医師が解説! ストレス太りの原因7つ
食生活の乱れだけが理由じゃない。
髪をかきむしりたくなるほど忙しいのは本当にイヤ。それに神経が張り詰めているときは、何をやってもうまくいかない。体重が増えるのも、ストレスが原因なのだろうか?
ストレスを感じていると体重が変動するのは、決して気のせいじゃない。ストレスと体重増加は密接に関連している。確かにストレスが多いときは、健康的な習慣が崩れがち。でも、体重が増える理由は他にもある。
幸いにも、ストレス関連の体重増加は自分の力で抑制可能。今回はアメリカ版ウィメンズヘルスより、ストレスによって体重が増える理由と、つらい時期におけるストレス管理のポイントを専門医が教えてくれた。
ストレスは本当に体重増加をもたらすの?
答えはYES。私たちがストレスを感じていると、体は“戦うか逃げるか”モードに入り、アドレナリンというホルモンを分泌し、不安のもとになっている脅威から身を守ろうとする。そして、この脅威に立ち向かうためのエネルギーをためるため、体は血中にグルコース(糖)を放出する。アドレナリンが底をつき、血糖値が低下すると、コルチゾールというホルモンが飛び込んできて、脅威に対処するための追加のエネルギーを供給する。
コルチゾールは血糖値を維持するためにインスリンの分泌を促進するので、甘い物が欲しくなり、食欲が増す。その欲に飲まれると、体重が増加する。事実、成人内分泌学者のヴィディヤ・イルリ医学博士によると、体重が多い人ほどストレスに対するコルチゾールの反応が強い傾向にあるという。
コルチゾールは、空腹感をもたらすと同時に新陳代謝を遅らせる(これも脅威に対処するためのエネルギー温存機能)。女性の代謝率を調べた生物学的精神医学専門誌『Biological Psychiatry』掲載の論文によると、1~2日前に複数のストレス要因があった女性は、ストレス要因がなかった女性に比べて、カロリーの消費量が少なかった。
臨床内分泌学・代謝学専門誌『The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』が発表した論文によると、コルチゾールは筋肉量も減らしてしまう。筋肉は脂肪より早く燃料(カロリー)を消費する。体はストレスを感じると、脂肪を手放さずエネルギーを温存する。この筋肉量の減少も、体重管理を困難にする。
ストレスは、レプチンとグレリンという空腹ホルモンにも影響を与える。『Hungry For More』の著書で医療ダイエットを専門とする内科医のエイドリアン・ユーディム医学博士によると、この2つのホルモンは空腹感を決める信号を脳に送る。つまり、コルチゾールは、あらゆる脅威に対処するべく、他のホルモンの量を増やして、あなたに十分食べさせようとするということ。こういった体重を増やすメカニズムは、狩猟採集時代の祖先たちの生存に不可欠だった。でも、ストレスが人間関係や上司によってもたらされる現代では、あまり役に立っていない(現代の脅威から身を守るためには体重を増やす必要がない)。
ストレスで体重が増える7つの理由とは?
ストレスはコルチゾールの量を変動させるだけじゃない。ストレスをうまく管理しないと、体重増加につながりかねない不健康な習慣が築かれてしまうこともある。
1.ストレス食い
何かを食べると負の感情が少し落ち着くことはある。だから、パートナーと別れたりけんかをしたりした後は、ロマンティックコメディのヒロインみたいにアイスクリームをむさぼりたくなる。ユーディム医師いわく、負の感情が落ち着くのは、口当たりの良い高カロリーの食べ物によって分泌されるドーパミンのせい。「ストレスを感じていたり、処理しがたい感情や空虚感があったりすると、私たちは何らかの方法で喜びを感じようとするのです」
