秋の味覚の代表格、キノコ類。厳密にいえば「菌類」だが、スーパーマーケットなどでは野菜売り場で見かけることも多い。体に良い「野菜」といえば、葉物野菜や緑黄色野菜を思い浮かべる人が多いかもしれないが、キノコの栄養価についても見てみよう。
実は、キノコはスーパーフードのひとつといわれており、食品科学の専門誌『Food Chemistry』に2018年に掲載されたレビューによると、抗酸化物質やビタミンB群、銅、カリウム、セレン、亜鉛などの栄養素を豊富に含んでいるという。さらに、2015年に学術誌『International Journal of Microbiology』に掲載された研究によると、キノコはビタミンDを含む数少ない植物性食品のひとつだそう。
「ほとんどのキノコは栄養が豊富ですが、なかには特定の栄養素を多く含む種類もあります」と話すのは、栄養コーチングサービス「Well by Alli」を運営する登録栄養士のアリ・マギア氏。『Food Chemistry』に掲載された2017年の研究によると、例えば、エノキやヒラタケには食物繊維、ホワイトマッシュルームにはカリウム、マイタケとポルチーニには抗酸化物質が、それぞれ多く含まれている。
いうまでもなく、キノコには嬉しい健康効果がたくさん。ここでは、キノコを食べるべき理由と、そのメリットを最大限に引き出すためのベストな食べ方について解説する。
キノコの栄養素
では、ホワイトマッシュルーム1人前(約3.5カップ)の基本的な栄養情報を見てみよう。
- カロリー:22kcal
- タンパク質:3g
- 脂質:0.5g未満
- 炭水化物:3.3g
- 食物繊維:1g
ビタミン、ミネラルについては以下の通り(1日当たりの摂取目安量を占める割合)
- ビタミンA:0マイクログラム(0%)
- チアミン:0.1マイクログラム(7%)
- リボフラビン:0.4マイクログラム(31%)
- ナイアシン:3.6マイクログラム(23%)
- パントテン酸(ビタミンB5):1.5マイクログラム(30%)
- ビタミンB6:0.1マイクログラム(6%)
- 葉酸:17マイクログラム(4%)
- ビタミンC:2.1ミリグラム(2%)
- ビタミンD:0.2マイクログラム(1% )
- ビタミンE:0.01ミリグラム(0%)
- ビタミンK:1マイクログラム(1%)
- カルシウム:5ミリグラム(0.38%)
- 銅:0.3ミリグラム(36%)
- 鉄分:0.5ミリグラム(3%)
- マグネシウム:9.0ミリグラム(2%)
- マンガン:0.1ミリグラム(2%)
- リン:86ミリグラム(7%)
- カリウム:318ミリグラム(7%)
- セレン:9.3マイクログラム(17%)
- ナトリウム:5ミリグラム(0%)
- 亜鉛:0.5ミリグラム(5%)
キノコを食べるメリットとは?
キノコは体に良いとされる理由を、マギア氏は次のように説明する。
1)血圧を下げる効果
2021年に学術誌『The American Journal of Medicine』で発表されたシステマティック・レビューと、2014年に食品科学などを取り扱う学術誌『Trends in Food Science & Technology』に掲載された研究によると、霊芝やコウタケのようなキノコには、血管を緩め血圧を下げる働きをする生物活性化合物が含まれているという。
またマギア氏は、キノコを食べることで総コレステロール値やトリグリセリド値(中性脂肪値)を下げるなど、血液中の脂質異常の改善にもつながると明かしている。
2)炎症を抑える効果
キノコに含まれる抗酸化物質、脂肪酸、植物代謝産物、ビタミンなどの働きにより、炎症を抑える効果が期待できる。
3)免疫力を高める効果
免疫力を高めたいときこそ、キノコを食べよう。特定の免疫細胞を活性化させ、からだが病気と戦う手助けをしてくれるそう。
4)脳の健康に働きかける効果
キノコには、神経保護の特性もあることが分かっている。「エルゴチオネインと呼ばれる抗酸化物質が含まれており、認知機能低下のリスク軽減と関連しているのです」とマギア氏。
5)腸内環境を改善する効果
マギア氏によると、キノコにはβグルカンとよばれる食物繊維が含まれており、これは腸内細菌叢(腸内フローラ)の善玉菌のエサとなる食品成分、プレバイオティクスのひとつとのこと。
「体を健康に保つ上で、腸内細菌叢が十分に機能していることは必要不可欠であり、心血管疾患や炎症性腸疾患などの特定の疾患や症状のリスク軽減に役立ちます」と彼女は補足する。
6)特定の病気を予防する効果
「キノコに含まれる化合物の一部は、アルツハイマー、がん、高血圧、パーキンソン病の予防や治療法に役立つ可能性があるとされ、研究されています」とマギア氏。2015年に微生物学に関する学術誌『Journal of Microbiology』に発表された研究では、キノコは脳卒中のリスクを低下させる可能性があることも明らかになっている。
デメリットはある?
