台北のクリニック兼漢方薬局である「意一堂(いいちどう)」の娘、サラ・ジャン
さんが、幼い頃から当たり前のように慣れ親しんできた漢方の考え方について教えてくれる連載コラム。5回目は腎を補う大切さと、冬に作りたい「大骨スープ」について。


二十四節季の冬至(12月22日)を境に陰気が段々と弱まり、同時に陽気が芽生え始めます。

陽気とはどこから来て、なぜ台湾の人は冬至さらに冬という節季を重視するのでしょうか?

少しづつお話していきたいと思います。

まず、節季とは単に気候の変化を表しているのではなく、東洋医学の観察の下、節季と人体は交わった関係にあり、節季によって私たちの身体の中のエネルギーも転化していきます。

冬至になると、気は脊椎の 5 番目である腰椎に移動します。位置としては股関節付近にあたります。背骨は人体の 7 つのエネルギーが集まる場所であり、ルートチャクラ、セクラルチャクラ、ソーラープレクサスチャクラ、ハートチャクラ、スロートチャクラ、サードアイチャクラ、クラウンチャクラの7つのエネルギーに分類されます。腰椎はセクラルチャクラの位置にあり、感情や感受性を蓄えられる場所でもあります。

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Ramziya Abdrakhmanova//Getty Images

心が傷つくと、身体はそれを記憶します。幼少期から大人になるまでの人生で遭遇する葛藤、事故、裏切り、孤独は数えきれないほどあります。『時薬』という言葉があるように、時間にしか解決できない痛みや苦しみも存在します。しかし、それは時間が忘れさせているだけであって、その時の感情は身体に記憶されています。それらを記憶する場所がセクラルチャクラと言われています。

東洋医学の健康維持の観点から見ると、腰椎は腎臓と平行関係にあり、腰椎の曲線が人体の正常な状態である場合、最も活動が活発とされる場所です。そのため、腰椎椎間板ヘルニアになりやすい場所でもあります。

東洋医学では腰椎は親から受け継ぐ先天の精が蓄えられており、現存する中国最古の医学書『黄帝内経』にも「腎」は「精」を蔵し、生長・発育・老化・生殖をつかさどると記されています。腎精が不足すると、子どもは骨格発育不良・知力減退・運動能力の発達不良などにつながり、大人は老化が早まります。腎精は「不足」することはあっても、「過剰」になることはありません。

発育を終えた大人にとって「補腎」つまり腎の働きを補うことは、腎虚によるさまざまなトラブルを改善するほか、アンチエイジングの近道とも言えます。また、発育不良の子供にとっては、発育を助けることにつながります。冬至は腎の働きを補うのに最も適している時期です。

腎を補う、大骨スープの作り方

台湾では、冬の時期になると身体を補うために豚肉のスープ(大骨スープ)を作ります。材料は非常に簡単で、骨付き肉と、とうもろこし、リンゴ、白きくらげ、黒豆を使用します。これらの食材を丁寧に洗い、鍋に食材と水を入れ,中火で沸騰させ、弱火で2時間ほど煮詰めて完成です。私は調味料なしで調理します。肉の代わりにニンジン、長芋、クルミ、カシューナッツ、ゴマ、黒豆を煮詰めることもできます。調理方法は同じで、ベジタリアンの方にもおすすめです。冬の養生にぴったりのスープを飲むことで、栄養をエネルギーとあわせて与えることができます。滋養満点の大骨スープを飲んで、今年も一年間健康に過ごしましょう。

次回は東洋医学の腰回りのツボについてお話したいと思います。

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Sarah Chiang(サラ・ジャン)

台湾・台北生まれ。中医の父、漢方薬剤師の母のもとで育つ。北京大学卒業後、隈研吾事務所の北京と東京の事務所に勤務した後、経営コンサルタントとして海外進出企業の支援、新製品開発開発に携わる。現在は、家業である漢方クリニック「意一堂」のブランディングや商品開発を担当。日本支社を立ち上げ。東洋医学の観点からライフスタイルの提案をしています。趣味はヨガ、瞑想、キャンプ、お寺巡り、宿坊宿泊。