でも、感情的な摂食は、変な時間に間食したり、高カロリーで栄養価の低い物ばかり食べたりという不健康な食習慣につながりかねない。このような食習慣は、体重増加のもとになる。
2.過食
過食は、負の感情に対処するため、不健康なまでに大量の食べ物を一度に食べてしまう摂食障害。前述のストレス食いとは一線を画しており、過食をする人は、自分自身の行動に対する罪悪感や恥辱感を覚えたり、自制心の欠如を感じたりすることもある。
体重はもちろん、過食はメンタルヘルスにも致命的な影響を与えかねない。過食が疑われる場合は医師に相談し、あなたに合った解決策を見つけよう。
3.ファストフード
時間に追われているときや、おいしい物で手っ取り早く空腹を満たしたいときは、近所のファストフード店が脳裏に浮かぶ。でも、ファストフード店に置かれているオプションは、通常あまりヘルシーじゃない。
「ファストフードは、塩、油、砂糖を多めに使うことでおいしくなっています。でも、砂糖と油は脳を喜ばせてしまうので、ファストフードを口にすると、ブロッコリーを食べたときよりドーパミンが多く分泌されます」とユーディム医師。ファストフードに手を出しても大した栄養補給にはならないし、もっともっと食べたくなるだけ。
栄養価が低く、バランスの悪い食生活を続けていると、体重が増えやすくなる。
4.アルコールの摂取量が多い
ストレスフルな1日を終えたら、家でカクテルを飲むのが習慣という人も多いはず。アルコールも幸福感をもたらすドーパミンを分泌させるアイテムなので、これは確かに合理的。
でも、ユーディム医師いわくアルコールの鎮静作用は一時的。「アルコールには気分を落ち着かせる初期作用だけでなく、あとになって不安をもたらす刺激作用もあります。睡眠の質が低下して、負の感情が増幅したり、体重が増えたりすることもありますよ」。お酒を飲むと、栄養価の低い深夜の間食も増えるため、徐々に体重が増えていく。
5.食事を抜く
イルリ医師の話では、食事を抜くこと自体で体重が増えることはないけれど、日中の食事を抜くことで夜間の摂取カロリーが増えすぎることはある。
「時間制限付きダイエット(カロリーを摂取する日中の時間帯を制限する食事法)は、ダイエットに有用です。でも、日中の食事を抜くと、夜になって栄養価の低い食べ物を選んでしまうという人には、このダイエットが向かないかもしれません」
昼間は忙しいからといって食事を抜き、夜になってガッツリ食べる生活を続けていれば、間違いなく体重は増えていく。
6.運動量が少ない
運動量が少ないからといって、必ずしも体重が増えるわけではないけれど、運動量が少ないことで、ホルモンレベルや体の他の側面に影響を与えるストレス要因が増える可能性はある。「ダイエットで大事なのは、運動よりも栄養管理です。でも、運動は心血管系の健康と筋肉の増強、骨の健康維持に必要です」とイルリ医師。
また、筋肉は脂肪よりもカロリーを多く消費するので、定期的な筋力トレーニングをやめてしまえば、体脂肪率が高くなってもおかしくない。
7.睡眠時間が足りない
体は寝ている間にリチャージするので、睡眠時間を十分に確保するのは総体的な健康に欠かせない。そして、イルリ医師が言うように、睡眠時間が足りないと、概日リズム(体内時計)が崩れてしまうこともある。概日リズムは、体重に影響を与える多種多様なホルモン分泌をつかさどっており、リズムが崩れると、食欲を増進させるグレリンというホルモンが分泌されやすくなる。
寝不足の状態では、ワークアウトや作り置きなど、健康上の目標を追うために必要なエネルギーも不足する。
ストレスで増えた体重を減らすには?
