〝フィトテラピー〟とは、日本語で〝植物療法〟。自然の植物の力で体や心の不調を整えようというもの。フィトテラピーに関心を寄せ、日々の暮らしに取り入れている俳優・戸田恵梨香さんと、その第一人者である植物療法士・森田敦子さんに、その奥深い世界の魅力について伺った。簡単に取り入れられるおすすめの方法もご紹介。

家族のために自然治癒を学びたい

戸田恵梨香
トップス¥56,100、スカート¥97,900/ダウェイ(メゾン・ディセット tel. 03-3470-2100) ブレスレット¥67,100(参考価格)/ラッツェル アンド ウォルフ(ザ・ウォール ショールーム tel. 03-5774-4001) インナー、ピアス/スタイリスト私物

森田さんの本をきっかけにフィトテラピーを学び始めた戸田さんにとって、森田さんは「憧れの人」。森田さんの顔を見た途端、笑顔が弾けた。

戸田恵梨香(以下 戸田):森田さんとお会いできると聞いてから、この日を心待ちにしていました。

森田敦子(以下 森田):ありがとうございます。恵梨香さんがフィトテラピーを熱心に勉強してくださっていると伺って、とても嬉しいです。

戸田体に不調を感じて西洋医学のクリニックで検査してもらい、食事とサプリメント療法をやってきたんですが、それでは追いつかない〝何か〟が私の中であったんです。いつかはサプリメントから離れたいですし、家族のために自然治癒について学びたいと思い、フィトテラピーを学ぶようになりました。勉強して、人も自然の一部で、そのサイクルになるべく逆らわない、規則正しい生活がいかに大事なのか知ることができました。眠くなったらブルーライトを浴びないとか。

森田夜のブルーライトは、成長ホルモンの分泌を妨げますから、その状態でどれだけフィトテラピーを頑張っても、体や心の調子はよくなりません。なので、学校の生徒さんには「夜、携帯見るような生活をするんだったら、授業料をお返しますから来なくていいですよ」って言っちゃうの(笑)。

戸田(笑)。実は気づいていないだけで、すでに私たちの生活の中に、フィトテラピーは存在していたんだという気づきもありました。食事も、フィトテラピーそのものですよね。

森田その通りです。薬の原点は植物。日々、私たちが口にする身近な食材にも、自然治癒力を高め、不調を改善してくれるものがたくさんあります。

寒さが増す今、おすすめの〝飲む〟フィトテラピー

フィトテラピーの実践法として、最も簡単で体内に直接成分を取り込めるのが〝飲む〟こと。深く知らない人でも手軽に作れる、フィトテラピードリンクを教わった。

森田吉野葛をスプーン2杯くらいに、熱いお湯をかけ、擦った生の生姜を加えると、体がとても温まる葛湯ができます。甘みが欲しい方は、黒砂糖か甜菜糖を入れてもいいですね。熱が出た時に、熱を出し切るという、熱を抑える解熱剤とは真逆の考え方です。

戸田:聞いているだけで、体がぽかぽかしてきます。

森田冷えには、番茶に梅干しを潰して落とした梅醤番茶がおすすめ。番茶のいいのところは、ノンカフェインでお手頃なところです。梅干しは、できれば2年ものを。梅に含まれる成分が何十倍も増します。梅醤番茶は、神経を酷使した日にもいいですよ。神経を使った時は血流が滞り、体内の酵素が働かず、食べても食べても痩せていってしまいますので、梅醤番茶をすすってほしいですね。

戸田私がまさにその状態の時期がありました。

森田:梅醤番茶は胃酸を抑え、胃腸を整えてくれるので、3日くらい飲み続けると、いい状態に戻ると思いますよ。

戸田さんのコンディションに合わせ、森田さんがハーブをブレンド

戸田恵梨香

よく知られているフィトテラピーが、ハーブティー。事前に戸田さんが感じている不調を森田さんに伝えたところ、戸田さんのためにブレンドしたハーブティーを淹れてくれた。

森田恵梨香さんから、「緊張と痛み」というキーワードをもらい、緊張によって神経を使ってしまい、頭痛なのか肩こりや腰痛なのか、体にも痛みが出ているのかなと想像してブレンドしました。

戸田ありがとうございます。(一口飲み)ジンジャーやシナモン、芍薬が入っていますか?

森田そう、さすがですね。あとは、ダンデライオン、ヴァンルージュ、カリフォルニアポピーの3種類を入れました。戸田さんはとてもスリムなので、もしかしたら上手く食べ物を摂り込めていないのではないかと思い、肝臓の働きを整えるダンデライオンを選びました。血管には細かい穴が開いていて、酵素と栄養素を摂り込んでいるんですけど、そのスピードを高め、血管壁を強くするのがヴァンルージュです。カリフォルニアポピーには、不安や緊張を鎮める働きがあります。ちょっと飲みにくいかもしれません。

戸田とてもおいしいです。知識を持たずにブレンドしてしまうとブレンドすると、おっしゃるように飲みにくくなると思うんですけど、プロの技を感じました。私は、2、3種類のブレンドはしているんですが、まだまだここまでは……。もっと勉強しないと。

森田効能ばかりでもつまらないので、美容寄りのブレンドもしてきたんですよ。名付けて〝恵梨香ブレンド〟。赤色は、ローズヒップやハイビスカスです。色があるだけで、おいしそうに見えますよね。ビタミンCも摂れて美肌にもいいんです。菊花も肌にいいですし、胃腸の働きをよくするレモングラスもブレンドしました。いかがですか?

