「全ての病気を追及するとミネラル欠乏に辿り着く」
「ビタミンは重要だがミネラルなしでは何もできない」

これらの言葉はミネラルに関する非常に有名な言葉であり、それくらいミネラルは人体にとって基礎となる重要な栄養素。不足することで様々な不調をきたすことはもちろん、その不足には気付きにくいことが多い。

さらにミネラルは一種類だけでなく多種類で協同して働くため、バランスが重要な栄養素の代表とも言える。

「ビタミンなどの化合物とは異なり、元素であるミネラルは体内で作ることはできません。大地から多くのミネラルを吸収して育っていた野菜は、今では土壌の変化や流通の発達で数%しか残っていないこともあります」

1950年代、ほうれん草には100g当たり約13mgの鉄分が含まれていたが、現在では約2mgと損失率は80%以上にもなる。その他の野菜や果物に関しても今や過去の食材とは別物と言っていいほど栄養素の損失が確認されている。

「普段から野菜や果物を積極的に摂っているのになかなか不調が改善しない、ダイエットがうまく進まないなどといった症状は、もしかするとミネラル不足が原因かもしれません」

人体に重要であることから様々な異名を持つミネラルを、パーソナルトレーナーの林健太さんにピックアップしてもらい、その不足の改善方法などを聞いてみた。


① 最重要ミネラル「マグネシウム」

マグネシウムは体内にある酵素を活性化する働きがあり、その数は数百とも言われている。最も多くの酵素に関わるミネラルであるが故に、不足は様々な症状として現れてくる。

ダイエットがうまく進まない、生理痛が重いなど様々な改善策を講じているのになかなか改善が見られない症状ほど、一番にマグネシウム不足を疑うほうがいいかもしれない。

「神経系の伝達、カルシウムとの深い関係性から骨形成など、その働きは多岐に渡ります。また、カルシウムと共に筋肉の収縮にも関わるので、生理痛との関係も深いミネラルです」

カルシウムとマグネシウムの摂取比率はミネラルバランスを保つうえでも非常に重要で、一般的にはカルシウム:マグネシウム=2:1が理想とされている。しかし、カルシウムを意識するあまり現代人には不足しているマグネシウムとのバランスをとる上では1:1の比率くらいでも問題ないと林さん。

「日本は軟水の国でもあるため、マグネシウムの十分量の摂取は意識しないと難しいです。まずは主食の白米を玄米に変えることや、ナッツ類から良質な脂質と共にマグネシウムを摂取するように心がけてみてください」


② セックスミネラル「亜鉛」

男性の前立腺に多く存在することからセックスミネラルとの異名を持つ亜鉛だが、それ以外にも不足による味覚障害は有名。亜鉛は数百種類の酵素の構成成分であるため、マグネシウムと同じくらい不足を避けるべきミネラル。

「亜鉛は動物性食品のほうが多く含まれ、その吸収率も高いことが特徴です。特に植物性食品が多く、動物性食品の摂取量が少ない人は吸収阻害により不足しやすいミネラルですので、バランスの良い食事を心がけることが大切です」

ダイエットにより日頃から運動量が多く体調を崩しやすいという人は、免疫機能に大きな関わりのある亜鉛欠乏の疑いがあるかもしれない。

食事量を調整しつつも、亜鉛の摂取源として牡蠣や魚介類などの動物性食品もバランスよく摂取していこう。

③ 愛情ミネラル「マンガン」

前述のマグネシウムや亜鉛とは異なり、体内に含まれる量は微量なマンガン。ホルモン分泌量の調整に関与することから、愛情を注ぐ源になるとも考えられている。

「マンガンは動物性食品よりも植物性食品に多く含まれています。特に茶葉に多く含まれますが、習慣の変化によりその摂取量は相対的には減っていると考えられます。しかし、多くの植物性食品から摂取できるので不足することは考えにくく、バランスの良い食生活を心がけていれば問題ありません」

骨の形成にも関わるミネラルなので、丈夫な骨を作るためには乳製品や動物性食品に偏ることなく、植物性食品も十分に摂取するように心掛けて。


④ 血のミネラル「銅」

貧血で悩む女性の多くは鉄分を積極的に摂取するが、銅を意識して摂れている人は少ないのではないだろうか。

特にダイエット中や生理中はいつも以上に鉄分摂取には気を付けて生活している人が多いはず。

「鉄を効率よく利用するためには銅が必要不可欠です。バランスの良い食事を心がけている人なら不足は考えにくいですが、鉄など他のミネラルを意識的に多くとっている場合には、全体的なバランスを取るためにも銅の摂取も心がけておくことをおすすめします」

イカやタコ、エビやカニなどの魚介類に多く含まれるミネラルなので、一日一食は魚介類をメインにした食事を摂るようにしてみよう。


⑤ 若返りミネラル「セレン」

セレンは抗酸化酵素の構成成分の一つでもあるため、体を酸化から守ってくれるミネラルでもある。そのため、ダイエットにより運動量を増やしている人は積極的に摂っておくべき。

「セレンはタンパク質と結合することで酵素として働きます。運動量が増えると共に体は酸化が進むため、タンパク質やミネラルの必要量が増えていくということは覚えておきましょう」

セレンは抗酸化ビタミンの一種であるビタミンEとの相性が非常に良いので、全粒穀物やナッツは重要な補給源になる。また卵や鶏肉にも含まれるため、通常の食事で不足することは考えにくく、過剰摂取は糖尿病リスクが上昇するなど好ましくないとされている。

サプリメントなどで補うことは不要な上、特に妊娠中には過剰摂取を避けるべきミネラル。マルチミネラルなどを摂取する場合はセレン含有量が200μgを上限にして林さんは選んでいるそう。


⑥ 代謝のミネラル「クロム」

血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを助けるクロムは、必須ミネラルの中では最も微量で吸収率も低いので、過剰摂取を心配する必要はない。

その上多くの食材に含まれているため、通常の食事では不足の心配もないと林さん。

「クロムは亜鉛と協力して、血糖値を下げることができる唯一のホルモンであるインスリン分泌の調節をしていますので、ダイエットに励む人には重要なミネラルになります。“通常の食事”では不足の心配はないと言われているものの、コンビニ食やファストフードばかりで済ましている人は”通常の食事”とは言えないということは肝に銘じておきましょう」

多くのミネラルの摂取源として共通する食物は全粒穀物と魚介類。昔ながらの和食スタイルの食事を一日に一食以上食べられている人は、現代の日本に果たしてどの程度いるだろうか。

ミネラルは種類により必要量や過不足は様々だが、まずはバランスの良い食事を心がけ、特定のミネラルだけを突出してサプリメントなどで補い満足することは避けておきたい。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/