「オーツミルクラテほど喜びをくれるものは少ない。朝に飲めば平凡な1日を温かい気持ちで迎えられるし、午後に飲めば疲れた頭がスッキリする。とにかく私が毎日のTo-Doリストをこなせているのは、カフェインのおかげに違いない。そうかたくなに信じてきたけれど、1日2回コーヒーを飲んだところで一時的に活力が増すだけという悲しい現実に気づき始めた」と話すのはライフスタイルジャーナリストのローレン・クラーク。今回は、そんな彼女が、普段のコーヒーをアダプトゲン入りのものに変えた結果をリポート。詳細をアメリカ版ウィメンズヘルスから見ていこう。

カフェインの“摂りすぎ”とは?

これまでの研究により、カフェインは不安発作やパニック発作の確率を高めることが分かっている。私も不安は感じやすいほう。英国民医療サービス(NHS)によると、1日600mg以上のカフェインは「不眠、動揺、動悸、下痢、落ち着きのなさ」を引き起こすことがある。

1ショットのエスプレッソには64mgのカフェインが含まれている。私はいつもダブルショット(エスプレッソの量が2倍)のオーツミルクラテを頼むので、1杯で128mg、1日に2杯飲むので256mgのカフェインを摂取していることになる。カフェインに対する体の反応やカフェインを代謝する速さが人によって大きく違うことを考えると、スルーできない量に思える。

カフェインは世界でもっとも普及している天然の精神活性剤。この成分が脳や寿命、運動パフォーマンスによい影響を与えることは実体験から知っている。「カフェインは午後3時まで」のルールにも従ってきたけれど、このままでいいのだろうか。そんなことを考えていたときにタイミングよく現れたのが“ファンクショナル(機能を向上させる)コーヒー”という新種のコーヒー。

ファンクショナルコーヒーとは?

ファンクショナルコーヒーはアダプトゲン(詳細は後ほど)入りのコーヒーで、場合によってはプロバイオティクスやCBDなどの成分を含んでいることもある。最近は、カフェインを摂取してから数時間後に生じる「カフェインクラッシュ(急激な活力の低下)を防いで集中力を高め、心を落ち着かせる」といううたい文句で、さまざまなメーカーがファンクショナルコーヒーの生産・販売に乗り出している。

自身のポッドキャスト『Archetypes』でパンデミック中にコーヒーをやめたことを明かしたメーガン・マークルも、2020年までは『Clevr Blends』のラテ(アダプトゲン、キノコ、プロバイオティクス配合)を推していた。

イギリスでは『London Nootropics』(アダプトゲン配合)と『Dirtea』(キノコエキス配合)がファンクショナルコーヒー市場を牽引中。そして、このコーヒーのグローバル市場規模は、2022年から2027年までの5年間で23億5千万ドルに達する見込み。

でも、ファンクショナルコーヒーで本当に生産性は上がるのだろうか。それとも、ファンクショナルコーヒーは、いい加減な口約束で買わせようとするウェルネス商品の1つにすぎないのか。それを実証するために普通のコーヒーをファンクショナルコーヒーに変えてみたら、私の生産性やメンタルヘルスに思いもよらない変化が起きた。

ファンクショナルコーヒーの作用とは?

まず、ファンクショナルコーヒーのエネルギーは、血中にゆっくり放出されるという主張の真偽から見ていこう。普通のコーヒーは中枢神経刺激剤(興奮剤)として働き、アデノシンという神経伝達物質の受容体を阻害して、活力を調節する神経伝達物質の量を増やすことで一時的に疲労感を和らげる。これには通常カフェインクラッシュが伴うけれど、ファンクショナルコーヒーのメーカー各社は、このクラッシュがアダプトゲンという成分を使うことで防げると主張する。

栄養コンサルタント会社『Dietitian Fit & Co』の創業者で公認管理栄養士のカリーヌ・パテルによると、一部のハーブやキノコには、コルチゾールに代表されるストレスホルモンの量を調節したり、ドーパミン合成に関連する神経伝達物質、ノルアドレナリンやセロトニンの分泌に良い影響を与えたりといった特異な作用があると言われている。

このようなハーブやキノコを「コーヒーに入れると、カフェインの代謝に必要な酵素の働きが阻害され、カフェインによる“ストレス”が生じないと言われています」。いい話に聞こえるけれど、この主張を裏付ける研究結果はあるのだろうか。

ファンクショナルコーヒーの主張を裏付ける研究結果は?

