自分がPMSや生理痛などで辛い時に、パートナーや家族、会社に対して「この辛さは分かってもらえないから、我慢しよう」と、半ば諦めの感情を抱いたことはない? 今回は、生理時のパートナーや仕事の関わり方、生理と向き合いたくない人へに向けて、産婦人科医の高尾美穂先生がメッセージをくれた。ぜひ読んでみて。

(以下、「」内 高尾美穂先生)

 

パートナーとの関わり方で悩んでいる人に……

「自分がPMSや生理痛などで辛い時に、些細なことで喧嘩になったり、本当は言いたくないことを言ったりして、パートナーとの心の距離ができてしまうこともあるのではないでしょうか。女性が笑顔でいられない家庭やコミュニティは、全体の雰囲気も沈んだようになります。逆に、女性が笑顔で居られると、男性も活き活きします。だからこそ、パートナーが生理の仕組みや生理で起こる不調の理由を理解して、つらいときはサポートしてもらえるとよいですよね。そのためには、察してもらうことを期待するのではなく、『こうしてほしい』『こうしてもらえるとありがたい』と、してほしいことを具体的に伝えるのがよいと思います。生理の重さはひとそれぞれですから、男性に自分がしてほしいことを伝えていきましょう」

仕事との関わり方で悩んでいる人に……

「生理痛がひどいときに生理休暇を取ることは大事な権利なので、休んでいいと思います。ただし、働く人として自分の体調を安定させる努力をし、仕事を遂行するうえで妨げとなる要素を取り除いていくことは、社会人としての義務だとも言えますよね。日本の女性は、とくに頑張り屋さんなので、無理してでも業務を行うという人も多いと思います。つらいままにするのではなく、婦人科で相談して、生理痛なら痛み止めやピルを選択する、PMS(月経前症候群)なら漢方やピルを選ぶというように、自分で責任を持ってコンディション管理をしていくことが大切です。 自分のコンディションを整えようとして行動している人には、周りの人たちも支えてあげたいと思い、サポートしてくれるはずです。思いやり精神だけでも、すこし生理痛が緩和されるという人もいるのではないでしょうか。コンディション管理も仕事のうちと考えるようにすると、みんなが気持ちよく働いていけるように思います」

生理と向き合いたくない人へ……

①トランスジェンダーの人

「生理が来てほしくない」、「(生理のことを)『女の子の日』とは言いたくない」、「生理用品は買いにくいので、彼女に買っているフリをしている」……。FtM(女性から男性へ、Female to Male)の人は、生理がやってくると、自分のことを女性だと強く感じさせられて嫌という声も。

「生理がきてほしくない人もいますよね。でもすぐに性別適合手術ができるわけでもない。そう考えると、生理をなるべく来ないようにする方法は、プロゲスチン製剤、ミレーナ(子宮内に埋め込み、黄体ホルモンを放出するシステム)でも量は減らせたり、生理自体を来なくすることができたり。いろんな選択肢を提案できる時代になってきていますよ。いずれにしても、アイデアをもらうためには婦人科に相談する必要があります。もちろん、婦人科に行くことは抵抗があるかもしれませんが、自分の希望に近づく方法かもよっていうことは伝えたいです」

②つらすぎて向き合いたくない人に

「生理がつらすぎて、向き合いたくない人もいますよね。その人も、一度婦人科に行ってみてほしい。軽減する対策の提案はいくつかできます。先ほどの仕事との関わり方でも話しましたが、つらいままにするのではなく、婦人科で相談して、生理痛なら痛み止めやピルを選択する、PMS(月経前症候群)なら漢方やピルを選ぶ。我慢するのが当たり前ではなく、ケアしてより心地よい毎日でいられる調整をしていきましょう」

「生理」に関して、自分も周りの人もそれぞれが知識を持ち、お互いを知る必要があるのかも。これからもウィメンズへルスは、生理に向き合う多様な人たちの声のもと、性について考えていきたい。

illustration: Midori Komatsu

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高尾 美穂
産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター

女性のための統合ヘルスクリニック、イーク表参道副院長。文部科学省・国立スポーツ科学センターの女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。一般社団法人アスリートヨガ事務局理事、ドームのアドバイザーリードクターも務める。内科・婦人科・乳腺などを中心にクリニックでは診察を担当し、女性の健康をサポート。マターナル(周産期)ヨガを始め、ヨガセッションも積極的に行っている。また、プロアスリートのメディカル・メンタルサポート、女性アスリートに向けた、医学的知識の提供などにも積極的に参加。webサイト http://www.mihotakao.jp/ イーク表参道 http://www.ihc.or.jp/

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。