盛り付けるときは、味の相性がよさそうな食品を組み合わせることが多い。甘いチャツネを塗ったクラッカーの上に塩気のあるチーズを乗せるのも、サッパリしたリンゴスライスを濃厚なピーナッツバターに浸けるのも、複雑な風味を楽しむためにほかならない。

でも、食品の組み合わせが食事全体の栄養価に与える影響を考えたことはある? どうやら健康的な食生活の秘訣は、フードぺアリングによるシナジェティクス、つまり異なる食品を組み合わせて相乗効果を発揮させることにあるみたい。

自然医学を専門とするマイケル・マーリー医師に言わせると、フードペアリングは食事から最大限の効果を引き出すためのカギ。「食品には相互作用して、その総和以上の効果を発揮する力があります。この相互作用を用いれば、体内の炎症やホルモンバランスの変化、血行や細胞の老化を制御することも可能です」

この考え方の裏には、一部の栄養素は他の栄養素より体に吸収・利用されやすく(バイオアベイラビリティが高く)、そのような栄養素を2つ以上組み合わせると体にいい影響が表れるという事実がある。それでは早速、一緒になると魔法のような相乗効果を発揮して食事の栄養価を高めてくれる食品の組み合わせをイギリス版ウィメンズヘルスから紹介しよう。

トマト×エキストラバージンオリーブオイル

fresh tomato sliced on a slate
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刻んだトマトにエキストラバージンオリーブオイルをパパッと散らせば、太陽の光を浴びているような気分になれる。この抗酸化作用たっぷりのペアリングは1年中使うべき。「トマトに含まれるリコピンは、心疾患や主要ながん(乳房、大腸、肺、皮膚、前立腺)の予防に役立ちます」とマーリー医師。「他の脂溶性の栄養素と同じく、リコピンもオイルと一緒に摂取することで体に吸収されやすくなります」

これには科学的な裏付けもある。オーストラリアの実験では、トマトとオリーブオイルを一緒に摂取した人の血漿中のリコピン濃度が82%も上昇した。ただし、オイルなら何でもいいというわけじゃない。「血漿中のリコピン濃度はヒマワリ油でも上がりますが、リコピンの抗酸化活性をもっとも高くするのはエキストラバージンオリーブオイルです」とマーリー医師。

緑色の野菜×揚げたり焼いたりした肉

野菜を食べるべきなのは周知の事実。でも、マーリー医師によると、パセリ、ホウレン草、ケールのような緑色の野菜には貴重な抗がん作用がある。しかも、フライやロースト、グリルにした食品と組み合わせると、この抗がん作用はより一層強くなる。

九州大学の研究では、被験者が70gのパセリを150gのフライドサーモンと一緒に食べたところ、尿中の発がん性物質が半減した。別の研究では、焼肉と一緒にローズマリーを食べたときにも同様の変化が見られた。

「肉を焼いたり揚げたりすると、HCA(ヘテロサイクリックアミン)という発がん性物が生成されます」とマーリー医師。「パセリをはじめとした緑色の野菜に含まれる植物性化学物質は、この発がん性物質を中和してくれる物質。発がん性物質のダメージから細胞を守り、発がん性物質が無毒な物質に分解されるのを助けてくれます」

ニンジン×アボカド

guacamole with vegetable sticks
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ニンジンは生野菜スティックの形で食べるのが一番かと思いきや、アボカドと組み合わせることで栄養価が一段と高まるそう。米オハイオ州立大学の論文によれば、ニンジンとアボカドを一緒に食べると、ニンジンに含まれるβカロテンが体に吸収されて、活性化された形態のビタミンA(肌、骨格、目の健康に欠かせない栄養素)に変換されやすくなる。

