アメリカ同時多発テロ(9.11)事件の発生から20年の間――そして特にここ1年ほどの間――に、私たちは共通の恐怖や悲しみ、回復力、癒やしといったことに、より大きな注目を向けるようになってきた。

トラウマの研究者で、ミネソタ州ブルーアース郡の社会サービス部門の責任者を務めるリン・M・スミスウィック氏によると、2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件をきっかけに、トラウマ(心的外傷)によるストレス障害の治療に対するアプローチも、大きく変化したという。

そして、そうした変化は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと関連したメンタルヘルスの問題を可視化することや、助けを求めるのは不名誉なことだとする見方をなくすことにも、役立っているとのこと。

9.11の直後、この事件から直接的な影響を受けた人たちには、ストレス反応と心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)の予防に効果的とされていた「デブリーフィング(事実確認、事件や災害などつらい経験をした後それについて詳しく話し、つらさを克服する方法)」と呼ばれる介入が行われた。

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だが、2019年に救急・災害医学に関する学術誌『Prehospital and Disaster Medicine』に発表された研究結果では、この方法が効果的ではなく、話す準備ができていない人などにとっては、有害でもあったことが指摘されている。

スミスウィック氏によると、現在はこれに変わり、「サイコロジカル・ファーストエイド (心理的応急処置)」と呼ばれるよりよい方法が取り入れられているという。

危機にさらされたときの自分自身の感情を明らかにしようと促すのではなく、ただ安全な場所を提供したり、ただ話を聞いてあげたりすることの方が、影響を受けた人たちの回復力を高め、トラウマに対する直接的なストレス反応を軽減することに役立つと考えられている。

よりよい介入方法

ボストン大学のダニエル・ルソー准教授(トラウマ研究)は、「人は、それぞれ異なる形でトラウマを経験します。トラウマに対してストレス反応を起こすことは、その人に問題があるからではありません」「それは、私たちが生まれながらに持っている自分自身を守るためのメカニズムなのです」と説明する。

そして、問題は「トラウマ反応が続くこと」だという。スミスウィック氏は、専門家の助けが必要になるのは、そうしたときだと述べている。

情報過多は悪影響にもなる

9.11後に行われた調査では、メディアを通じて過度に情報を得ることが、PTSDに似た症状を引き起こす可能性があるとの結果が示されている。

学術誌『Science Advances』に2020年に掲載された研究結果では、パンデミックに関連した急性ストレス反応の最も強力な予測因子となっていたのは、「休むことなくニュースを追っている(スクロールしている)ことだった」と報告されている。

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「主体的行動」が安心感につながる

テロ攻撃、自然災害、そしてパンデミックなどが発生したときには、打ちのめされたような気持ちになることが多い。だがルソー准教授によれば、私たちは「行動の主体は自分自身である」という感覚を与えてくれる何かをすることによって、体勢を立て直すことができるという。

例えば、パンデミックが発生した当初、自宅の食料棚をいっぱいにしておこう、トイレットペーパーを買いだめしておこうと、多くの人たちが買い物に走った。これは、心理的応急処置の考え方からいえば、「避難場所や食料を確保しておく」という緊急の必要性が高いものを優先するための「正しい行動」なのだという。

Photos: Getty Images From Prevention

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Holly Pevzner

Holly Pevzner is a writer, content creator, and award-winning former senior-level editor at Self, Prevention, Fitness, and Scholastic Parent & Child magazines. She’s spent over 20 years tackling and finessing stories about all things health, nutrition, pregnancy, parenting, and family travel.