犬好きのママに朗報! 犬を飼うことが子どものウェルビーイングにポジティブに働くことが分かってきた。犬は子どものストレスレベルを下げる助けをしたり、社会的情緒の発達を促すことが今、研究で明らかになってきている。


犬は子どものストレスレベルを下げる

2022年6月に発表された子どもと犬の強力な結びつきに焦点を当てたイギリスの研究によると、週2回の犬とのセラピーセッションが、子どもたちのコルチゾール(体内のストレスホルモン)レベルを著しく低下させることが分かった。学術雑誌『PLOS ONE』に掲載された同研究によると、この介入はガイド付き瞑想よりも効果的であったという。

研究は対象者をランダムにグループに分けて検証するランダム化比較試験で行われ、神経質と非神経質の8〜9歳のイギリスの子どもたち149人が参加し、3グループに分類された。

あるグループでは、子どもたちは週2回、1カ月にわたって20分間、トレーニングされた犬とそのハンドラー(犬をあつかう研修を受けた臨床経験のある看護師)と接した。セッションの中で行ったことは至ってシンプル。犬をなでたり、遊んだりするといったこと。

また別のグループでは、同じ期間、犬とは触れ合わずに、子どもたちは手足の指を動かすなど簡単なリラックスできる運動とヨガマットの上に横になってガイド付きの瞑想に参加した。

3つ目のグループは、研究中の新しい治療を受けない対照群として使用された。

試験の前後には、研究に参加したすべての子どもたちから唾液を採取してコルチゾール値を測定。その結果、犬による介入群の子どもたちは、リラックス群と対照群の子どもたちに比べて、コルチゾールレベルが低いことが明らかになった。


犬とのセラピーの新たな可能性

dog sitting on a person holding him
Anne Bentz / EyeEm//Getty Images

こうした動物の力を借りたセラピーは、ペットセラピーまたはアニマルセラピーと呼ばれ、人の心身の健康のサポートや、問題に対処することを助けるため、医療や福祉、教育現場などで、これまでも取り入れられてきた。

今回の研究は、病気の有無に関わらず子どもたちのストレスに対して、犬がどのような役割を果たしうるかということを検討する新しい機会を与えてくれたと言えるのではないだろうか。

けれど、今回明らかになっていないこともあるため、より研究を進める必要もある。

例えば、子どもたちがどれくらいの頻度で犬介在療法セッションを受けるべきか、また、セッションはどれくらいの期間続けるべきか、など。

その他にも、セッション中に犬に触れることが子どもにとってどれほど重要なのか、それとも単に犬と一緒にいるだけで十分なのか、さらにグループセラピーと個人セラピーのどちらが良いのかについても大きな疑問が残っている。


飼い犬からペットセラピー効果を期待するときの注意点

a little girl and her dog
EllenMoran//Getty Images

また、今回の研究ではセラピー犬にキスしたり、ハグをしたり、詰め寄ったりしないよう、セッション前に子どもたちに注意を促し、常に注意深く監視していたという。また、犬がセッション中に鼻をなめたり、体や頭を動かしたり、あくびを繰り返したりと、不機嫌そうにしていないかどうかを確認し、犬が疲れていたり、もう参加したくないようであれば、セッションを終了せている。

つまり、犬を不快にさせるような子どもたちの行動が制御されていること、また犬がベストなコンディションであることで、セラピーの効果が高まるということではないだろうか。

なので、もし飼い犬にセラピー効果を期待するのであれば、犬に不快な思いをさせないことを覚えておこう。

セラピー犬であっても、飼い犬であっても、全ての環境において、子どもたちには犬との接し方を知っておかなければならないと言えそうだ。

ストレスレベルを下げるだけじゃない? 
犬は子どもの社会的情緒の発達を改善

little girl sitting on armchair at home cuddling with her dog
Westend61//Getty Images

また、犬を飼うことはストレスレベルを下げるだけでなく、子どもの教育にもプラスになるかもしれない。

学術誌『Pediatric Research』に発表された研究によって、犬を飼っている家庭の子どもは、犬を飼っていない家庭の子どもに比べて、社会的情緒の発達が良好であることが示唆されている。

同研究では、西オーストラリア大学とTelethon Kids Institute 研究チームが、2歳から5歳の子どもを含む1,646世帯のアンケートデータを利用。

その結果、子どもの年齢、生物学的性別、睡眠習慣、スクリーンタイム、両親の教育レベルなどを考慮した上で、犬を飼っている家庭の子どもは、犬を飼っていない子どもに比べて、感情や社会的相互作用に全体的に困難を抱える確率が23%低いことが分かった。また、犬を飼っている家庭の子どもは、反社会的な行動をとることが30%少ない他、友達との交流に問題があることが40%少なく、思いやりのある行動をとることが34%多いことも分かっている。

犬を飼うことは、子どものウェルビーイングにポジティブに関与する可能性は大きいと言えるのではないだろうか。

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桑子 麻衣子
ライター

1986年横浜生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少期よりクラシックバレエの練習に励みバレリーナになることを目指していたが、思春期に恋愛に走ってしまう。ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーの経験を活かし、現在は国内外のウェルネスやフィットネスなど健康周りの情報を中心に発信するライターとして活動。根っからの健康オタク。
Instagram: @mic_kwk