2012年、シンシア・ジャーマノッタとレディー・ガガは共同でチャリティ財団Born This Way Foundationを立ち上げた。

この財団は、若者がメンタルヘルスの問題に取り組みながら、いま以上に思いやりと勇気のある世界を作る方法を学ぶ過程を支援している。

毎年5月のメンタルヘルス意識向上月間に向けてシンシアはOprahMag.comに寄稿し、若者のメンタルヘルス疾患が火急の問題である理由と、この財団を運営する中で得た教訓を語った。詳しく見ていこう。

「毎年5月になると、私は学年度の終わり、それに伴う娘たちの喜び、不確実な未来に対する不安と期待、達成感を思い出す。子どもたちは新緑の春を節目として、人生の新しいステージに踏み出していく。目が回るほど忙しく、希望に満ちた時期。それが過去の記憶であることにホッとする日もあれば、異常に恋しいときもある。

いままさに、こうした経験や感情のさなかにあり、この時期特有のチャンスを捉える一方で障壁を乗り越えようとしている父親と母親は多いはず。でも、メンタルヘルスの問題を抱える子どもがいる家庭にとっては、そのプロセスが一層複雑になる。

メンタルヘルス疾患は大人になってからの問題と思うかもしれないけれど、実際は症状の半分が14歳までに、4分の3が24歳までに発現する。もっと言うと、米国に住む13~18歳のティーンエイジャーの5人に1人は、メンタルヘルス疾患を抱えている。これほど蔓延した問題であるにもかかわらず、症状の発現から治療までに平均10年かかるというから恐ろしい。メンタルヘルスの問題に悩んでいる若者の大半は、必要な助けを得ることなく、何年も悩み続けるということだ。

メンタルヘルス疾患を持つ子どもの親として生きるのは非常につらい。私もそうだったから、よく分かる。レディー・ガガの名前で知られる私の娘のステファニーは、10代の頃から不安やうつと闘ってきた。大人になってからは、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)の診断を受けたことやメンタルヘルス全般について包み隠さず話している。

ステファニーと私たち家族がこうした困難に立ち向かう中で、もっと早く知っていれば、と思うようなことをいくつも学んだ。そこで今回は、メンタルヘルス意識向上月間に敬意を表して、私が昔の自分に伝えたいアドバイスを皆さんにもシェアしたい」

聴き上手になる

「問題は自分で解決できる子に育ってほしいという想いから、子どもの相談にあえて乗らない親は多いと思う。でも、耳を傾けて子どもの気持ちを理解して認めてあげるのは大切なこと。シンプルなアクションとはいえ、耳を傾けるのは、あなたがその子を気にかけていること、その子の力になりたいと思っていること、その子を非難するつもりはないことを示すチャンス。この財団で若者たちと定期的に話していると、最後の部分が極めて重要であることを痛感する。

若者は大人と同じで、非難される可能性を感じたら口をつぐむし、助けも求めようとしない。だから聴き上手になって、まずは自分がさらけ出すことを意識して。自分が抱えるストレスや問題を子どもに打ち明けて、メンタルヘルスに関する問題の伝え方の手本を見せてあげるといい。そうすれば、子どもたちも、自分の親は似たような経験をしているから自分の気持ちが分かるはずだと思ってくれる。

自分を教育する

思春期の子どもが健全に発達しているときのサインと、メンタルヘルスに問題が出かかっているときのサインを知っておくことも大切。この重要性は身に染みて感じる。当時の私は、自分の娘が見せたらキャッチするべき警告サインを知らなかった。これは驚くことでも何でもないーーメンタルヘルス疾患の実態や、メンタルヘルス疾患を抱える子どもの支え方を親が学ぶ機会は少ないから。

幸い、この状況は変わりつつある。「メンタルヘルス・ファーストエイド」のようなプログラムは、子どもがメンタルヘルスに問題を抱えているときのサインを捉えて、家族を支えるために必要なスキルを実地訓練で教えてくれる。こうした実用的な知識は、何年も前、自分の娘が初めて症状を見せたときに知っていたかったもの。

“ツールキット”を作る

必要に応じて頼れるサービスの情報を子どもたちがまとめるときは、そのプロセスを手伝ってあげてほしい。私たちの最新の調査によって、若い人はメンタルヘルスのケアを優先させるし、そのために幅広いリソースを使うことにも抵抗がないけれど、そのリソースがある場所を意外と知らないことが分かった。この知識の溝を埋めるのは、私たち親が今日から取り組めるシンプルな課題。

まずは、あなたの地域(とネット上)に子どもがいつか使いたいと思うようなサービスがないか調べて、そのサービスに関する話をすることから始めよう。ストレスフルな“話し合い”で一気に片付けようとせず、必要なときに頼れる既存のオプションを子どもが理解するまで、継続的に対話の場を設けてあげて。

メンタルヘルスの問題に悩む人を支えるのは決して簡単なことじゃない。それが自分の子どもなら、なおのこと。でも、実用的な情報やサービスが増えてきたいま、この問題を私たちが一丸となって乗り越えるのは不可能なことじゃない。あなたの家族が迎え入れる次のステージが何であれ、あなたの周りに温かいコミュニティと必要なサポートがあることを切に願う。

※この記事は当初、『Oprah Daily』に掲載されました。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Cynthia Germanotta Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。