらなくなってしまうのです」と語る。

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また、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの栄養士であるジュリー・パーマー氏によると、「夕食用にテイクアウトするレストランの食事や、ファストフード、家で食べるスナックやデザートなど、多くの高カロリー食品は遅い時間でも手に入れることができる」と話し、そこが厄介だという。

これらの食品は食べ過ぎに陥りやすく、さらに「私たちの心身は、長い1日の仕事の疲れを癒やすために自然と安らぎを求めるものですが、それは食べ物にも当てはまります」とパーマー氏は付け加える。

『Cell Metabolism』誌で発表された別の研究でも、1日の早い時間帯に食べる量を増やす(夜に食べる量を減らす)と、満足感が増すことが明らかになっている。

NYで食に関するカウンセリングなどを行う「Keatley Medical Nutrition Therapy」の共同経営者で、栄養士でもあるスコット・キートリー氏も、「1日の早い時間帯に食べていれば、より満足ができ、夜に食べる量が減る場合があります。しかし、カロリーのほとんどを1日の遅い時間帯に摂取する場合、それまでの食事に満足できないと感じ、過食になってしまう可能性があります」と語る。

重要なのはマインドフルネス

朝早くに食欲がわかない人や、仕事の都合で遅い時間に食事をとらなければならない人もいるだろう。そうした場合は、健康的な食事を準備しておくことが重要だとガンス氏は言う。彼女は「前もって計画を立てておけば、直前になって誤った選択をする可能性も低くなります」と語る。

キートリー氏も、「食事とおやつをマラソンのように食べ続けない」ことを勧めている。そうなってしまうと、食事のときに空腹感を感じ、食べ過ぎの可能性が高くなってしまうそう。

young woman having a midnight snack
RainStar//Getty Images

彼はさらに、「間食をするときは、タンパク質、脂質、食物繊維を一度に摂取するようにしましょう。そうすることで満足感を得ることができます」「おやつや食事に果物や野菜を加えることでも、お腹を満たし満足感を長続きさせることができます」と付け加える。

またパーマー氏は、できれば「最も活動的な時間帯に食事をとる」ことを勧めている。もしちゃんとした食事をとる時間がないときは、バランスのとれた“ミニ食事”を3〜4時間おきにとるよう勧めている。

ただキートリー氏は、夜遅くに食事をとることがあっても大丈夫だと強調する。とはいえ食事の内容に気を配り、できれば少し早めに食べるようにすると、より満足感を得ることができるそう。

遅い時間に食べてしまいがちな人は、少しずつでも気を付けるようにしてみて。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Masayo Fukaya From Prevention

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Korin Miller
Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more. She has a master’s degree from American University, lives by the beach, and hopes to own a teacup pig and taco truck one day.