「米オハイオ州立大学が生のニンジンだけの食事と、そこにアボカドを加えた食事を比較したところ、後者の食事では不活性のプロビタミンA(ビタミンA前駆体)から活性されたビタミンAへの変換が著しく加速し、βカロテン(フリーラジカルのダメージから細胞を守る抗酸化物質)の吸収率が6.5倍になりました」とマーリー医師。「寿命を延ばすと言われているαカロテンという抗酸化物質の吸収率も4倍以上になりました」 

ナッツ×ベリー

そろそろコレステロール値を気にしたほうがよさそう? 内科学専門誌『Annals Of Internal Medicine』に掲載された研究結果は、20代~30代の段階でコレステロール値が高いと、冠動脈石灰化(心臓発作や脳卒中の前兆)のリスクが44%上昇する可能性を示している。

でも、マーリー医師によると、コレステロール値は食生活を改善するだけでも十分に下げられる。そして、ご想像の通り、その効果を最大化するでうえ役に立つのが賢いフードペアリング。マーリー医師の話では、ナッツとベリーを一緒に食べるといいみたい。

「ナッツにはコレステロール値を下げる一価不飽和脂肪、ベリーにはコレステロール値を下げるフラボノイドが含まれており、この2つは一緒に摂取することで相乗効果を発揮する栄養素です」

しかも、栄養学専門誌『The American Journal Of Nutrition』掲載の論文によると、ナッツとベリーに含まれる栄養素の相乗効果は私たちの脳機能も促進する。手軽なスナックにしては超優秀。

ケール×柑橘系のフルーツ

healthy green smoothie
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ケールとレモンの組み合わせは味覚的に昔から好まれているので、すでに取り入れている人は多いかも。「ビタミンCが豊富な食品(柑橘系のフルーツなど)と鉄が豊富な食品(濃緑色の葉物野菜など)を組み合わせると、鉄が体に吸収されやすくなります」とマーリー医師。

ビタミンCは、普通の鉄を生体利用されやすく酸化されていないヘム鉄に変換する。女性の約25%は鉄不足で、頻繁にワークアウトをする人はとくに鉄不足になりやすい。鉄は体中に酸素とエネルギーを運ぶ赤血球の生成に不可欠なので、鉄が不足した状態で自己ベストの更新なんか絶対できない。

「鉄不足は疲労、めまい、息切れなどの症状をもたらします」とマーリー医師。「ベジタリアンならなおのこと鉄を体に吸収されやすくするべきですね」。葉物野菜の相棒は今日からレモン。

逆にオススメできないペアリング

以下のようなおぞましい組み合わせは、なにが何でも避けてほしい。

緑茶×ドライフルーツ

アプリコットのように鉄が豊富な食品は緑茶の抗酸化活性を阻害するし、緑茶に含まれるEGCGのようなポリフェノールは鉄を体に吸収されにくくするのでいいことなし。効果が薄れないように、緑茶を飲むのは少なくとも食事の30分前か30分あとにして。

ホウレン草×牛乳

ホウレン草にはシュウ酸が豊富。シュウ酸はカルシウムと結合するので、ホウレン草と牛乳を一緒に摂取すると、牛乳に含まれるカルシウムが体に吸収されにくくなり、腎臓で結晶化して結石になってしまう。男性でも女性でも、腎臓結石は死ぬほど痛い。

ベーコン×ビール

cold beer
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ビールを飲みすぎた翌日はベーコンサンドイッチで二日酔いの症状を和らげる人がいるけれど、ビールとベーコンには体内でニトロソアミンに変換される硝酸塩が含まれている。ニトロソアミンは、糖尿病やアルツハイマー病、がんに関連する物質。ベーコンサンドイッチを我慢する自信がないなら、ビール以外の飲みものを。
 
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Emma Pritchard Translation: Ai Igamoto

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Emma Pritchard
Contributing Health Editor
Emma interviews the world’s leading sportswomen, top health experts, and women who have turned their lives around through fitness – women like you. You'll often find her scoping out an inspiring story and training to teach Pilates – sometimes at the same time; who doesn’t love a challenge?
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ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。