胸のセルフチェックは乳がんの早期発見・早期治療に欠かせない。年に1度の定期検診に頼ることなく、日頃から自分の体を知っておくのはヘルスケアの基本と言える。

胸のセルフチェックはジェンダーを問わず大切なこと。乳がんは女性だけの問題と思われているけれど、「男性も胸部の健康状態はチェックしておくべきですね」と話すのは、米ボストン・メディカルセンターの産婦人科医、メリッサ・ウォン医学博士。「トランスジェンダーの男性や男性乳がんの家族歴がある人は、特に気を配りましょう」

ここからは、セルフチェックが大事な理由、セルフチェックの方法と頻度について見ていこう。

セルフチェックをするべき理由

「自分の胸を熟知しておかないと、小さな変化を捉えることができません」と話すのは、女性の健康を専門とするジェニファー・ワイダー医学博士。「そのためには定期的なセルフチェックが何よりも有効です」

米ベイラー大学メディカルセンターの産婦人科医、ジェシカ・シェパード医学博士によると、加齢に伴う女性ホルモンの変化によって、胸部の組織や構成は変化する。年を取ると「胸の弾力やハリがなくなり、垂れ下がった感じになります」。これは、老化の過程で、脂肪組織が密度の高い胸部組織(結合組織など)に取って代わるから。

若い女性の乳がん患者サポート団体『Young Survival Coalition』によると、マンモグラフィ検査が若い女性にとってベストな診断ツールとは限らない。また、胸部組織の密度が高いと触診でしこりが見つけられないこともあるため、20歳以上の女性は自分の胸を把握して、どんな変化も自分で捉えられるようになっておくことが大切。実際、アメリカでは45~50歳にならないと、年に1度のマンモグラフィ検査に呼ばれない。

自分の胸を熟知して、何らかの変化があれば必ず医師に相談を。「自分の体を知っておけば、そのぶん自分の健康を自分で守れますからね」とウォン医師。

セルフチェックの方法

「胸のセルフチェックでは、見た目、手触り、感覚の変化を調べます」とシェパード医師。「胸部組織を自分の手でくまなく触り、“ここだけ違う”という部分を探しましょう」

「まず、鏡で自分の胸を見て、いつもとは違う点(乳頭の陥没、乳首からのオリモノ、皮膚や見た目の変化など)を書き留めます」とワイダー医師。「浴室でもいいですし、ベッドで横になりながらでもいいですよ」

次に人差し指、中指、薬指の腹で胸を触る。乳首と乳輪から脇の下まで、指で円を描きながらチェックしていく。

「片方の手で反対の胸を触るのも大事です」とシェパード医師。「しっかりと触れるように、3本の指を揃えて、指の腹を平らにしましょう。指で円を描きながら、胸全体を上下左右に触ります」。指を動かす方向は、鎖骨から腹部の上部、脇の下から胸の谷間と覚えておこう。

セルフチェックで探すもの

その前に“何が普通か”を知っておく必要がある。月経周期の関係で、胸にしこりや変化が現れるのは珍しいことじゃない。だから、しこりや変化に気付いても焦らなくて大丈夫。胸の感触は場所によっても少し違う。例えば、乳房下部に沿って硬い隆線があるのはノーマル。また、胸の見た目と手触りは年と共に変化する。

でも、ウォン医師によると、新しいしこりができたり、胸が突然大きくなったり、一部の組織が硬くなったり、出血、痛み、乳首からのオリモノが見られたりしたときは、病院で正式な検査を受けるべき。

セルフチェックの頻度とタイミング

「まずは月に1回を習慣にして、通常の胸部組織の手触りを覚えましょう」とシェパード医師。

ワイダー医師によると、生理後の1週間はセルフチェックに最適なタイミング。胸部組織の状態は1カ月を通して変わるけれど、生理後1週間で行ったセルフチェックの結果はもっとも信頼性が高い。

セルフチェック以外の乳がん予防

シェパード医師によると、脇の下に硬いしこり(結節)がある場合、皮膚が厚くなったり、えくぼのようにくぼんだり、赤くなったり、熱を持ったりしている場合、痛みや乳首からのオリモノがある場合は、念のため病院へ。

セルフチェックは自分の体の理解に繋がる。でも、ウォン医師によると、40歳までは1~3年に1度、それ以降は年に1度のペースで病院の乳がん検診を受けるべき。「乳がんの病歴や家族歴がある人には、胸部の画像検査も必要になるかもしれません」

「若い人たちが胸のためにできることの中で何よりも大切なのは、自分の体を意識することです」とウォン医師は続ける。「どんなに小さな変化も捉えて、懸念事項を医師に伝えられるようにしましょう。女性とトランスジェンダーの男性は、年齢を問わず毎年必ず健康診断を受け、指示があれば乳がん検診、骨盤検診、パップテストを受けてください」

ウォン医師いわく女性の場合は、乳がん、卵巣がん、結腸がん、子宮がんの家族歴を調べておくことも重要。「この情報は、医師が予防スクリーニング検査の種類を決める上で役立ちます」

乳がんの家族歴がある人は、スクリーニングや他の検査(超音波検査など)を受けるべきタイミングも医師に確認しておこう。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Madeleine Haase Translation: Ai Igamoto