戸田とてもおいしくて、どんどん飲めますね。2種類もブレンドしてくださってありがとうございました。

精油を揃えたクスリ箱で自分や家族をケア

森田敦子

フィトテラピーには、〝食べる〟〝飲む〟以外にも、マッサージに精油を使ったり、アロマポットで焚いたりと〝香る〟方法もある。

森田精油の香りが鼻から入ると、鼻の奥にある嗅細胞が細かい分子をキャッチして、電気信号として脳へ伝達されます。そして、脳の視床下部に伝わり、リラックス作用などが起こります。

戸田以前は、マッサージに行って精油を嗅ぎ、その時に気に入ったものを選ぶ程度のことしかしておらず、アロマオイルの力をあまり信じていなくて。でも、セラピストをしている友人のお母さんの話を聞いたり、森田さんの本を読んだりしたことで、その奥深い世界を知れました。

森田精油の使い方には〝塗る〟もあります。皮膚から成分が浸透し、血液まで入って効果を発揮します。たとえば、腰が張ったときはヘリクリサムの精油、風邪を引いたらエキナセアのタンチュメールなど、いろんなハーブを揃えたフィトテラピーのクスリ箱をひとつ持っておくと、自分にも家族にもケアしてあげられます。

戸田これまで自分を労わってこなかったので、自分自身を癒す方法をしっかり理解して知りたい、そして家族もケアしてあげたいというのが、私がフィトテラピーを学ぶ一番の目的なんです。

森田日本女性は頑張り過ぎてしまいがちですからね。働きすぎると、まず肌の炎症が起こって髪の毛が抜けるなどの症状が現れます。次に、神経への異常が現れ、自分の内側のエネルギーを奪い取られてしまい、粘液(潤い)不足によって免疫力が低下し、オーガズムなどの快感も得にくくなってしまうんです。そうした不調を改善するために、植物の力で神経を緩めてあげるのがフィトテラピーなんですが、食欲、睡眠欲、性欲のどれかひとつでも無視すると体のバランスが取れなくなり、フィトテラピーだけでは対処できなくなってしまいます。ですから、フィトテラピーとあわせて、セクソロジー(性科学)も勉強してほしいんです。

戸田セクソロジーに関する森田さんの本も読ませていただきました。セクソロジーについては知っている人がまだまだ少ないですが、女性特有の悩みを話せる場所があれば、多くの女性が救われます。私が伝えられることは伝えていきたくて、最近はインタビューで「とにかくご自愛ください」とよく話すんです。生理痛が辛かったら休みましょうって。

森田恵梨香さんが伝えてくれるのは心強いですし、ありがたいです。

自分で育てたハーブで料理を作るのが夢

主演を務めた映画『母性』で、娘を愛せない母・ルミ子を演じた戸田さん。ルミ子は、〝美しい〟家庭を求め、庭やベランダで花やハーブを摘んで、完璧な料理を食卓に並べる。

森田土に触れ、植物を〝育てる〟のも、自然を直に感じることができて、心が整っていきます。

戸田自分で育てた果実やハーブを積んで、自分で料理を作るのは夢ですね。今、「お庭のあるお家に引っ越したいね」と話していて、梅、レモン、柚子の木とか、何を植えるか考えている最中なんです。

森田私の実家のある愛知県東三河は、レモンが有名なんですよ。我が家には、ハーブの苗もたくさんあるので、お引越しした際は贈らせてください。

戸田嬉しい! ありがとうございます。実は、『母性』で共演した永野芽郁ちゃんにも「森田敦子さんという方がいてね、自分でケアできる方法があってね」ってフィトテラピーについて熱く語ったんですよ。私の勢いに、芽郁ちゃんはびっくりしてました(笑)。

森田そこでも伝えてくださったんですね。『母性』というのは、どういった映画なんですか。

戸田私は自分が「美しい、正しい」と思うものを、芽郁ちゃん演じる娘の清佳に押し付ける母親のルミ子を演じました。ルミ子は、子どもを産んでも、自分自身が子供であり続けたい人です。対する娘は、母に愛されたくて、苦境で母の味方となり助けようとするんですが、そんな娘を母は「邪魔だ」と罵ってしまう。そんな母と娘を描いた作品で、これから親になる世代には、母性とは一体何なのか、考えるきかっけになる映画です。

森田母性について考える映画とは素敵。観に行きます。

戸田是非! 今日は森田さんとの対談というご褒美をいただき、本当にありがとうございました。

森田こちらこそ、ありがとうございました。

戸田恵梨香(とだ・えりか)さん

1988年8月17日生まれ、兵庫県出身。NHK連続テレビ小説「スカーレット」やドラマ「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズで主演を務めるなど、映画、ドラマ、CMと幅広く活躍。映画『母性』は、2022年11月23日(水・祝)全国ロードショー。

森田敦子さん(もりた・あつこ)さん

植物療法士。日本におけるフィトテラピーの第一人者。ライフケアブランド「ワフィト」やフェムテックメディア「ウームラボ」を立ちあげ、出産や介護の現場での社会活動を続ける。「ルボア フィトテラピースクール」の代表として、多くの植物療法士を輩出し、フィトテラピーの魅力をさらに世の中へ広める活動をしている。

Photo: Takeshi Takagi/Signo Stylist: Erina Ohama(Erika Toda) Hair&Make: Rika Matsui/A.K.A.(Erika Toda),Tomoko Okada/TRON(Atuko Morita) Text: Sakiko Koizumi

Headshot of Nana Fukasawa
Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。