スキー旅の楽しさ、そして道具の大切さについて教えてもらったら、次は旅のデスティネーションを決めること。世界中のスキーリゾートを旅する星野さんに、女性におすすめのスキー場を教えてもらった。
1泊2日のスキー旅なら志賀高原か八ヶ岳へ
女性が友達同士でスキーに行ってみようかという時に、東京からのアクセスがよく、プラスアルファのお楽しみもあるスキー場は?
「私は志賀高原が改めてきれいだと思っています。樹々には霧氷がついて、日本の山の美しさとは、こういうものだと思うのです。志賀高原は大きいのでインフラが充実していますし、北陸新幹線の飯山という駅からは、志賀高原にも野沢温泉にもアクセスがいいです。初心者にもおすすめできます」
「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳には、“手ぶらでスキー”というサービスがあり、ウエアも靴下も全部借りられます。初心者の方や、旅の中の一つのアクティビティとしてスキーを楽しむならば、“手ぶらでスキー”はおすすめです。八ヶ岳のゲレンデは上級者にとっては少し物足りないかもしれませんが、スキー場から富士山が見えるので、景色には感動すると思います。食やショッピングなど、アフタースキーも楽しめます」
2泊3日できるなら、迷わずトマムへGO!
新幹線に1時間以上乗って、そこからさらにバスに乗って、という移動を考えると、意外と快適なのが飛行機で一気に遠方に移動してしまうという方法。
「2泊3日くらい時間が取れるなら、北海道のトマムもお勧めします。飛行機で1時間半でアクセスできて、空港から送迎バスもあります。トマムは雪も極上のパウダーなので、素晴らしいですよ。気温がとても低いので、寒いのが苦手な方は敬遠されるかもしれませんが、寒さと雪の質は比例しています。すごく軽い雪は北海道の特徴です。気温は零下20度ぐらいですが、実際は太陽が出ているかどうかが大切ですね。太陽が出ていれば零下20度以下でも大丈夫です」
雲の海に滑り込む体験ができる、ニュージーランドスキー
世界の数々のスキーリゾートを見て来られた星野さんが、これまで訪れたゲレンデで一番の絶景は?
「それぞれの良さがありますが、日本の山を見慣れていますからニュージーランドのクイーンズタウンから行けるカードローナのスキー場は特別ですね。本当にニュージーランドらしい風景が広がっている町です。町から1時間ぐらいの場所ですが標高が高いので雲海がよく見えます」
「これは私が何年か前にカードローナで撮った写真です。雲海に滑り込んでいく写真ですがこの時にはとても感動しました。雲の中に飛び込むような感覚です。 時々すごいと思う風景に出会うのです。それもスキーを続けていくモチベーションになっています」
滑らなくてもいい。スキーリゾートでの新しい過ごし方
スキーをこよなく愛する星野さんが、今力を入れているのが、スキーリゾートでの「滑らない滞在」というスタイル。
「アメリカのコロラドにベイルというスキー場があるのですが、そこのスキー場を訪れる人の半分が滑らないそうです。ファミリーギャザリングといって、家族が集まって楽しむためのバケーションのスポットなのです。家族の中にはスキーをしない人もいるわけです。スキーをしない人のアクティビティが充実していると、家族が集まって休日を過ごす場所として成り立ちます。だからトマムでは、スノーモービルやスノーシュー使っての散策など、スキーをしない人にとっても楽しめるアクティビティを充実させています」
インドネシアやマレーシアなど、海外からのお客様の中には、「雪を見てみたい」という目的でトマムを訪れる方も少なくないそう。
「例えば、雪が吹雪いている状態は、パウダースノーがきれいになるので私のようなスキーヤーにとっては最高の状態なのです。ところが、そういう日は寒いので、嫌がる人も多いですよね。スキー場の面白さは、ある人にとって最高の日が、ある人にとって最悪な日になるということです。ですから、滑りたくない人でも楽しめるアクティビティを充実させることが、これからのスキー場に大切だと思います。トマムではゴンドラに乗って山の上に景色を見に行くだけという人もいますよ」
星野さんが注目するスキーのトレンドは?
もうひとつ、スキー好きな星野さんが以前から実現したかったサービスが、昨年から「星野リゾート アルツ磐梯」でスタートしたという「アルツフレンズ」。これは、スクールのように先生がいて、滑り方を教えてもらうのではなく、ただ、一緒に滑ってくれるだけのサービスだそう。
「初めてのスキー場は、その山に詳しい人が一緒に滑ってくれるととても快適になります。そういうサービスを以前から実現したいと思っていて、アルツ磐梯で導入しました。現地に友達がいるような感覚で、午前中に1時間か2時間一緒に滑ってもらって、ゲレンデのことがわかったら午後は一人で滑ってもいいわけです」
最後に星野さんが注目する、スキーのトレンドについて教えてもらった。
「最近はフリースタイルスキーが進化して、ストリートスキーというのが出てきています。ストリートスキーイングは、人の家や階段の手すりに積もった雪の上など、街中にある雪の上を滑るのです。危ないので怒られたりすることもあるようなのですが、そのためのスキー板を販売しているお店が出てきたりと、ひとつのムーブメントになっています。私はリゾートの中で、安全を確保しながらストリートスキーイングの要素を入れられないかなと考えています」
星野さんが考えるスキー旅、そして滑らなくても楽しいスキーリゾートでの過ごし方の提案は、各地の星野リゾートで体験できる。この冬、新しいスキー体験をしてみない?
『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。