ここからは、ストレスで体重が増えるのを防ぎ、増えてしまった体重を減らす方法を紹介しよう。
運動にフォーカスする
体を動かせば、期待通りカロリーが消費される。でも、エクササイズには、それ以外の利点もたくさん。例えば、心血管系の健康が促進されるし、ストレスや痛みを減らすエンドルフィンの分泌量も増加する。
米国の身体活動ガイドラインによると成人は、1週間で少なくとも150~300分の中強度の運動または75~150分の高強度の有酸素運動、あるいはこの2つと同等の運動をするべき。ユーディム医師いわく、ワークアウトは、耐えられるストレスの限界値も高くする。
「これまでの研究により、自分を追い込むときの身体的なストレスに耐えられる人は、心理的なストレスに対する耐性も高いことが分かっています。運動をするべき理由の中で、これより説得力のあるものはないでしょう」
米ハーバード・メディカルスクールの健康情報サイト『Harvard Health』によれば、体を動かすと、ストレスホルモンのアドレナリンとコルチゾールの量も減る。つまり、ワークアウトはストレス関連の体重を減らすだけでなく、その根本的な要因であるストレスを撃退するのにも役立つということ。
大好きなコンフォートフードのヘルシーバージョンを作る
健全なダイエットなら、あなたから大好きな食べ物を奪うようなことはしない(ストレス下ではコンフォートフードが絶対に欲しくなる)。そして、自分の食事内容が好きな人には、たぶん似たようなものを選んで食べる習慣がある。お気に入りのコンフォートフードのヘルシーバージョンを作り、余分なカロリーを摂らないようにしてみよう。いくつかの材料を変えるだけでもだいぶ違う。
「最もヘルシーと言われるのは、野菜、フルーツ、豆類、全粒穀物、ナッツ、シードが豊富で、精製糖類や加工食品を極力減らした食生活です」と語るイルリ医師は、自分自身のインスタグラムにヘルシーなレシピを載せている。
ポイントは、食事に含まれるカロリーを大幅に増やさない材料だけを使うこと。「そうすれば、健康的な体重をキープするのも、慢性疾患のリスクを減らすのも楽になります」
食事日記をつける
食事日記は一種の責任感を養ってくれる。自分の食事内容を簡単に記録できるなら、アプリでも、ノートでも、何でもOK。食事内容を可視化することで、食生活改善の目標が達成しやすくなる。
ユーディム医師の話では、何かを食べているときの気分を記録するといい。
「いつ何を食べたかを書くよりも、食べた理由を書くことのほうが大事です。本当に、おなかが空いていたのでしょうか? ただ退屈なだけだったのかもしれませんし、不安や悲しみなどの感情や興奮からだったのかもしれません」
そうすれば、食生活を健全に変えていけるし、ストレスで体重が増えるという悪循環にも陥らない。
「自分のパターンを認識し、それをもとに食生活を改善していきましょう」
マインドフルに食べてみる
食事中は、自分の気分に注意が向きがち。例えば、大好きなハンバーガーを食べているときは、気分がルンルン。でも、ユーディム医師いわく、食後の気分にフォーカスするのも大切なこと。食べると必ず気だるくなったり、情けない気分になったりするなら、自分と食べ物の関係を見直したほうがいいかもしれない。
マインドフル・イーティングでは、空腹を知らせる合図にも注意を向ける。本当におなかが空いているときと、ただ暇なだけなときの違いを感じてみよう。マインドフルに食べるようにしていれば、食べ物を使ってストレスに対処することが減ってくる。
水分補給
もっと水を飲むようにすれば、満腹感が持続する。
「体を水分で潤しておけば、喉の渇きを空腹と勘違いすることもありません。これで不必要な間食も減るでしょう」とイルリ医師。
水を飲むと胃の中にある空間が埋まるので、喉の渇きが収まると同時に食欲も減る。
睡眠を優先する
「睡眠は代謝率の向上に欠かせません」とイルリ医師。夜遅くなってから食べるのは控え、それなりの時間にベッドに入りたくなるようなリラクゼーションのルーティンを構築し、なるべくぐっすり眠れるような睡眠環境を整えて。
ストレス発散とセルフケアを生活の一部にする
ストレスそのものを何とかしないと、ストレスで体重が増えるという悪循環から抜け出せない。ストレスの対処法は、瞑想したり、自分の時間を増やしたりと、人それぞれ。
「瞑想は効果的な戦略です。トリガー/感情と反応の間にスペースができるので、そのスペースを利用して時間を稼ぎ、トリガー/感情に対する自分の反応を決められます」とユーディム医師。そうすると、落ち込んでいるときは冷蔵庫を開ける代わりに散歩をするなど、意識的な選択がしやすくなる。
また、イルリ医師いわくコルチゾールの量を減らすには、マッサージが特に効果的。『The Journal of Alternative and Complementary Medicine』掲載の論文によると、53名の成人が5週間にわたりスウェーデン式マッサージを受けたところ、コルチゾールの量が減少した。
メンタルヘルスの状態をチェックする
これは、ものすごく大切なこと。
「コルチゾールの増加には私たちの心理状態が大きく関わっており、それが空腹ホルモンを増加させることもあります。“ストレス食い”という言葉は、ここから来ています」とイルリ医師。
セラピストのようなプロの力を借りたり、友達や家族と過ごす時間を作ったりして、積極的にメンタルヘルスのケアをしていれば、ストレスがたまらないし、コルチゾールの量も抑えておける。
また、ユーディム医師が言うように、周囲の人々、ペット、自然と深くつながれば、不健康な食べ物に頼らなくても、ドーパミン(幸福ホルモン)の分泌は促進できる。