今回の登場人物、イギリス版ウィメンズヘルスのエディターのクラウディア・カナバンは、“ヨガ”には一応慣れているといえる。モチベーションが上がったり下がったりすることはあるけれど、週に1度は1時間のヴィンヤサヨガ教室に通っているし、姿勢、深呼吸、瞑想のために時間を取ることのメリットは十分に承知しているから。
でも、もう一段階上に行きたいという彼女。そこでクラウディアは14日間のヨガチャレンジに乗り出した。その体験記を見ていこう。
2週間のヨガチャレンジ、スタート!
頭のてっぺんをヨガマットにグッと押し付け、両手をヒトデみたいに広げてバランスを取る。胴に支えられた両脚は、空に向かって伸びている。脳に新鮮な血液が送られて、目がくらむような幸福感に包まれる。
今日はヨガチャレンジの1日目。いきなりヘッドスタンドなんて、自分でも張り切りすぎていると思う。
「最初はできなかったけど、ある日突然できるようになったのよ!」なんて言えたらいいけれど、実際は大違い。クラウディアは、イーストロンドンのヨガスタジオ『Triyoga』でダーマヨガ(雑念を取り払い、心臓を強くすることに重点を置くヨガの一種)のエミ先生にポーズを支えてもらっている。
イギリス版ウィメンズヘルスのフィットネスエディターから課されたタスクの内容は、アシュタンガでもホットヨガでも陰ヨガでもなんでもいいから、とにかく2週間1日も休まずにヨガをすること。だから、週の半分は今日のように『Triyoga』のヨガ教室。残りの半分は瞑想・ヨガ・ブレスワークに特化したVOD『Wanderlust』で宅ヨガをした。
ヨガを習慣にするコツは?
このチャレンジを始める前に、ブレスワーク・マインドフルネス・ヨガコーチのプラヴィ・ジョシに「ヨガを一貫して続けるための秘訣」を聞いた。プラヴィは、ハードなスケジュールに従ってトレーニングするアスリートの心身のケアをサポートしている。
「毎日マットの上に立てれば、チャレンジを半分クリアしたようなものですよ」とプラヴィ。「ソファでゴロゴロしようかな」という雑念を取り払うには「習慣を作るのが一番です」
習慣といっても、毎朝5回、太陽礼拝のポーズをするだけでいい。それだけで1日分のエネルギーが湧いてきて、体と背骨が強くなり、神経系の調子がよくなる。
『Triyoga』でジヴァムクティヨガを教えるエマ・ヘンリーによると、ヨガの練習を仕事の会議と同じように扱い、あらかじめスケジュールに入れておくといい。その点、予約制・前払い制のグループレッスンは◎。
ヨガを習慣にするメリットは?
ヨガをすると、心の平静、体の緊張をほぐすことによる幸福感、新しい目標(クラウディアの場合はカラスのポーズ)に少しずつ近づくスリルが味わえる。慌ただしい日々のなかで、こういう気持ちになれることはなかなかない。
「ヨガは私たちをスローダウンさせてくれます」と話すのは、ヨガの先生でパーソナルトレーナーのアンドレア・ナギー。「ヨガをしていると、体のなかで起きていることに耳を傾ける癖がつくので、自分のことがとてもよく分かるようになりますよ」
プラヴィも同じ意見。ヨガをしていると、いつもは頭に向いている意識が体に向くので、一時的にでも頭をTo-Doリストや反すう思考から解放してあげられる。
もちろん、ヨガには身体的なメリットもある。ヨガで体を伸ばしたり滑らかに動かしたりしていれば、ほかの運動のパフォーマンスも高くなる。「筋トレでは体が強くなる反面、筋肉が硬くなります。そんなときにヨガをすれば、筋肉がほぐれて柔らかくなりますよ」
自重を使ってポーズをキープしているうちに、筋力と柔軟性が高くなるのも大きなメリット。
ヨガチャレンジから彼女が学んだ4つのこと
1.体を動かすことだけがヨガじゃない
西洋では、戦士のポーズ2、ダウンドッグ、チャイルドポーズなどのアーサナがヨガの基本だと思われている。
