ご存じの通り、万人に合うニキビケア商品は存在しない。ニキビ肌用の洗顔料、クリーム、ハーブ、薬を片っ端から試してもよくならなければ、フラストレーションがたまって当然。

でも、近年の腸内フローラ(腸に住む何兆もの微生物や細菌の集合体)の研究により、腸の健康状態とニキビは、予想以上に強く関係していることが明らかになってきた。どうやら、ニキビを治す上で重要なのはスキンケアより食事の中身。

腸の健康状態とニキビの関係、プレバイオティクスとプロバイオティクスの重要性、腸に良い食品を医師と栄養士が教えてくれた。

リーキーガット症候群と皮膚の関係

皮膚(体内で最大の臓器)と腸内フローラの密接な関係は、専門用語で“腸皮軸”と呼ばれる。「皮膚と腸はどちらも、体の状態を安定させて、感染性微生物の侵入を防ぐ上で重要な臓器です」と説明するのは、サプリメントメーカー『OptiBac』の腸内フローラエキスパート、アシュリン・ドワイヤー博士。「過敏性腸症候群をはじめとする胃腸疾患のある人に肌トラブルが多いのは、腸の健康状態と皮膚の健康状態が密接に関係しているからです」

皮膚と腸内フローラは双方向の関係にあるけれど、調整役を担っているのは腸内フローラ。サプリメントメーカー『Bio Kult』に所属する栄養セラピストのクレア・バーンズによると、腸内フローラは腸壁を守ってくれる。腸壁は、細菌の副産物や消化されなかったタンパク質、毒素などの異物が血流に乗り、皮膚に到達するのを防ぐバリアで、食後は栄養を取り込むために自然と開く。だから、異物の一部が腸から“漏れる”のは自然なこと。でも、腸に住む善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れる(腸内毒素症になる)と、このバリアが弱くなる。

「腸内毒素症は体内の炎症を引き起こし、炎症性サイトカインという物質を分泌させます。それがニキビの発現につながります」とドワイヤー博士。「この炎症で腸壁が弱くなり、細菌の副産物が腸から漏れて血流に乗り、皮膚に届いてしまうことがあります。そうすると皮膚の一部が弱くなり、その部分で細菌が増殖し、ニキビとなります」

バーンズによると、腸に住む微生物の副産物が皮膚に住む微生物のバランスを変えてしまうこともある。「腸の状態がよいときは、腸に住む微生物の副産物が皮膚にプラスの影響を与えます。でも、腸内毒素症やリーキーガット症候群で腸の状態が悪いときは、血流に有害な副産物の量が増え、キューティバクテリウム・アクネス(アクネ菌)などの有害な皮膚細菌が増殖してしまいます」

腸の健康状態とニキビの関係

ニキビ、酒さ、湿疹、乾癬(かんせん)を含む炎症性皮膚疾患の多くは、腸内フローラのバランスの乱れと直接的に関係している。腸の不調だけがニキビの原因になる可能性は低いけれど、ドワイヤー博士いわくニキビがある人には、ない人よりも胃腸障害が多く見られる。

ニキビは、毛包の内側に余分な皮膚細胞が並び、皮脂の排出が妨げられることで生じる。その結果、細菌が増殖し、免疫系の炎症反応が誘発される。意外にも、免疫細胞の約7割は腸にあり、腸内フローラの影響を受けている。

「一部の有益な微生物は鎮静作用のある免疫細胞を刺激して、皮膚を含む免疫機能全体のバランスを整えてくれます」とバーンズ。「その一方で、有害な微生物は免疫反応を誘発し、腸をはじめとする体内の炎症を悪化させます」

スキンケアスペシャリストのデイヴィッド・ジャック博士によると、ニキビの原因が腸にあるかどうかを確かめるには、いろいろ試してみるしかない。「ニキビができたら、プレバイオティクスを含む食品(善玉菌のエサになる食べもの)の摂取量を増やしたり、プロバイオティクスのサプリメント(生きた微生物)を飲んだりするといいかもしれません」

ニキビのために腸の健康状態を改善するには

japanese fermented food
Yuuji//Getty Images

腸内フローラのバランスを整えるには、2方向からのアプローチが必要。まずは、プロバイオティクスのサプリメントで善玉菌を増やすこと。ジャック博士のオススメは、菌数が300億CFU(コロニー形成単位)で、乳酸菌とビフィズス菌を含むサプリメント。

次に、善玉菌のエサとなるプレバイオティクスを摂取すること。「プレバイオティクスを含む食品には、漬物、コンブチャ、ケフィア、生の野菜(特にチコリの根)、リーキ、玉ねぎ、キクイモ、アスパラ、生のニンニクなどがあります」とジャック博士。

でも、プレバイオティクスとプロバイオティクスを摂取するだけじゃダメ。「自然食品が中心の食生活を送り、色鮮やかな野菜とフルーツ、ヘルシーな脂質、質の高いタンパク質を重点的に摂取しましょう」とバーンズ。「ニキビの改善には低GI食もよいことが分かっているので、砂糖たっぷりの食べ物や加工食品、精製糖質は避けてください」

冷蔵庫は、ビタミンC、E、オメガ3脂肪酸、レチノイド(ビタミンA)、微量ミネラル(亜鉛など)といった抗酸化物質を含む食品でいっぱいに。「食生活全体を見て、それがどう皮膚の炎症に関係するかを考えることが大切です」とジャック博士。

脂の多い魚(サーモン、サバ、ニシンなど)は、オメガ3脂肪酸の優秀な供給源。エステサロン『Avicenna Wellbeing』の創設者で栄養コンサルタントのサナ・カーンによると、オメガ3脂肪酸は炎症性皮膚疾患を落ち着かせる上で重要な栄養素。ヴィーガンとベジタリアンには、クルミ、フラックスシード、チアシード、大豆がオススメ。

ターメリック、黒コショウ、しょうが、シナモン、クローブ、ニンニク、赤唐辛子などの抗炎症性スパイスも多用して。ジャック博士が言うように、できるだけプラントベースの食生活を送っていれば、抗酸化物質と抗炎症性化学物質がたっぷり摂れる。

その一方で動物性食品(特に乳製品)および精製された脂質や糖質は、糖化最終産物(AGE)を含むため、ニキビの引き金になる。「糖化最終産物は、糖が皮膚や他の組織の構造タンパク質と結びつくことで生成されます」とジャック博士。

「糖化最終産物は免疫機能を活発にして、炎症を悪化させると言われています。また、揚げたり焼いたりした食品も反応分子と糖化最終産物が多くなるので、調理するなら蒸すほうがいいでしょう」

最近の研究では、牛乳や高GI食(糖質量が高い食品)によってインスリンとインスリン様成長因子1(IGF-1)の量が増え、それがニキビを悪化させる可能性も指摘されている。思春期にニキビができやすいのも、成長ホルモンの増加によってIGF-1が高くなるからかもしれない。

ヴィーガンになることでニキビが治る人もいるけれど、食生活を劇的に変えるのは他のステップを踏んでから。まずはスキンケアの適性を見直して、ニキビが治らないときや悪化したときは医師に相談してみよう。食生活を一新するなら、その上で。

 

※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。

Text: Medically reviewed by Dr Louise Wiseman MBBS, BSc (Hons), DRCOG, MRCGP and words by Annie Hayes Translation: Ai Igamoto