非常に少ない。公認管理栄養士のジョー・カニンガムによると、普通のコーヒー、アダプトゲン入りのコーヒー、プラシーボ(気休め)の飲み物の作用を比較した2020年の研究では、「普通のコーヒーを飲んだ人にアダプトゲン入りのコーヒーを飲んだ人より急激な拡張期血圧の上昇が見られました。どちらの上昇度合いも健全な範囲内でしたが」

また、この研究では、どちらのコーヒーにも認知と気分の改善作用が見られたけれど、普通のコーヒーの効果は薄れるのが速かった。一方「アダプトゲン入りのコーヒーの効果は、じわじわですが108分以上続きました」。ただし、この研究はファンクショナルコーヒーを販売する企業の出資を受けており、この研究論文の著者の1人は同企業に直接雇用されていた(その企業と利害関係にあった)。

既存の研究結果が信用ならない理由は他にもある。「この分野の研究のほとんどは規模が非常に小さく、動物や試験管を使って行われています」とパテル。よって、もっと研究が進まない限り、ファンクショナルコーヒーに効果があるとは言い切れない。


普通のコーヒーをファンクショナルコーヒーに替えた結果

確固たる証拠はないけれど気になるものは気になるということで、私は1カ月間、普通のコーヒーの代わりに『London Nootropics』のファンクショナルコーヒーを飲んでみることにした。

このメーカーのコーヒーボックスには、魅力的な名前の3種類のファンクショナルコーヒーが入っている。価格は1杯あたり1ポンド(約160円)。FLOW(ヤマブシタケ&イワベンケイ)は「頭をスッキリさせて、モチベーションや集中力を高めたいとき」にいいらしいので、やるべきことを先延ばしにしがちな朝に飲むことにした。

午後は、免疫力を高めるというMOJO(冬虫夏草&シベリアにんじん)と心を落ち着かせるというZEN(CBD&アシュワガンダ)を日替わりで。水とオーツミルクで溶かして飲むと、どれも普通のコーヒーと変わらない味がした。

結論から言うと生産性は急上昇。飲むと一気に頭が冴える感覚はないけれど、ファンクショナルコーヒーに替えてからは、いつものカフェインクラッシュがやってこない。

活力レベルが安定した

おかげで私の活力レベルは1日中安定した。もちろん、夜に向けて徐々に下降はしたけれど、午後のスランプに陥って集中力とモチベーションが下がることは一度もなかった。単なるプラシーボ効果なのかもしれないけれど、私の日常に変化が起きたのは間違いない。

夜の過ごし方が変わった

以前は夜が来るまでに気力と体力が完全に底をついていた(いま考えると、これは日中のカフェインクラッシュの余波だったのかもしれない)。でも、ファンクショナルコーヒーを飲み始めてからは夜も元気で、ちゃんとした夜ご飯を作ったりセルフケアをしたりして過ごせるように。

私のセルフケアはヨガ、入浴、ネットフリックスの3つから成るけれど、『Dirtea』のキノコ&カカオのスーパーブレンド(鎮静作用のあるノンカフェインのホットチョコレートみたいなもの)を飲みながら観るネットフリックスは格別だった。深夜に不安を感じることも大幅に減り、ものすごくリラックスした状態で眠りにつけるようになった。

カフェインの摂取量は、いずれにせよ減らすべき?

だからといって、あなたも普通のコーヒーからファンクショナルコーヒーに替えなさいというつもりはない。「普通のコーヒーでも1日4杯までなら健康上危険というエビデンスは少ないですし、むしろ健康によいことを示すエビデンスが増えています」とカニンガムも言っている。

「インスタントではない挽き立てのコーヒーであれば、意識が一層はっきりするだけでなく、数ある生物活性化合物に加えて、ポリフェノールという植物性化学物質も摂取できます。ポリフェノールは、抗酸化作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用があることで知られています」

でも、少ないほうがいいに越したことはない。「カフェインの摂取量を減らせば、不安が減ったり、よく眠れるようになったりと、いいことがたくさんあります」とパテル。「それで腸が元気になって栄養が体に吸収されやすくなったり、血圧が下がったり、頭痛が減ったりすることも考えられます。カフェインは一時的なエネルギーになりますが、その効果が薄れると疲労感をもたらしますし、ご存じの通り歯を茶色くします」

結論

ファンクショナルコーヒーに関する研究はまだ初期段階にあるけれど、カニンガムとペタルによれば、いまの時点で試してみても問題ない。ただし、医療用のキノコの多くはハーブ系の薬と相性が悪いので、薬を飲んでいる人や化学療法を受けている人は事前に医師や薬剤師に相談を。

私は個人的にファンクショナルコーヒーが気に入ったので、あなたにもぜひチェックしてほしい。

※日本ではまだ一般的ではないけれど、iHerbで入手可能。

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※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Lauren Clark Translation: Ai Igamoto