栄養や健康に関する情報を提供する「Good Nutrition」の創設者で登録栄養士のモーガン・グッドスタット氏によると、ほとんどのキノコは非常に栄養価が高く、アレルギーがない限り毎日食べ続けても安全な食材とのこと。
ただし、野生のキノコには毒がある可能性があり、なかにはサイロシビンやサイロシンのような幻覚作用がある成分を含むものも。そのため、自分で採取するのではなく、スーパーや市場などで購入することを推奨している。「キノコの見分け方について専門的な訓練を受けていない限り、野生のキノコは食べないようにしましょう」
ベストな調理法は?
グッドスタット氏は「すべてのキノコには、アガリチンという発がん性の物質が微量に含まれています」と説明した上で、「しかしその含有量はとても低く、一般的な摂取量では健康への影響は考えられないでしょう」と続ける。それでも気になる場合は、アガリチンを非活性化させるために加熱調理するのがベスト。また、冷凍・冷蔵保存によっても、アガリチンのレベルを下げることができるという。
スーパーなどで購入できるキノコは、厳密には低温で長期間保存した後は生でも食べることができるそうだが、グッドスタット氏は基本的に調理してから食べることを推奨(土がついている場合は綺麗に洗い流すことも忘れずに)。生のシイタケを食べて発疹が出たという報告もあるためだという。
またシイタケは、固い芯を切り落とすことが大切。大ぶりのポートベロマッシュルームは、ひだに旨味が詰まっているが、食感が苦手な人は次のように調理するのがおすすめ。
「バルサミコやニンニク、オリーブオイル、ローズマリーでソテーして、付け合わせとして食べるのが私はお気に入りです」と、グッドスタット氏。
キノコをそのまま食べるのでなく、細かく刻んでひき肉と一緒に炒め、チリディップやパスタソースにしてもおいしい。キノコ特有の旨みは、スープなどにもピッタリ。
他にも、ポートベロマッシュルームをそのままグリルしたり、チーズやニンニク、タマネギ、ほうれん草の混ぜたものを傘に詰めて焼くレシピも提案。「マッシュルームはたんぱく質が豊富なわけではありませんが、それでもヴィーガンステーキとして提供されることがあります」とグッドスタット氏は話す。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
From Women's Health UK
Ashley Martens is a wellness writer based in Chicago. With a lifelong passion for all things health and wellness, Ashley enjoys writing about topics to help people live happier and healthier lives. With a foundation in fitness, food, and nutrition, Ashley covers it all including sexual health and travel topics. Ashley is also a NASM-certified personal trainer and group fitness instructor.
高校生時代にアメリカンカルチャーの影響を受け、大学在学時にアメリカ・シアトルにてホームステイを経験。海外ドラマに関するWEBメディアでライターを務める。海外エンタメ・セレブ、ロイヤルファミリー、ヘルス・ウェルネス記事をメインに、翻訳を担当。手話技能検定3級、世界遺産検定2級、アロマテラピー検定1級を持つ。