でも、ヨガは東南アジア発祥のスピリチュアルな修行法。目的は本当の自分を見つけて悟りに至ることにあり、体を動かすアーサナは八支則と呼ばれるヨガの教えの1つに過ぎない。八支則には、アーサナ以外にもプラーナヤーマ(呼吸法)、ヤマ(非暴力や誠実さといった自己規律)、ニヤマ(内省したりスピリチュアルな経典を読んだりといった行動と観察)などのステップや段階がある。
このコンセプト自体は、チャレンジを始める前から知っていた。でも、実際にチャレンジを始めてみると、ヨガのあとは数分どころか何時間も心が平穏な状態で過ごせるようになった。やっぱり体を動かすことだけがヨガじゃない。ヨガは、人と真摯に向き合うための倫理的な修行でもある。
「私たちも、まずはアーサナから入り、そこから学びを深めていきます」とプラヴィ。「ヨガ教室ではアーサナのあとに瞑想をして、八支則のほかのステップを深めることもありますね」
2.体調に合わせて変えられる
最初の10日間はエクササイズやダイエットに向いている高温期だったので、毎日スタジオで平均75分のハイペースなヨガをした。チャトランガ(四肢で支える杖のポーズ)を20回やるだけの力が湧いて、エンドルフィンの分泌量が増えたせいか、確実に体が強くなっている感があった。リラックス作用のある瞑想としかばねのポーズでレッスンを終える頃には、ほろ酔い気分で超幸せだったそう。
でも、最後の数日は生理の予兆が出始めて、活力が急低下。普段はダイナミックなフローを好んでいたが、このときばかりは20~30分のやさしいヨガをするにとどめた。ホルモンの影響で感情的になりがちな時期も落ち着いて過ごせたのは、間違いなくヨガのおかげという。
ヨガの鎮静作用はエマも絶賛。「ヨガを始めるとマインドのコントロールが楽になり、マインドにコントロールされることが減ります。だから、ぶしつけに話を遮られても冷静なままでいられますし、物事に前向きな態度で応じられるようになります」
3.驚くような変化が現れることもある
14日のチャレンジ期間で彼女が一番驚いたのは、尺骨神経麻痺(上腕から手指の内側を通る尺骨神経が圧迫され、神経麻痺などの症状が引き起こされる病気)の症状が緩和したこと。クラウディアの場合は夜や起床時に手が麻痺したりしびれたりすることが多いので、寝ている間は添え木を当てて、左腕が曲がらないようにしていたそう。
それでも朝は痛かったのに、チャレンジを始めてから数日で症状が落ち着いた。治ったわけではないけれど、前ほど痛くなくなった。
4.体が“すぐに”強くなる
ヴィンヤサをはじめとするダイナミックなヨガにフォーカスしていた最初の10日間では、上半身が明らかに強くなった。最初のうちはプランクからチャトランガに入るのも辛かったのに、10日目くらいから動きに安定感が出て、なめらかさも加わった。
ヨガにも“やりすぎ”はある?
ひとことで“ヨガ”といっても内容には幅があるので、やりすぎてしまっているかは内容次第。「なんでもやりすぎは体の負担になりますよ」とプラヴィ。確かに、超高速のロケットヨガを毎日やれば、体がクタクタに疲れてしまう。「自分に合うことを見つけましょう。私には太陽礼拝のポーズを毎朝5回が合っていますね」
クラウディアには、体のニーズに応える形で、さまざまなタイプのヨガを組み合わせるのが合っていた。元気いっぱいの日は、体をダイナミックに動かしながら半月のポーズなどの難易度の高いポーズにトライした。体が自分の期待に応えて集中力を絶やさずにいてくれたから、しっかり地に足がついているような気持ちになれた。
無気力な日はエネルギーをかき集め、VODでスローペースかつ短時間のヨガした。不思議なことに、それだけで心は穏やか。
毎回必ずヘッドスタンドをしなくても、酔いしれたような気分になれる。だからヨガは面白い。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Claudia Canavan Translation: Ai Igamoto