ボディメイクやダイエットに励む人なら一度は聞いたことがあるPFC。タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字を取ってそう呼ばれるが、ダイエット意識の高い人はこのPFCの量から逆算して食事を組み立てていることもある。

「PFCはエネルギー産生栄養素なので、それぞれのカロリーがP=4kcal/g、F=9kcal/g、C=4kcal/gと決まっています。自分自身が一日で摂るべきエネルギーをこの3つにバランスよく割り振っていくことがPFCの整った食事と言われます」。そう語るのはパーソナルトレーナーの林健太さん。

しかしこのPFCはあくまでエネルギーを生み出す栄養素であり、その栄養を効率よく吸収したり、エネルギー化したりするためには微量栄養素と言われるビタミンやミネラルが必須。

おそらくここまでは多くの人がサプリメントなどを活用しながら気を付けているかもしれないが、林さんによると、ダイエットの効率を上げるためにも気にしてほしい第二のPFCがあるという。

「エネルギー産生栄養素のバランスばかりを気にしてしまい、本来の食の栄養を逃している人も多いのではないでしょうか。PFCさえ整っていればどんな食品でも口にしてしまうようなダイエットでは、将来的に大きなしっぺ返しがあるかもしれません」

今回は、林さんが気にしてほしいという、ダイエットにも重要な第二のPFCを教えてもらった。


①P=Phytochemical (フィトケミカル)

woman takes fresh organic vegetables
Maria Korneeva//Getty Images

フィトケミカルは野菜や果物の色や匂い、海藻の粘り気などの元となる植物由来の化学物質で、高い抗酸化力を持つものが多く、老化予防や免疫力アップなどその効果は様々。

脂肪燃焼効果で有名な、とうがらしなどに含まれる辛味成分カプサイシンもその仲間で、これらの成分はヒトの体内で合成することができない重要な栄養素。

「五大栄養素に加え、食物繊維が第六の栄養素と言われますが、フィトケミカルは第七の栄養素とも言われ非常に注目されています。ダイエット中の食事がサラダだけになることは危険ですが、サラダを食べる頻度が多くなるのは非常に好ましいことです」

特にコーヒーに含まれるクロロゲン酸や赤ワインに含まれるレスベラトロール、お茶のカテキンなどのポリフェノール類は抗酸化作用だけでなく脂肪燃焼効果も期待できる。

運動量が増えれば増えるほど老化の原因となる活性酸素の発生量も増えるため、ダイエットで美しさをキープするためにもフィトケミカルは必須栄養素と考えておきたい。

他にもキノコに含まれる食物繊維の一種であるβグルカンには免疫力をアップさせてくれる働き、玉ねぎの辛味成分でもあるアリシンには疲労回復効果もある。

ダイエット中にコンディションを整えることは成功への最短ルートを確保することにも繋がる。フィトケミカルをタンパク質と同等に重要なPとして意識してほしい。

②F=Food enzyme(食物酵素)

papaya
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酵素と聞くと生きているものと勘違いしてしまいそうだが、実際は特殊なタンパク質のことで、体内に存在する酵素は数千種類。

体内酵素は食物の消化作用をもつ消化酵素と免疫機能維持などに働く代謝酵素の二つに分けられ、様々な反応の触媒となるので活性が弱まると不調を招く。

「この二つの酵素は相互関係にあり、消化酵素を浪費する食事は代謝酵素の活性が弱くなります。その結果疲れやすくなったり免疫力が低下したりします。活力が湧かないと当然運動不足にも繋がるので、酵素を無駄遣いしないためにも普段から食べ過ぎには注意しましょう」

体内酵素が合成される量には限りがあり、年齢と共に減少するため外から食物酵素を補うことも大切。焼き魚に添えられた大根おろしや酢豚のパイナップルなどは消化酵素を無駄遣いしないための知恵。新鮮な野菜や果物、発酵食品に食物酵素が多く含まれているので、前項のフィトケミカルと同時に摂取するためにも植物性食品をしっかりと摂取しながらダイエットを進めていくことがポイント。

「ダイエットに便利な加工品についつい手が伸びてしまいがちですが、本当のダイエットにそういった食品は必要ありません。食物酵素をたっぷり摂ることで不調の改善も期待でき、ダイエット中でも疲れにくい体を作っていくことができます」

ナチュラルでフレッシュな「生きた食物」を選ぶようにするだけで、体内酵素の量が節約できる。健康的なダイエットを進めていくカギは体内酵素の節約にあると言っても過言ではない。

③C=Citric acid(クエン酸)

grapefruit and sugar
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柑橘類やお酢の酸味成分であるクエン酸は、体内でエネルギーを作り出すのに重要な栄養素。疲労回復効果からスポーツドリンクなどにも含まれるので、普段から運動習慣のある人は摂取したことがあるかもしれない。

「体内でエネルギーを作り出す仕組みはクエン酸回路と言われ、エネルギー産生栄養素である第一のPFC(タンパク質・脂質・炭水化物)を代謝する重要な経路です。食べたものがしっかりとエネルギーに変換されないとダイエットもスムーズに進まなくなります」

他にもクエン酸は発汗で失われやすいミネラルの吸収も促進してくれる。栄養が偏りやすいダイエット中はサプリメントに頼りがちだが、食事からの栄養をどれだけ効率よく吸収できるかも大切。

マグネシウムや亜鉛は体内の様々な反応に関わるミネラルなので、吸収率が上がるだけでもダイエットの効率は格段に上がると考えられる。

「クエン酸は糖エネルギーの分解で発生する乳酸生成を阻害することで、脂肪をエネルギーに変換しやすくします。その結果として疲労回復効果や筋肉痛軽減なども期待できますので、日々運動を取り入れてダイエットをしている人は、運動中にクエン酸入りドリンクを飲むようにしてみましょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/